寝たきり高齢者の増加、
介護者の人手不足など、
ロボットでサポートする
やさしい未来をめざしたい。

蒋 暁珂

Vol.7

歩行支援ロボットの開発で、
多くの人に歩ける喜びを!

  • 3 すべての人に健康と福祉を
蒋 暁珂

大学院 システム工学研究科
システム工学専攻 ロボティクスコース1年

蒋 暁珂

Syou Gyouka

工学部ロボティクス学科から大学院へ進み、「知能ロボティクス研究室」に。医療や福祉に役立てられるロボット、製品の開発を行うことで、質の高い保健サービスの提供をめざす。

歩きたくても歩けない人、
筋力の衰えに困っている高齢者などの
手助けに。
自立歩行をサポートするロボットは
生きる希望と、人々に幸せを与えると
思います。

レストランでも見かける配膳ロボットのように、ロボット技術は私たちの生活の身近に存在するものとなりました。私自身は、幼い頃から機械に興味があり、中学生の頃にはロボットへと関心が移行。近畿大学へ入学した理由も、現在所属する黄教授の研究室に入ることが夢だったからです。現在、研究対象としている「駆動型胸部支持パッドを有する歩行車」は、黄教授を筆頭に開発された歩行アシストロボットです。加齢や病気で下肢部の筋力が弱くなった方や、腰の回転が難しい高齢者などのサポートを目的に開発を進めています。

胸部と密接する支持パッドは、高さや角度が調整でき、身長180cm、体重100kgまでの人に利用できます。また、支持パッドに4個のロードセルを設置し、かかる力の分布を計測。被験者のふくらはぎに重りを付けるなど、さまざまなデータを計測しています。

胸部を支える支持パッドが付いた歩行車は、以前にも研究室で作られていましたが、大きく改良された部分があります。それが支持パッドの背部に取り付けたモーターです。駆動型にしたことにより、腰部と大腿部に装着するベルトを介して利用者の下肢を自動で引っ張ることができるようになりました。胸の動きを補助してあげることで上半身と下半身がうまく連動し、自立歩行を促進する効果が得られるのです。現在、若い健常者を被験者として計測データを集め、モーターの周期、回転速度、角度など、最も動きやすいパターンや、どの状態が高齢者に向いているかを検証しています。

このロボットが優れているのは、使う人の歩行意欲を促してあげられる点です。今ある力を補助し、高めてあげることで、自ら歩ける喜びを実感できるのです。駆動型にしたことで、生まれつき筋力の弱い方、車椅子を利用されている方も利用でき、より多くの人をサポートできるようになったとも思います。見た目はとても大きなロボットですが、学会などで発表した際は、これまでにない面白い研究だと評価されました。もし実用化されれば、自宅で日常生活をしながら歩行を訓練できるだけでなく、病院やリハビリ施設をはじめ、福祉サービス施設などに設置してもらうなど、活用シーンが広がることに期待しています。

寝たきりになる高齢者は増える傾向にあり、介護者の人手不足は大きな課題となります。そういった背景もふまえ、さらに扱いやすいロボットとなるよう改良を重ねていきます。

黄教授の研究に憧れ、できれば医療分野でロボット開発に携わりたいと思ったのは、私の祖父も関係しています。脳卒中で倒れた祖父は、あまり動けなくなり認知症を患いました。大学入学前に亡くなってしまいましたが、身長の高い祖父を大人2人がかりで支えていた姿を思い出すと、自立して歩ける環境があれば、もう少し長生きできたのではと考えさせられます。そのときの家族や大切な人の健康を願う気持ちは、今、困っている人を助け、高齢者を支えたい希望へとつながりました。今後も、たくさんの人により良い医療製品を届けることを目標に、研究に努めたいと思います。