近畿大学大学院 自己点検・評価(平成26年度実施)

大学名:近畿大学大学院
研究科・専攻名:薬学研究科薬学専攻 博士課程
入学定員:3名

入学者数、在籍者数、退学者・修了者数

平成24年度 平成25年度 平成26年度
入学者数 2名 3名 5名
入学者数内訳 6年制薬学部出身 1名(内社会人:0名、留学生:0名) 1名(内社会人:0名、留学生:0名) 4名(内社会人:1名、留学生:0名)
4年制薬学部出身 0名(内社会人:0名、留学生:0名) 0名(内社会人:0名、留学生:0名) 0名(内社会人:0名、留学生:0名)
旧4年制薬学部出身 1名(内社会人:1名、留学生:0名) 2名(内社会人:2名、留学生:0名) 1名(内社会人:1名、留学生:0名)
薬学部以外出身 0名(内社会人:0名、留学生:0名) 0名(内社会人:0名、留学生:0名) 0名(内社会人:0名、留学生:0名)
その他 0名 0名 0名
在籍学生数(平成26年5月1日現在) 9名

「理念とミッション」、「アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー」と実際に行われている教育との整合性

理念とミッション

近畿大学大学院薬学専攻は、主に薬学部の6年制学科を卒業し薬剤師免許を取得した(あるいは見込みの)学生のうち、生命の尊厳性を理解した上で研究に強い興味をもち、科学を通してヒトの健康の増進に貢献したい人を対象に設置したものである。本専攻では、いわゆるファーマシスト・サイエンティストを養成することを主な目的としている。すなわち、研究者の観点から薬物療法における諸問題を解決し、より高度な医療の実現に貢献できる薬剤師を養成する。また逆に、臨床を知る薬剤師としての視点をもって、新しい医薬品の開発研究や臨床開発、行政等幅広い分野で活躍する人を輩出していくことも念頭に置いている。そのため本専攻では教育研究目的の特徴を明確にするためコース制度を導入している。すなわち、1年以上の臨床現場での研修・研究を含めて臨床における課題に直結する研究を行う「臨床薬学コース」、臨床の薬物治療に関連するあらゆる分野の研究を行う「医療生命薬学コース」、3年間以上のがん専門薬剤師研修認定施設における臨床研修・研究を含めて、最先端の高度ながん治療に関する専門知識と研究者としての能力を併せ持つ薬剤師の育成を目指す「がん専門薬剤師養成コース」を設置している。併設する薬科学専攻博士後期課程との最も大きな相違は、薬学専攻では常に臨床を意識して臨床に関連する教育研究を行うことである。すなわち、「臨床薬学コース」では、臨床系(実務家)教員が担当する臨床医療薬学系の3科目のうち1科目を専修科目として選択した上で、本人の希望により、本専攻の医療生物薬学系、医療化学系、さらに薬科学専攻の開講科目のうち1科目を副専修科目として選択し、複数教員の指導下で科目横断的な研究を行うことができる。さらに平成25年度から国立循環器病研究センター、平成26年度からは、市立堺病院と連携協定を締結し、学外講座を各施設薬剤部に設置するとともに、担当教授を配置し、教育・臨床研究を行う環境を整備している。「医療生命薬学コース」では、臨床系(実務家)教員が担当する臨床医療薬学系より1科目を臨床専修科目として選択した上で、医療生物薬学系、医療化学系、さらに薬科学専攻の開講科目のうち1科目を専修科目として選択し、臨床系教員と基礎系教員の指導の下、常に臨床を意識し、薬物治療に関連する幅広い研究を行う。「がん専門薬剤師養成コース」では、臨床現場で先進的かつ質の高いがん薬物療法を行う技能と態度及び臨床研究能力を修得させるため、3年以上のがん薬物療法先進実務研修・臨床研究を実施している。実施場所は本学医学部附属病院等のがん専門薬剤師研修認定施設であり、がん患者の薬物療法に従事し、がんに関する臨床研究・基礎研究を行う。また、各大学附属病院の医師、薬剤師(がん指導薬剤師、がん専門薬剤師)、看護師、医学物理士による多職種の指導体制の下で「SPを用いた職種横断的臨床課題演習」、「職種横断的ケーススタディー演習」、全国の著名な医師、薬剤師、看護師による「共通特論Ⅰ、Ⅱ」等、多職種が合同で行う演習、講義を必修とし、チーム医療を実践しながら、研究者の観点から薬物療法における諸問題を解決し、より高度な医療の実現に貢献できる教育・研究環境を整備している。

