多くの分野で期待されつつも
発展途上にある
量子コンピュータ。
その実用化を支えたい。

李 愛鵬

Vol.8

量子コンピュータに特化した
学習支援システムを開発!

  • 4 質の高い教育をみんなに
李 愛鵬

大学院 システム工学研究科
システム工学専攻 電子情報工学コース1年

李 愛鵬

Ri Aihou

工学部電子情報工学科から大学院へ進み、「知能情報処理研究室」に。量子コンピュータを教えてくれた出口准教授のもと、新しい学習支援システムの開発・研究に挑戦している。

古典コンピュータでは解けなかった問題を
解決できる可能性のある量子コンピュータ。
その基礎知識から理論、仕組みを学び、
まずは使いこなせる人材を育成する
システムを開発。

情報系、電子系の学びを深めるため近畿大学へ入学し、そのなかで「量子コンピュータ」との出会いがありました。量子コンピュータとは、原子や電子といった“量子”の持つ性質を利用して情報処理を行うコンピュータで、その性能の高さに魅了されたのです。量子コンピュータの一番の特徴は、ス―パーコンピュータを使っても膨大な時間を要するといわれる計算を高速化できる可能性がある点です。他にも素因数分解や、わかりやすいところで例えると効率的な配達ルートといった、複雑な組み合わせ最適化問題も短い時間で解決できるといわれています。

開発途中には様々な不具合(バグ)が生じます。1ページのプログラミングが2時間で完成しても、1ケ所のバグの修正には1週間かかることも。常に改善点と向き合い、使いやすいシステムの開発をめざします。

従来のコンピュータは古典コンピュータと呼ばれ、何十年も前から発展し続けた経緯のもと、すでに成熟した知識や技術があります。一方、量子コンピュータが注目され始めたのは近年のことです。未成熟の分野であると同時に、実用化に向けては大きな課題があります。そのひとつが、量子コンピュータそのものを理解する人材の不足です。そこで、量子コンピュータに関する学習支援システムを開発し、初心者がゼロから量子コンピュータを学び、最終的には知識と使い方を習得できる人材育成を目的とした研究を始めました。

量子コンピュータに関する学習支援システムは、これまでにないものです。まずは量子コンピュータに関する基礎知識からコンテンツに落とし込む必要があり、それはプログラミングよりはるかに難しい作業に。でも、どうすれば参考書や専門サイトより分かりやすく、かつ多くの人に伝えられるかをポイントに日々アイデアを絞っています。現在、ゲーミフィケーションの応用やグループワーク機能、メモ機能の追加など、様々な拡張機能を導入しては、テストを行ってくれる学部生の協力のもとブラッシュアップを繰り返し、システムとして4割ほどまで完成しました。

開発した学習支援システムの構成。量子コンピュータの基礎知識に始まり、レベルに応じた学習プログラム、テスト結果をランキングで確認できる機能など、遊び心も含まれた作りとなっています。

世界で大きく期待される量子コンピュータですが、その状態はまだ“赤ちゃんのような段階”と僕は捉えています。でも、これからの分野だからこそ、僕が開発したシステムをきっかけに取り組もうと考える人が増え、発展していくとすれば、「質の高い教育をみんなに」が実現するかもしれません。また、この研究では、“声を聞く”ことの大切さも学びました。特に学習支援システムの開発に重要なのは、開発者の意識よりも、それを利用する人たちの声です。これからも多くの意見をもとに想像力を高め、技術へ還元し、社会とつながっていけたらいいと思っています。