近畿大学医学部・病院50周年史
Survey or Interview下村 嘉一

誠心誠意 診療において
患者ファーストという認識を

Wholeheartedly committed to putting patients first.
SHIMOMURA Yoshikazu

Professor Emeritus

  1. 近畿大学医学部および眼科領域でのご経歴の中で、特に意義深かった役職・活動について教えてください。

    日本専門医制度の眼科代表となり、眼科学の特殊性、意義について眼科専門医制度に反映、貢献できました。
    医学研究科長として、眼科学以外の医学研究についても造詣を深めることができ、眼科学にも応用することができました。
  2. 眼科・角膜疾患・感染症研究において、先生が長年大切にしてきた研究理念やアプローチをお聞かせください。

    一般臨床から生じた疑問を解決する目的で、多くの関連論文を熟読し、研究計画を構築します。必ず再現性を確認して論文作成、発表することが重要であると考えます。
    臨床研究を行う時は、患者さんが自分の親であるという意識を常時持つことが重要です。
  3. 臨床医として診療現場で心がけてきた姿勢や、患者さんとの関わりの中で印象深いエピソードがありましたらご紹介ください。

    患者さんはいつも自分自身の親であるという意識を持つことが大切であると思います。かなり昔の話ですが、私の部下の担当している患者さんが白内障手術後、意識が戻らず、そのまま死亡されたことがありました。勿論医療過誤はなかったのですが、意識が戻らない数週間、家族に罵倒面罵されました。告別式に参列することを周囲の人からは止められたのですが、意を決して部下と二人で参列しました。今まで最も高圧的に私を罵倒していた家族の方から心からの感謝の言葉を頂きました。
  4. 近畿大学医学部堺病院長や大学院医学研究科長などのリーダー職を通じて、組織運営や医療文化づくりで実現できたことがあればお聞かせください。

    病院長として、各科公平に組織運営できるよう務めました。地域医師会との連携を深めました。
    研究科長として、各科の特殊性を理解でき、それを踏まえて運営できたと考えます。
  5. 近畿大学医学部・附属病院が、眼科医療・教育・研究の分野でこれから果たすべき役割についてご意見をお聞かせください。

    最近の眼科学の進歩は著しく、臨床的には各種眼科用レーザの開発、眼内レンズ手術の完成、硝子体手術の確立などが特筆されます。細胞生物学的アプローチの基礎研究からiPS細胞技術が眼疾患に試用されつつあります。今後の眼科学の研究アプローチは大きく二つに分かれると思います。一つはミクロの世界に近づいていく細胞生物学、今一つはコンピュータやレーザに代表される先端工業技術の積極的な導入です。学部教育では、眼科疾患へのアプローチ法を論理的でかつ単純明快に解説できるよう教育カリキュラムを設定することが重要です。卒後教育では眼科診療技術の習得と自己啓発による診療、研究アイデアの発掘を目標とすることが最重要と考えます。
  6. 今後、ご自身がさらに取り組みたいテーマや社会に貢献したい分野がありましたら教えてください。

    アイバンク活動の充実と理解を社会に浸透させたく考えます。ボランティア活動の一環として眼科学の講演を行うことです。
  7. 未来を担う若手医師・研究者・学生たちに向けて、先生が大切にしてきた言葉やメッセージをぜひお聞かせください。

    患者さんファーストで卒前卒後研修、研究を実践してください。
  8. 50周年史に、先生ご自身の歩みや近畿大学医学部との関わりを振り返って、後世に残しておきたい言葉・エピソードがあればご記入ください。

    温故知新