自己点検・評価

このような理念とミッションは、薬学系人材養成の在り方に関する検討会から提言されている4年制博士課程の主たる目的に照らし合わせて相応しいものと考える。また本専攻では教育研究目的の特徴を明確にするためコース制度を導入している点は評価できる。すなわち、「臨床薬学コース」では、臨床系(実務家)教員が担当する科目を専修科目とする事、1年以上の臨床現場での実務研修・臨床研究を必修としている事はいわゆるファーマシスト・サイエンティストを養成する目的と整合性が認められる。特に医療機関2施設と連携協定を締結し、各連携協定締結医療施設に連携講座を設置し、教員を配置している事は、ファーマシスト・サイエンティストを育成する良いモデルと考えられ、研究者の観点から薬物療法における諸問題を解決し、より高度な医療の実現に貢献できる薬剤師を養成するという、理念とミッションに相応しいとともに、その環境を整備している事も評価できる。「医療生命薬学コース」でも、臨床の薬物治療に関連するあらゆる分野の研究を行うため、臨床系(実務家)教員が担当する科目を臨床専修科目とし、専修科目の基礎系教員と指導を実施している事は、常に臨床を意識するという理念とミッションに合致するものと考えられる。「がん専門薬剤師養成コース」は、質の高いがん薬物療法を行う技能と態度及び臨床研究能力を修得させるため、がん専門薬剤師研修認定施設での実務研修・研究を実施しており、本研究科教員を含めた医師、薬剤師、看護師の多職種による指導体制を実施している事は評価できる。また多職種の大学院生が一堂に会しチーム医療を実践する講義・演習の形態も特色があり評価できる。

アドミッションポリシー

臨床医療に関連する薬学研究を通じ、卓越した洞察力と問題解決能力を駆使し、研究者の観点をもって多様な薬学領域で活躍できる人材を育成するので、次のような人の入学を期待します。

1.
薬学及び臨床医療に関する幅広い知識と専門領域における探究心を有し、研究を通して薬物療法の進歩に貢献したい人。
2.
高い倫理観を持つ薬学研究者の観点から臨床医療・薬物療法における諸問題を直接解決し、人類の健康と福祉に貢献しようとする人。
3.
大学院在学中はもちろん、生涯に亘って研究意欲と向上心を持ち続け、研鑽を積むことができる人。

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自己点検・評価

薬学専攻博士課程は、主に6年制学科で医療に関する専門知識を身に付けた後、さらに薬学及び臨床医療の現場における臨床に関する幅広い知識と、臨床に関連した研究を通して医療の進歩に貢献したい人材を受け入れている。一方、薬科学専攻博士後期課程は、高い倫理観を持つ生命科学研究者になりたい人材や薬学研究を通して社会に貢献しようとする意識が強く、新しい課題に取り組もうとする人材を受け入れている。両専攻の入学者受入れ方針は、大きく異なっていることは評価できる。また、このアドミッションポリシーは、本専攻の理念・ミッションあるいは設置された3つのコースの教育と合致したものであり評価できる。

カリキュラムポリシー

臨床における薬物治療上の諸問題を評価し解決する能力、また医薬品の臨床応用や適正使用に役立つ幅広い分野の研究に貢献しうる人材を育成するため、以下のようなカリキュラムを取り入れています。

1.
特別実験研究及び博士論文作成の重要性に鑑み、指導教員制度を採用し、きめ細かな教育研究指導を実施しています。
2.
1つの専門分野に偏らない幅広い研究能力を養成するため、専修科目に加えて臨床専修科目や副専修科目を選択することを可能とし、臨床を含めた複数の専門分野の教育研究指導を受ける機会を提供します。
3.
複数教員による科目横断的な先進特論を履修することで幅広い見識を養い、さらに、最先端の研究動向を学ぶために国内外の招聘研究者による先進特別講義を提供します。
4.
演習・実務研修・臨床研究関連科目では、学内におけるセミナーと総説講演、学外での学会発表を通して発表能力を養うほか、臨床薬物療法における問題解決能力や臨床研究遂行能力を醸成します。
5.
グローバル化に対応するため、英語発表に関する演習を導入し、学術雑誌に英文による論文発表を行うことを強く求めています。
6.
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自己点検・評価

