人体を介した通信技術。
ちょっとした手間を省く
ストレスフリーな通信手段で
スマートな社会づくりに貢献!

谷口 太郎

Vol.14

次世代の当たり前に!
“人体通信”の技術を研究。

  • 9 産業と技術の基盤をつくろう
柴山 敬多

電子情報工学科4年

柴山 敬多

Keita Shibayama

梶原 恵太

大学院 システム工学研究科
システム工学専攻 電子情報工学コース
博士前期課程2年

梶原 恵太

Keita Kajihara

「電磁界情報工学研究室」所属。人体通信をはじめとした、次世代の通信や位置推定に資する知的なワイヤレス技術の研究を進める。

デジタル時代のライフスタイルを支えるのは
使いやすさとセキュリティの両立。
改めて注目されている
“人体通信”の原理を検証し、
より安心でスマートな未来の暮らしを
創造しています。

「人体通信」は、人体を介して機器間の情報伝達を行う新しい通信技術です。伝送方式には電界方式と電流方式の2つがあり、僕たちが研究しているのは電界方式です。これは、人体に微弱な電気を流すことで生じる電界を利用する方法です。電界とは、電気信号が導体を流れる際に、その周囲に生じる電気的な空間のことです。人体は導体として働くので、微弱な電気信号を流すと人体の周囲に電界が発生します。この電界を使うことでスマートフォンなどの機器間で情報をやり取りできます。電界というオーラを人体がまとっている様子をイメージするとわかりやすいと思います。人体通信が提案されたのは1990年代ですが、ここ十数年で研究が急速に進んでいる分野でもあります。

駅の改札に見立てた受信機を簡易的に自分たちで作り、その上を送信機を持って通過。信号をパソコンに送りデータを分析します。

研究では、モバイル端末などの送信機から出る信号が人体を経由して、受信機に送られる通信手法について検証しています。たとえば駅の改札で、ICカードをかざさなくても、送信機となるスマートフォンをカバンやポケットに入れておくだけで入場できるようになるといったことがあげられます。ただ、電界方式の人体通信にはさまざまな課題があります。そのひとつが、電界は周りの環境や人体の状態の影響を受けやすく、受信機が誤った情報を受け取ってしまう可能性です。僕たちは、送った電気信号が人体を通過したときの変化に注目し、原理の検証を通じて解決策を探しています。

具体的には、あらかじめ設定した信号の波形がどのくらい変化して受信機に届いたかを解析することで、送信機を持つ人を特定できます。簡単に説明すると、たとえば僕が送信機を持ち改札を通るとき、大きさ1の信号が0.8に変わるとします。同時に、意図せずその信号が他者を介してしまった場合、信号が0.5に減衰してしまいます。受信機でその変化を検出することで、誰から届いた信号なのかを識別できるのです。現在、この識別にはAI(機械学習)を活用しており、送信機の位置なども考慮しながら実験を繰り返している段階です。人体通信の研究には、情報・通信・電気と学科での学びを全て生かせる魅力があり、アイデアを駆使して進める作業にはやりがいを感じます。

さまざまなパターンのデータを分析して検証することで成果をあげていきます。人体通信は、ストレスフリーな生活を実現できるものでもあり、用途はこれから広がるはずです。いずれスタンダードとなる未来が来れば、暮らしはより便利になっていくと思います。

僕たちの研究は、ひたすらデータと向き合う地道な作業ですが、日々小さな成功を手にできる達成感があります。また、デジタル時代の情報伝達手段として、ますます発展が期待される技術の研究に関わることで、常に新しい考え方を模索する姿勢も身につきました。将来的にこの通信手段が導入されて生活がより便利になれば、産業と技術革新の基盤作りにも貢献できます。ちょっとした手間を省きたい、そんなシンプルな発想ですが、それが未来を創造するアイデアや力になると信じ、今後も研究を進めていきたいと思っています。

※学生の所属および学年は、2025年度取材時のものです。