近畿大学 経済学部・大学院 経済学研究科

河田幸視准教授の共著論文が、Social Sciences & Humanities Open(Elsevier)誌に掲載されました

2026.10.27

  • 研究

著者      Yukichika Kawata / Koki Kyo
論文タイトル  Impact of the 2011 Great East Japan Earthquake on Domestic Dogs: An SCM Analysis of Three Disaster‑Affected Prefectures
掲載誌情報   Social Sciences & Humanities Open 14: 103839
リンク先    https://doi.org/10.1016/j.ssaho.2026.103839

<論文の内容紹介>
自然災害の発生時や復興過程において、人々の態度の変化によってペットやコンパニオンアニマルがどんな影響を受けるのかについては、ポジティブな結果とネガティブな結果の両方が報告されています。この研究では、2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県、宮城県、福島県を対象に、震災が発生しなかった場合という「反実仮想」を、合成コントロール法(SCM)で構築し、実績値と比較することで、自然災害の影響を分析しました。

本研究では、「衛生行政報告例」に含まれる犬に関する4つの指標を用いました。これらは行政データであり、飼い主の態度や動物福祉を直接測定したものではありません。そこで、分析では最初に、環境クズネッツ曲線を推定し、現在の日本は所得の上昇とともに動物福祉が改善する段階であることを示しました。

次に、3県×4指標の計12ケースについてSCM分析をおこないました。震災が発生した2010年度のデータには欠損が含まれていたため、SCM分析では、2011年度からを介入後期間とする感度分析も行いました。その結果、福島県における抑留犬の返還数は、本分析・感度分析のいずれにおいても、震災が発生しなかった場合に予測される値を10%有意水準で上回りました。その他のケースでも、登録数や狂犬病予防接種数が反実仮想を下回るなど、考えうる災害の影響と整合的な変化が観察される場合が多かったのですが、統計的な有意差が認められない場合がほとんどでした。

SCM分析の結果を、環境クズネッツ曲線の結果を踏まえて解釈すると、少なくとも福島県については、震災後に飼い主による犬の引取り行動が活発化した可能性が示唆されたといえそうです。また、本研究では、東日本大震災がペットやコンパニオンアニマルに対する飼い主のネガティブな反応をもたらしたことを示す証拠は得られませんでした。