 薬学専攻博士課程では、常に臨床を意識して臨床に関連する教育研究を実施するカリキュラムとなっている。
 「臨床薬学コース」では、臨床現場での研修及び臨床に直結した1年以上の研究を行い、臨床医療薬学系の3科目(臨床薬剤情報学、医薬品評価解析学、医療薬剤学)のうち1科目を専修科目として選択した上で、本人の希望により、本専攻の医療生物薬学系(薬物治療学、薬物動態解析学、神経生化学、機能製剤設計学)、医療化学系(公衆衛生学、病態分子解析学、生命有機化学)、さらに薬科学専攻の開講科目のうち1科目を副専修科目として選択し、複数教員の指導下で科目横断的な研究を行うことができる。
 「医療生命薬学コース」では、臨床の薬物治療に関連するあらゆる分野の研究を行い、臨床医療薬学系の科目を臨床専修科目として選択した上で、医療生物薬学系、医療化学系、さらに薬科学専攻の開講科目を専修科目として選択し、臨床系教員と基礎系教員の指導の下、常に臨床を意識し、薬物治療に関連する幅広い研究をすることができる。
 「がん専門薬剤師養成コース」では、がん専門薬剤師研修認定施設において3年間のがん薬物療法先進実務研修・臨床研修及びがん薬物療法に関する研究行い、臨床現場で先進的かつ質の高いがん薬物療法を行う技能と態度及び臨床研究能力を修得する。また、全コースで、学術雑誌への投稿や国際学会発表に対応できる能力を醸成できる科学英語コミュニケーション先進演習を開講している。さらに、演習科目、複数教員による科目横断的な先進特論や国内外の招聘研究者による先進特別講義を開講することで、幅広い見識を養える機会を設けている。
 薬学専攻博士課程のカリキュラムは、臨床における薬物治療上の諸問題を評価し解決する能力、また医薬品の臨床応用や適正使用に役立つ幅広い分野の研究に貢献しうる人材の育成に重点をおいたものとなっている。一方、薬科学専攻博士後期課程のカリキュラムは、創薬科学及び生命薬科学とその関連領域における優れた研究能力を擁する人の育成に努め、医薬品の創製・開発や安全性の向上、あるいは薬学的観点から生命科学の進歩に貢献しうる人を育成するためのものである。両専攻の教育課程編成・実施の方針は、大きく異なっていることは評価できる。

ディプロマポリシー

臨床に精通した薬学研究者として活躍するため、あるいは研究者の観点から臨床薬物療法の進歩に貢献するために必要な幅広い学識、研究能力、問題解決能力を身に付けたことを客観的に評価し、所定の単位を修得した学生に修了を認定し、博士(薬学)を授与します。課程修了までに満たしておくべき条件を以下に示します。

1.
研究成果に基づく博士論文を提出するとともに、公聴会で口頭発表を行い、最終試験に合格していること。
2.
博士学位論文の内容を、専門領域における学会で発表し、厳格な審査制度が確立した学術雑誌に論文を発表していること。なお、原則として掲載論文のうち少なくとも1報は英文であり、第一著者として発表した論文が含まれていること。
3.
臨床を含む幅広い薬学領域において、研究活動を自立して遂行する能力を身に付けていること。
4.
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自己点検・評価

 薬剤師免許を持つ「臨床薬学コース」と「がん専門薬剤師養成コース」の学生は、主に臨床に精通した薬学研究者やチーム医療を実践できる臨床薬剤師として、社会で活躍できる能力を身に付けていることが必要である。また、「医療生命薬学コース」の6年制学科または薬学部出身者以外の学生は、臨床に精通した薬学研究者として医療に貢献できる能力を身に付けていることが必要である。つまり、将来、健康食品や化粧品の研究開発及び行政への申請に携わる人材、企業において医薬品の研究開発や治験に携わる人材、大学における基礎分野の研究者、国公立・財団法人・社団法人の各種研究機関における研究者等の輩出を想定している。したがって、本専攻では、設置された3つのコースの特徴を活かして常に臨床を意識した教育研究を行うことになる。
 薬学専攻博士課程では、臨床に精通した薬学研究者として活躍するため、あるいは研究者の観点から臨床薬物療法の進歩に貢献するために必要な幅広い学識、臨床研究能力、問題解決能力を身に付けていることが必要である。一方、薬科学専攻博士後期課程では、薬学・生命科学分野の自立した研究者として研究活動を行うために必要な研究能力、創造力を身に付けていることが必要である。両専攻の学位授与方針は、大きく異なっていることは評価できる。

