見えない“風”を再現し、
その正体に迫っていく。
僕たちが確かめているのは、
地球の未来を変える“風”です。
Vol.10


大学院 システム工学研究科
システム工学専攻 機械工学コース
博士前期課程1年
平田 航太朗
Kotaro Hirata
機械工学科4年
上田 陸歩
Rikua Ueda
機械工学科4年
大谷 龍平
Ryuhei Otani
「流体工学研究室(平田・大谷)」と「流体エネルギー研究室(上田)」に所属し、中型風洞装置を使った乱流の再現に挑戦。構造を評価し、流れを可視化していくことで、流体に関する機械の効率化や性能向上をめざす。
強風や台風による建物被害、航空機の安全運航、車両の安全走行、さらには風力発電の効率向上など、“風”という自然現象は社会や生活に大きな影響を与えています。風=流体(気体や液体のように自由に形を変えながら流れていけるもの)には、乱流と層流という様式があり、僕たちは自然に起こる乱流について研究を行っています。具体的には、実際に計測した自然乱流を、中型風洞装置の測定部下流に取り付けた風速変動装置(WVD:Wind Variation Device)で再現することが目的です。大気乱流の模擬方法はいくつかありますが、それぞれに長短があります。僕たちは風の持つエネルギーの再現を軸に、自分たちで作成した風洞装置と風速変動装置で、まずは自然風の主流方向風速成分を再現し、評価することに取り組んでいます。
構内の研究所に設置されている大型風洞装置
学生が製作した中型風洞装置。測定部での風速を熱線流速計を用いて測定することで、風速変動のメカニズムや特性を詳しく調べることができます。
【大谷】僕が担当しているのは中型風洞装置の設計です。先輩から引き継がれた装置なのですが、まだまだ改良の余地があり、層流(=規則正しい風)を流すだけでも多くの時間を費やしました。次の段階として、変動装置をつけて乱流の再現を試みていますが、送風機の羽根のプログラミングの修正や、空気の流れを均一に制御する整流部のハニカム構造の微調整など、少しずつ直しては測定する作業を繰り返しています。
【上田】実は構内の研究所には大型の風洞装置があります。僕はそれを使い、風が流れる部分に格子を設置することで起こした乱流の特性を、中型風洞装置で再現することを行っています。方法としては、測定部に円柱を設置し、圧力作用で生まれる風の抗力や、円柱の後方に形成される後流を計測します。その結果が中型風洞装置を使った際も同じであれば、風を再現できたといえるわけです。
【平田】二人が進めてくれて出た結果を評価するのが僕の担当です。通常、大気乱流は大きなスケールの渦から小さなスケールの渦へとエネルギーが輸送されます。よくわからない“風”を理解するためには、このエネルギー輸送を波数空間で考察して、風を構成するエネルギーを数値化し、比較や評価を行います。それと並行して、校舎の屋上に設置されている超音波風速計で計測した、時系列の風速の変化を風洞装置で再現することにも取り組んでいます。
計測データはグラフに落とし込んで比較検討します。上の図は、小型風洞装置に取り付けた風速変動装置による模擬結果と自然風との比較です。2024年度の卒業生が行った小型風洞での実験結果なのですが、現在はこれを中型風洞で再現することを目標としています。図からは、特に低風速域で自然風と生成風との差異が大きいことがわかります。
この研究の魅力は、極めて多様で、時に予測不能な動きを示す風の複雑な現象を、数学的な解析や装置の工夫によって再現できる点です。また、先に述べたように、強風などによる被害、航空機や車両の安全な運転など、乱流に関する理解が不足すれば社会全体にリスクが及ぶので、都市のインフラやエネルギーシステムが環境と共生できる未来の在り方の重要性が見えてきます。風洞技術は、すでに幅広い産業に応用されていますが、今後は僕たちが見出した工学的に意義のある研究成果を、産業界や社会で使われる技術に落とし込むことにも目を向け、エネルギー効率の向上に貢献したいと思っています。
※学生の所属および学年は、2025年度取材時のものです。