近畿大学医学部・病院50周年史
Survey or Interview青木 真理

技術や知識だけでなく
人としての温かさや思いやりを

Instilling not only knowledge and skills, but also warmth
— cultivating compassionate individuals.
AOKI Mari

Director of Nursing

  1. 近畿大学病院で看護師として働き始めた当初の思い出を教えてください。

    附属の看護学校出身のため、院内には同級生も多く、とても心強く感じました。
    配属部署には新人が私ひとりだったこともあり、先輩方が本当に親切にしてくださったのを覚えています。仕事だけでなく、お食事やゴルフなど、プライベートでもよくしていただきました。
    入職当初、驚いたのは、先輩方のお食事を食べられる速さです。私がようやく半分食べた頃には、すでにみなさん食べ終わっているということが日常でした。そんな環境で鍛えられたのか、今では私もすっかり早く食べられるようになりました。
  2. 認定看護管理者を取得されたきっかけと、それが業務に与えた影響を教えてください。

    看護管理者としての経験も大切ですが、管理に関する知識をさらに深めたいと思い、研修を受講しました。
    研修では、社会福祉政策や社会保障制度について詳しく学び、その中で「看護管理者として何ができるのか、どう立ち向かうのか」を考える貴重な機会となりました。
    視座を高く持ち、広い視点で物事をとらえることの大切さを、あらためて実感しています。
    また、研修を通して知り合った他施設の看護管理者とのネットワークは、今の私にとってもかけがえのない財産となっています。
  3. 経営学修士課程での学びが、看護管理にどのように活かされましたか?

    組織運営への理解を深めたいという思いから、経営学を学びました。
    学びの中で得た知見は、業務プロセスの見直し、人的資源管理など、看護部門の運営にも有効であると実感しています。
    今後は、経営学的な視点を活かしながら、論理的かつ戦略的に看護部を運営し、より質の高い組織づくりをめざしていきたいと考えています。
  4. 看護部長として就任された際の決意や、最初に取り組んだことは何ですか?

    「近畿大学病院看護部の存在意義を高めること」をビジョンとして掲げ、南大阪唯一の大学病院として、その使命を果たせるよう看護部の運営に取り組んでいます。
    生産年齢人口の減少が進む中、看護職が働き続けられる労働環境を整備することは重要な課題です。その一環としてタスクシフトを推進し、看護補助者の業務を見直しました。特に、夜間帯にも看護補助者を配置できる体制を整備できたことは大きな成果の一つです。夜間は看護師の人数が限られる中で、看護補助者の存在が、患者の安全確保に大きく寄与していると感じています。
  5. 現場の看護職員とのコミュニケーションで心がけていたことはありますか?

    自分から声をかけることを日頃から意識しています。挨拶はもちろんのこと、雑談も大切にしています。
  6. 看護教育や人材育成について、特に重視していた方針があれば教えてください。

    近畿大学の建学の精神である「人に愛される人、信頼される人、尊敬される人」を育成したいと考えています。
    そのために、ものごとを客観的にとらえ、「何が起きているのか」「何が問題なのか」「どうすればよいのか」を自ら考えられる、自律した看護師を育てたいという思いで、日々切磋琢磨しています。
    わからないときに周囲に相談できること、おかしいと感じたときに立ち止まれること、そして互いに率直に指摘し合える関係性を築いてほしいと願っています。
    そのためには、日頃から「対話ができる環境づくり」が何よりも大切だと考えています。
  7. 近畿大学病院での勤務を振り返り、印象に残る出来事や人物はいますか?

    近畿大学病院で勤務し、気づけば35年目を迎えました。これまで続けてこられたのは、周囲の皆さまに恵まれたおかげだと、感謝の気持ちでいっぱいです。
    印象に残っている出来事のひとつが、COVID-19パンデミック時の対応です。
    医療材料が不足し、これまで使い捨てだったマスクさえ再利用しなければならない状況の中、現場に立つ医療従事者の不安は計り知れないものでした。
    そんな中、近畿大学はPPE(個人防護具)を必死に確保し、現場が困らないように尽力してくださいました。他施設では、マスクの洗浄再利用や雨合羽での代用を余儀なくされていると聞く中、物資が安定して供給されたことに、心からありがたく感じました。
    この経験を通じて、近畿大学の組織力と支え合う風土の強さを、あらためて実感しました。
  8. 今後の看護部や若手看護師に向けて、期待することやメッセージがあればお願いします。

    「優れた看護師は、優れた人でなければならない」 これは、ナイチンゲールの言葉です。
    看護は人を相手にする仕事です。だからこそ、技術や知識だけでなく、人としてのあたたかさや思いやりをもち続けてほしいと願っています。