入学者選抜の方法

9月中旬(9月実施)に学内入学選考、一般入学選考、社会人入学選考を、2月下旬(2月実施)に一般入学選考、社会人入学選考、外国人留学生入学試験を実施している。特に、6年制学科(本学では医療薬学科)卒業見込みの学生に、早期に進路を決定できるように9月に学内入学選考を実施している。入学希望者の選抜は、学力試験及び面接試験の結果を総合的に判断して行うことにしている。また、出願時に、成績証明書及び一般入学選考における卒業論文または修士論文提出者を除き研究経過報告書(A4用紙に1500字程度)の提出を義務づけている(外国人留学生入学試験を除く)。

【平成25年度9月及び2月実施の入試概要】

<学内入学選考(9月実施のみ)>

臨床薬学コース及び医療生命薬学コース:推薦書、成績証明書、研究経過報告書とすべての大学院指導教授による面接試問

<一般入学選考>

臨床薬学コース及び医療生命薬学コース:成績証明書、英語、研究経過報告書、研究内容及び研究計画に関するプレゼンテーションとすべての大学院指導教授による面接試問
がん専門薬剤師養成コース:成績証明書、小論文、研究経過報告書とすべての大学院指導教授による面接試問

<社会人入学選考>

臨床薬学コース及び医療生命薬学コース:成績証明書、研究計画書、研究内容及び研究計画に関するプレゼンテーションとすべての大学院指導教授による面接試問
がん専門薬剤師コース:推薦書、小論文、研究計画書とすべての大学院指導教授による面接試問

<外国人留学生入学試験>

医療生命薬学コース:成績証明書、日本語(日本留学試験)、英語とすべての大学院指導教授による面接試問(志望専攻分野に関する専門試験を含む)

臨床薬学コース及び医療生命薬学コースの出願時に、一般入学選考における卒業論文または修士論文提出者を除き研究経過報告書の提出を義務づけており、入学選考時に、研究に関する知識と技能や学位論文をまとめる能力の有無について評価できるよう配慮している。さらに、臨床薬学コース及びがん専門薬剤師養成コースの出願資格者は、臨床現場における実習を必修としているため、原則として日本国の薬剤師免許を有すること、または本課程入学年の4月までに薬剤師国家試験に合格見込みであることを必須条件とし、臨床に関連した研究を遂行できるよう配慮している。
一方、医療生命薬学コースは、将来、リサーチマインドを有する薬剤師、健康食品や化粧品の研究開発及び行政への申請に携わる人材、企業において医薬品の研究開発や治験に携わる人材、大学における基礎分野の研究者、国公立・財団法人・社団法人の各種研究機関における研究者等の幅広い人材育成を想定している。

自己点検・評価

学内入学選考、一般入学選考、社会人入学選考及び外国人留学生入学試験の詳細については「大学院学生募集要項 大学院研究科概要」、「大学院・外国人留学生入学試験要項」等に明示し、適切に学生募集を行っている。
入学者選考にあたっては、出願時に提出された成績証明書を確認の上、学力試験及び研究経過報告書あるいは研究計画書に基づき、すべての大学院指導教授による面接試問により厳格に判定している事は評価できる。
実施された選考結果は、薬学研究科に所属する全教員から構成される研究科運営委員会にて審議、承認しており、透明性を確保している事も評価できる。

