近畿大学医学部・病院50周年史
Survey or Interview安田 佳子

酸素代謝によって紐解く
がん細胞成長機構の解明

From insight to impact
— unraveling cancer cell growth mechanisms through oxygen metabolism.
YASUDA Yoshiko

Former Professor of Department of Anatomy and Neurbiology

  1. 近畿大学在職中、思い出に残る学生とのエピソードがあれば教えてください。

    1回生の骨学講義の際、前列に座っていた学生達が、講義終了後、私を取り囲んで、色々質問をしました。さらに、大学より京都の自宅に帰ると、学生のご両親が、私の、帰宅を待っておられて、ご子息が立派な、医師になれるかを質問なさり、お話をして、安心してお帰りになることも、ありました。
    学生たちは、医師という職業に憧れを持っていて、その様な職業にかかわる仕事についていないご両親でもご子息が、医師になれるかに不安を抱いていられるご様子でした。
  2. 現在も継続して取り組んでおられる研究があれば、内容や今後の展望について教えてください。

    継続している研究は1993年に、赤血球増殖因子であるエリスロポエチンが、正常発生への関与と成人病である腎不全の発症の原因となることを見出し、現在も、これらの疾患との関わり合いについて、研究を継続しております。
    研究を継続するにあったって、近畿大学医学部を定年退職になった後も、産婦人科の非常勤講師となり、更に京都府立医科大学の特任教授および近畿大学農学部大学院の講師となっていたので、研究を継続する上に大いに役立ち、感謝しております。継続している研究は、赤血球増殖因子であるエリスロポエチンが、正常胚発生に関与しているのを見出したことが、(1993)きっかけとなって、成人病である腎不全発症の原因であること、癌や白血病の病因であることを見出し、それらの治療へ特許申請をしたが、受理されなかった。目下、増殖性疾患での効果を示した病気について創薬の方向へ進める予定である。
  3. 解剖学分野での女性研究者としてのキャリア形成において、印象的な困難や乗り越えた経験があればお聞かせください。

    がん細胞の酸素代謝に関する研究を始めたことと、その成果を社会に還元すべく、特許申請したが、受理されなかった。目下、増殖性疾患での効果のあるものについて創薬の方向に進めていく予定である。
  4. がん細胞の酸素代謝に関する研究を始めたきっかけと、その成果の社会的意義についてお聞かせください。

    がん細胞の酸素代謝に関する研究を始めたきっかけとその成果の社会的意義についてマウス胚発生において、エリスロポエチンが、その発生と成長に深く関与していることを見出し(1993)さらに、ヒト癌細胞株に、エリスロポエチン遺伝子が発現しているのを見出した。これらの成果を臨床に応用したいと考え、特許申請したが受理されなかった。目下、増殖性疾患で、効果のあるものについて、創薬の方向に進める予定である。
  5. 近畿大学医学部における研究活動で特に記憶に残っているプロジェクトや成果について教えてください。

    エリスロポエチンの良性と悪性増殖性疾患及び血液疾患に対する働きについて見出したことが、臨床治験へ進められなかったことについては、更に考察する必要がある。
  6. 長年にわたる大学・研究機関での活動を通じて、ご自身が最も達成感を感じた業績は何ですか?

    造血因子が胚発生に関与していることを見出し(1993)、それが癌や白血病などの悪性疾患の原因となっていることを見出したこと。
  7. これまでに影響を受けた人物、または印象に残っている師弟関係についてお聞かせください。

    京都大学医学部解剖学教室の恩師である西村秀雄教授から、研究の進め方、論文の書き方などを教わった。
  8. 今後、若手の医学研究者や医学生に伝えたいメッセージがあればお願いします。

    ヒトの体の構造と機能についての知識を正確に理解し、その理解から疾病の原因・助長しているものは何かについて、考察してほしい。
  9. 近畿大学医学部の50周年に寄せて

    近畿大学医学部の基礎医学に対する授業で、実習に用いる教材が十分に揃っていることは、大変ありがたいことでした。