アイデア次第で創り出せる、
それまでにないモノ
工学の学びで得たのは
無限の可能性という面白さ。

笠松 諒

Vol.2

QOL向上を目指した
人工心臓の開発にチャレンジ!

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
笠松 諒

大学院 システム工学研究科
システム工学専攻 ロボティクスコース 1年

笠松 諒

Ryo Kasamatsu

ロボティクス学科・ロボット設計コースから大学院へ進み、「生体流動システム研究室」に。制御から設計、加工技術や力学など、教科横断的な学びを習得した後、医学的な検討も必要な分野で挑戦を続ける。

学びは点から線となり、
やがて誰かの役に立つモノや技術となる。
確立されているようで追求の余地がある、
人工心臓。
人助けに応用できる工学の可能性が
ここにあります。

科学技術の進化は、高齢化が進む日本の未来を支え、誰もが暮らしやすい社会を作る手助けになると思います。医用生体工学、または生体医工学という分野がありますが、病院で使われる様々な機器や装置には、工学の知識が大きく役立てられています。例えば、手術の補助を担うロボットをはじめ、人工臓器や福祉機器など。医師や看護師の力はもちろんですが、工学的な手法やアプローチを応用し、人の命を救ったり、医療現場の役に立てられる研究は、今後ますます深まると感じています。

振動型ポンプの模型

筒の間に一方通行の弁をつけた振動型ポンプの模型。実際に水を流して弁の動きなどを確認しています。(写真は管内に弁が入っていない状態)

僕が今、研究しているのは、「大動脈弁を模擬した逆止弁を有する振動型血液ポンプ」の開発です。現在、体内に埋め込む補助人工心臓は、小型化の観点から連続流(定常流)型ポンプが主に採用されていますが、「生体にとって血流の拍動は必要か」という疑問の答えは未だに出ておらず、議論が続いています。その中で、やはり正常な生理機能を維持するために拍動流を生成するポンプを作ろうという研究があり、その中のひとつが僕の研究となります。

今はまだ、独自の振動型ポンプや弁の試作品を作っては、それまでと比較して調査する作業の繰り返しですが、とてもやりがいを感じています。心臓移植を必要とする重症心不全患者の数は年々増加の一途をたどっています。しかし、ドナー不足や厳しいレシピエント要件などのために、移植への門戸が狭いのが現状です。そこで近年、人工心臓を装着した状態で終生を過ごすDestination Therapyの患者数が増えているようです。このような方たちのためにも、より生体に近い拍動流の人工心臓ができれば、QOLの向上につながると考えています。

図面

CADで図面を起こし、そこから3Dプリンタを用いて弁の試作品を作成。加工するために必要な知識や、素材のメリットなど、大学時代に身に付けた学びが生きています。

僕自身、心臓移植や人工心臓の現状を知ったことで、研究へのモチベーションが高まり、SDGsへの関心にもつながりました。現在、中学校で数学の非常勤講師をしていますが、生徒たちには知る楽しさを伝えたいと思っています。数学に関していえば、中学や高校で習った点が、大学に来て線となり、科学や社会などに活用される面まで知識を広げ、社会に役立てることができます。何かと何かは必ずどこかでつながっている。まずは興味を持ったことを追求し、学問に携わる楽しさ、アイデア次第で新しいものを作りだせる可能性を、たくさん発見できたらいいと思います。