カリキュラムの内容

 薬剤師としての臨床実務能力を基盤とし、研究者の観点から薬物治療における諸問題を解決し、より高度な医療の実現に貢献できる人材、薬剤師としての視点をもって、新しい医薬品の研究や臨床開発、行政等幅広い分野で活躍し、グローバルな研究活動に対応できる人材を輩出することを目的としている。したがって、臨床研究を行う「臨床医療薬学系」、生物学的な観点から臨床医療に関連する研究を行う「医療生物薬学系」、化学的な観点から臨床医療に関連する研究を行う「医療化学系」の3つの学問分野におけるカリキュラム及び科学英語コミュニケーション先進演習が設置されている。
 また、高度な臨床能力を涵養できるように臨床薬学先進実務研修・臨床研究として大学附属病院及び連携協定締結医療施設等の臨床現場での研修・研究で学修の機会を設けている。また、プレゼンテーション能力と幅広い見識を持つ有能な研究者を育成するために臨床薬学先進実務研修・臨床研究で学会発表、医療生命薬学先進演習で学会発表と総説講演の課題・演習を設定している。 高度な研究能力を有する薬剤師(ファーマシスト・サイエンティスト)の養成を目的とした「臨床薬学コース」、優れた研究能力を有する薬剤師、あるいは臨床を熟知した薬剤師としての視点をもって、新しい医薬品の研究や臨床開発、行政等幅広い分野で活躍する薬剤師の養成を目的とした「医療生命薬学コース」、質の高い医師、薬剤師、看護師、医学物理士によるオンコロジーチームにおいて、がん治療に積極的に貢献できる薬剤師の養成を目的とした「がん専門薬剤師養成コース」において、履修モデルに示すように特別実験研究、専修科目、副専修科目及び臨床専修科目が属する先進特論、演習等の履修で計36単位以上を学修することを定めている。
 各分野の特別実験研究科目としては、「臨床医療薬学系」には臨床薬剤情報学、医薬品評価解析学、医療薬剤学及び外部講座として循環器薬物療法学、臨床処方解析学、「医療生物薬学系」には薬物治療学、薬物動態解析学、神経生化学及び機能製剤設計学、「医療化学系」には公衆衛生学、病態分子解析学及び生命有機化学、「生命薬科学系」には病態薬理学、化学療法学及び薬品分析学、「創薬科学系」には分子細胞生物学、薬用資源学、天然活性物質学、創薬分子設計学、医薬品化学及び分子医療・ゲノム創薬学を開講し、それぞれ異なった角度から臨床医療、特に薬物治療の進歩に貢献する実学的研究を行う。臨床能力を基盤とした高度な医療の実現に貢献できる優れた研究能力を有する人材を育成することから、特別実験研究科目は「臨床医療薬学系」より専修科目として選択することを必須とすることによって、臨床系教員と基礎系教員の共同指導の下、臨床に関連する研究テーマを選択して学位取得を目指す。特別実験研究科目における研究内容は授業シラバスに示しているが、それぞれのコースの例として、薬剤疫学的手法による医薬品適正使用に関する研究(「臨床薬学コース」)、生体内分子を標的とした創薬及び作用機序解明の研究(「医療生命薬学コース」)、アポトーシス誘導薬剤に関する研究(「がん専門薬剤師養成コース」)等の21の分野における研究テーマが設定されている。

自己点検・評価

 薬学研究科薬学専攻博士課程は基礎科学的な観点から薬学を深く探求する薬科学専攻と異なり、高度な臨床能力を基軸にした観点から、臨床におけるエビデンスの探求及び薬物療法に寄与できる創薬や作用機序を解明する能力を育成できるように「臨床医療薬学系」「医療生物薬学系」「医療化学系」「生命薬科学系」「創薬科学系」のさまざまな分野におけるカリキュラムの設定と臨床系教員と基礎系教員の共同指導システムが構築されている。また、設置されている授業科目は授業シラバスが示すように幅広い薬学分野の教育研究の機会の提供と科学英語コミュニケーション先進演習の導入等のグローバル化への対応も考慮しており、臨床の薬物治療に関連する幅広い研究を実施する環境である。さらに学内だけでなく実践的な臨床に接することが可能な外部の大学附属病院及び連携協定締結医療施設に教育研究の場が設けられており、広い視野での問題解決能力の醸成を可能なカリキュラム対応となっており、薬学研究科薬学専攻博士課程で扱う内容としてふさわしいと評価できる。

シラバス及び教育課程等の概要(別紙様式第2号)
履修モデル

全大学院生の研究テーマ

「臨床薬学コース」、「医療生命薬学コース」及び「がん専門薬剤師養成コース」の全学生のテーマを各コース別に以下に記す。

<臨床薬学コース>
1.
感染制御における薬物療法の適正使用に関わる研究
2.
副作用データベースを用いた抗不整脈薬の適正使用に関する研究
3.
データマインニング手法による循環器用薬の適正使用に関する研究
4.
免疫抑制剤の適正使用に関する臨床薬学的及び分子薬理学的検討
<医療生命薬学コース>
1.
間質性膀胱炎の病態と新規治療薬に関する研究
<がん専門薬剤師養成コース>
1.
がん分子標的薬併用による作用増強と臨床におけるその副作用対策
2.
頭頸部腫瘍での分子標的薬併用による治療向上効果と副作用対策
3.
造血器腫瘍での抗がん剤耐性機序と臨床での副作用発現の解析
4.
抗体のリンパ管新生-癌転移、及び医薬品性状の臨床に及ぼす影響

