必要なのは “支え合う力”。
施工の複雑化を解消し、
地球と環境にやさしい
建築手法の開発をめざす!
Vol.13


大学院 システム工学研究科
システム工学専攻 建築コース
博士前期課程1年
田中 莉心
Riko Tanaka
「構造創生研究室」所属。創り出すところに重きを置き、力学的性能と非力学的性能の両立を可能とする構造形態の手法を研究する。
生活に関わるあらゆるものには、それを作る人がいて、私はそこに詰め込まれた工夫や思考の積み重ねに興味を引かれます。私が研究している構造設計もまた、目に見える華やかさではなく、設計者の論理や工夫の積み重ねがあり、追求した合理性と構造的な美しさをかけ合わせた提案ができるところに魅力があると思います。設計を始めるとき、意匠設計者が感性や感情から入るとしたら、構造家は「何故?どのようにして?」という理論からスタートします。もちろんデザインの力なくして合理的で美しい建築は成り立ちません。意匠と構造、2つの関係。そこを深堀した先に、美しさを形にする構造設計の意義と面白さがあるのです。
私が作ろうとしている構造物の基本形となるレシプロカルフレーム。3Dプリンタで作成していますが、実際は木材を使用します。支保工(施工中の支え)を使わず組み立てることができれば、建築物に応用した際、工期を短縮でき、CO₂排出量の削減にも期待できます。
私の研究は、建築構造の中でも近年注目されている「レシプロカルフレーム構造(相持ち構造)」について行っています。レシプロカルフレーム構造とは、部材が互いに支え合いながら、立体的にバランスを保つ構造形式で、短い部材でも原理に沿って組み合わせることで複雑な形状や大スパンの空間を構成することができます。一方で、部材同士が支え合うという高い依存性があるため、特定の組み合わせ順序の厳守や、わずかな誤差が失敗につながるリスクがあります。また、不安定となる施工中に多くの支え(支保工)が必要なことで、施工の複雑化という課題も生じます。そこで研究では、施工の複雑化の解消や工期短縮をめざした、支保工を使用しない自己起立型の組立プロセスをシミュレーションしています。
具体的には、人がすっぽり入る程度の球体のドームを作ろうとしています。そもそもレシプロカルフレーム構造は、ひとつの接点に部材が集中することがなく荷重が分散できるので、多角形など複雑な立体を作り出せるのがメリットです。私はドームを作ろうとしているので、円という一定の曲率を作るために、基本となる四角形の部材を組み合わせていますが、本来は三角形や六角形などを組み合わせることで多様な角度をつけることもできます。今はまだ、実際に組み立てる際、本当に支保工無しで自立できるのかをシミュレーションしている段階ですが、仮説を立証できれば、施工の合理化が実現でき、より効率的で持続可能な建築手法の開発につながると期待しています。

自立する方法をコンピュータでシミュレーションし、実際に手元で組み立ててみることを繰り返します。ダ・ヴィンチの橋に使われた工法で、立体や3次元に接続するとなると数値化が困難です。
この研究は難しい挑戦ではありますが、知らなかったことを知れる楽しさに満ちています。将来エンジニアとして建築設計に携わった際、技術の発展につながったり、あるいは新技術の土台になるのではと考えるとモチベーションも高まります。実際に大阪・関西万博の会場で、ひときわ注目を浴びていた「ブルーオーシャン・ドーム」を見に行った際、何度見てもワクワクする気持ちを感じました。同じように、誰かをワクワクさせられるような構造家や技術者になることが私の夢です。ものづくりや建築に関心を持つ子どもたちが増えていくような、希望に満ちた未来へとつなげるためにも今の研究を続けたいと思います。
※学生の所属および学年は、2025年度取材時のものです。