自己点検・評価

「臨床薬学コース」においては、臨床における薬物治療上の問題について、現代のニーズにあった諸事項を取り上げ、それら諸問題を評価・分析し解決へと導くテーマがそれぞれ設定されている。「医療生命薬学コース」では、新しい薬物治療法に関する研究テーマが設定されている。また、「がん専門薬剤師養成コース」では、さらに専門性が高く、抗がん剤の副作用軽減や有効利用に関する臨床的事項に関するテーマが挙げられている。いずれのコースにおいても各研究テーマは、治療を意識した臨床に関する研究内容であり、また、各コースにおいてそれぞれ特徴ある研究が行われていると考えられ評価できる。

医療機関・薬局等関連施設と連携した教育・研究内容

薬学専攻博士課程では、薬剤師として医療に従事するだけでなく、研究者の観点から薬物治療における諸問題を解決し、より高度な医療の実現に貢献できるいわゆるファーマシスト・サイエンティストの養成を主目的としている。また、薬剤師としての視点をもって、新しい医薬品の研究や臨床開発、行政等幅広い分野で活躍する人を輩出していくことも念頭に置いている。そのため、1年以上の臨床現場での実務研修・臨床研究を含めて臨床における課題に直結する研究を行う「臨床薬学コース」、臨床の薬物治療に関連するあらゆる分野の研究を行う「医療生命薬学コース」、3年以上の実務研修・臨床研究を含めてがん薬物療法に関する研究を行い、最先端の高度ながん治療に関する専門知識と研究者としての能力を併せ持つ薬剤師の育成を目指す「がん専門薬剤師養成コース」の3つのコースが設置されている。このうち、「臨床薬学コース」及び「がん専門薬剤師養成コース」については、医療提供施設との連携による実務研修・臨床研究が必須となっている。

<臨床薬学コース>

「臨床薬学コース」の実務研修・臨床研究は本学医学部附属病院、医学部奈良病院、医学部堺病院及び連携協定締結医療施設を中心に実施する。これらの病院に在籍する臨床経験豊富な薬剤師と本研究科の臨床系専任教員が連携して臨床薬学研究指導にあたる。医学部3病院薬剤部と本研究科の臨床薬学コースの教員は、学部学生における長期実務実習における指導も含め緊密な連携体制を既に構築している。特に本学医学部附属病院では、学生用セミナー室及び臨床系専任教員のための研究室が設置されるなど研究環境も整備されている。また、連携協定締結医療施設をはじめとした近隣の医療施設との共同研究を実施するなど医学部3病院以外の医療施設とも緊密な連携に努めており、これらの医療施設において「医療生命薬学コース」の学生が臨床研究を行うことも可能である。

<がん専門薬剤師養成コース>

「がん専門薬剤師養成コース」では、3年以上、薬剤師としてがん患者の薬物療法に従事し、がんに関する臨床研究を行う。がん薬物療法先進実務研修・臨床研究の主な実施場所は、本学医学部附属病院等日本医療薬学会のがん専門薬剤師研修認定施設とすることにより、充実したがんの実務研修を行うのに必要となる症例数を確保し、高いレベルの臨床研究を行うための設備・機材を担保する。指導には本研究科専任教員に加え、現場のがん専門薬剤師等の臨床薬剤師を加えることにより、薬物療法等薬学分野の能力の涵養を図る。さらに、医師のほか看護師や医学物理士等も指導に参画することで、集学的ながん治療全域についての広汎な知識、技能及び態度を修得し、次世代のチーム医療を実践及び向上させる能力を養う。

自己点検・評価

本学は医学部及び医学部3病院を擁する総合大学であるため、医療施設における臨床研究を遂行する体制が整っている。実際に学生が医学部3病院において臨床研究や実務研修を実施するための連携体制を強め、医療の現場における臨床的な課題を対象とする研究を行うことができる体制を構築していることは評価できる。さらに臨床薬学研究に実績のある医療施設と連携協定を締結し外部講座を設置した。これにより医学部3病院に限らず幅広い視点から臨床薬学研究を実施できる体制が整備できていることは評価できる。また、がん専門薬剤師養成コースにおいて、医師のほか看護師や医学物理士等も指導に参画していることは他職種との連携という意味において評価できる。

学位審査体制・修了要件

【学位審査体制】

近畿大学学位規程第1章総則第5条の規程(博士の学位授与の要件)により博士論文の審査及び最終試験を実施する。学位論文の審査体制、方法・基準は研究科でも規定されており、内規を設けて専攻ごとに厳格に運用している。専修科目または副専修科目を担当した指導教員が主査となり、薬学研究科薬学専攻博士課程及び薬科学専攻博士後期課程において関連のある他の研究指導教員を2名以上、また、必要に応じて学内外の大学教員や協力企業の研究者を副主査として選定する。主査及び副主査は、博士論文の審査及び最終試験を実施する。また最終試験とは別に、「公聴会(博士論文発表会)」を行い、専門分野における口述試験を行う。合否は近畿大学学位規程第3章博士の学位第1節課程修了による学位第19条の規程(合否の決定)により研究科委員会にて議決する。

【修了要件】

<臨床薬学コース>

 4年以上在学し、専修科目の特別実験研究20単位(専修科目と副専修科目を選択する場合:各10単位、計20単位)を必修とする。また、専修科目及び副専修科目が属する先進特論を必修として、先進特論(各2単位)及び先進特別講義1、2(各3単位)の中から計8単位以上を修得する。さらに、臨床薬学先進実務研修・臨床研究(6単位)及びコース特別科目の臨床薬剤情報解析学特論(2単位)を必修とする。なお、臨床医療薬学系連携講座を専修科目として選択する場合は、専修科目及び副専修科目の特別実験研究20単位、専修科目、副専修科目が属する先進特論(各2単位)及び臨床薬剤情報学特論講義(2単位)、臨床薬学先進実務研修・臨床研究(6単位)を必修とし、先進特論、先進特別講義1、2(各3単位)、科学英語コミュニケーション先進演習(2単位)の中から4単位以上を習得する。
 以上、臨床薬学コースでは、計36単位以上を学修しなければならない。なお、指導教員が必要と認めたとき、学生は所定の単位数以外に、その指示された先進特論あるいは先進特別講義も履修しなければならない。
 また本コースでは、厳格な審査制度の確立した学術雑誌への原著論文の発表を2報以上(第一著者論文及び英語で書かれた論文を1報以上含む)行った上で、臨床系学会での研究発表を1回以上行わねばならない。

<医療生命薬学コース>

 4年以上在学し、臨床専修科目及び専修科目の特別実験研究20単位を必修とする。また、臨床専修科目及び専修科目が属する先進特論を必修として、先進特論(各2単位)及び先進特別講義1、2(各3単位)の中から計8単位以上を修得する。さらに、医療生命薬学先進演習1~3(各2単位)の6単位及び科学英語コミュニケーション先進演習(2単位)を必修とする。
以上、医療生命薬学コースでは、計36単位以上を学修しなければならない。なお、指導教員が必要と認めたとき、学生は所定の単位数以外に、その指示された先進特論あるいは先進特別講義も履修しなければならない。
また本コースでは、厳格な審査制度の確立した学術雑誌への原著論文の発表を2報以上(第一著者論文、英文を1報以上含む)行った上で、各専門分野の学会での研究発表を2回以上行うこと、専門関連分野に関する総説講演を行うことも義務付けられている。

<がん専門薬剤師養成コース>

 4年以上在学し、専修科目の特別実験研究10単位(専修科目と副専修科目を選択する場合:各5単位、計10単位)を必修とする。また、専修科目あるいは副専修科目が属する先進特論を必修として、計2単位以上を修得する。さらに、がん薬物療法先進実務研修・臨床研究の18単位及びコース特別科目として共通特論Ⅰ、Ⅱ(各2単位)を必修とし、SPを用いた職種横断的臨床課題演習、職種横断的ケーススタディー演習、がん薬物療法課題演習(各1単位)、共通特論Ⅲ、科学英語コミュニケーション先進演習(各2単位)から2単位以上を学修する。
 以上、がん専門薬剤師養成コースにおいては、計36単位以上を学修しなければならない。なお、指導教員が必要と認めたとき、学生は所定の単位数以外に、その指示された先進特論あるいは先進特別講義も履修しなければならない。
また本コースでは、厳格な審査制度の確立した学術雑誌への原著論文の発表を1報以上(第一著者論文を1報、英文を1報以上含むよう努めなければならない)行った上で、がん領域の学会での研究発表を1回以上行わねばならない。
 以上、各コースにおいて定められた単位数を修得した者または論文審査終了までに修得する見込みのある者で、かつ外国語の学力等に関する検定に合格した者に対しては、課程修了による博士論文の提出資格が与えられ、提出した論文の審査及び最終試験に合格すれば、課程修了による博士の学位が授与され、博士課程修了となる。

自己点検・評価

明確な学位審査基準を設定していることは評価できる。また、各コースに相応しいと考えられる特別実験研究、講義、実務研修・臨床研究、演習等からなる科目の履修要件を設定するとともに、学会発表や総説講演等のプレゼンテーションも各コースで必修の実務研修・臨床研究や演習等の単位としている。これは、知識、技術の修得のみならず、研究を遂行し、成果をまとめる能力を修了要件としていることであり、ディプロマポリシーを反映しており評価できる。さらに、審査制度ある学術雑誌への原著論文の報文数や学位論文の提出条件を明文化していることは、研究論文のレベルを保証するものであり評価できる。

修了者の進路の基本的な考え方

 近畿大学大学院薬学研究科薬学専攻博士課程は「医療生命薬学コース」、「臨床薬学コース」、「がん専門薬剤師養成コース」の3つのコースから構成されており、いずれのコースにおいても“ファーマシスト・サイエンティスト”として、基礎薬学と臨床をブリッジング(架橋化)し、医療の場において、研究経験を踏まえて問題解決できる薬剤師となることを基本とし、各コースでの特徴的な教育・研究内容で養った知識、技能及び態度を発揮できる就職先を想定している。
 「臨床薬学コース」では、臨床に密接に関連した研究を行うと同時に、臨床薬学先端実務研修・臨床研究(必修)において、病院や薬局における1年以上の実務研修・臨床研究を行うことが最大の特徴である。ここでは、4年間の教育研究を通じて、本学医学部附属病または連携協定締結医療施設等における臨床研究に携わることとなる。この様なことから本コースでは、薬剤師、病院・薬局における最先端の薬物治療及び臨床研究に寄与できる臨床薬剤師、大学の医療系研究者、企業における医薬品の開発従事者等の輩出を想定している。
 「医療生命薬学コース」の学生は、医薬品による薬物治療や体内動態、医薬品の創製や開発、天然物由来動植物からの生理活性物質の探索や合成、遺伝子治療、医薬品の適正使用、疾病予防等、幅広い医療生物薬学や医療化学に関連した教育研究を学修する。本コースは、4年間の教育研究を通じて、将来、臨床現場においてリサーチマインドを有する薬剤師、健康食品や化粧品の研究開発及び行政へ新薬の申請に携わる人材、製薬企業での医薬品の研究開発や治験に携わる人材、大学の研究者、国公立・財団法人・社団法人の各種研究機関における研究者等のグローバルな研究活動に対応できる人材輩出を想定している。
 「がん専門薬剤師養成コース」では、がんに特化した特論講義及び演習を通して、学生がチーム医療の中で、がん薬物療法に精通した臨床薬剤師として知識・技能・態度を修得し、実際の臨床現場でがん専門薬剤師として臨床研究等、相応しい能力を発揮できることを教育目標としている。本コースではさらに、大学におけるがんに関連した基礎研究に加え、がん専門薬剤師養成のための研修機関(例えば、本学医学部附属病院)で、がんに関連した臨床研究を行う。このような4年間の教育研究を通じて,最先端のがん薬物療法を実践できる臨床薬剤師の養成を図り、修了した学生の多くは、大学附属病院、がん診療連携拠点病院等に就職し、将来、がん薬物療法認定薬剤師、さらにがん専門薬剤師の認定資格の取得を目指すとともに、先進的ながん薬物治療法の臨床・研究・教育において指導的立場になることのできる人材の輩出を想定している。
 「臨床薬学コース」、「がん専門薬剤師養成コース」の修了者については、更なる臨床知識・技能の習得を目指しつつ、専門薬剤師として職能を発揮できる本学医学部附属病院を含めた大学附属病院や連携拠点病院との臨床研修のネットワークの構築を推進することが修了生の進路開拓にも繋がると考えている。「医療生命薬学コース」の修了生については、我が国の生命科学研究を俯瞰的に捉えつつ、産学官における研究シーズや研究リソースを発掘しながら、産学官連携研究をコーディネートし、研究プロジェクトの推進や運営に携わることのできる人材、レギュラトリーサイエンスを通じて、行政及び行政法人の立場から国民の健康福祉に貢献できる人材の輩出を想定しつつ進路開拓にも繋げたい。