これまで見過ごされて来た産業景観＝テクノスケープが
地域社会に新たな「価値」を付加することを目指して。

• 教員の所属・職位については、動画公開時のものです。現在の所属、職位とは異なることがあります。ご了承ください。

景観工学の中でもあまり注目されていなかった産業景観

広く景観工学とは都市景観や橋梁・ダムなどの土木景観、あるいは造園など、いわゆる身近にある様々な景観について、デザインだけに限らずより良いものに造っていくにはどんな方法があるか、またそれにどんな価値を見出すか、そういったことを研究する分野です。そんな中で、私は産業景観と言って、たとえば工場とか一つの産業を中心に生まれた工業都市など、近代産業によって生まれた景観がどのようにその土地で価値付けされ得るのか、またどのように文化を形作っていくのか、そういった深層を探ることを研究テーマとしています。

学生時代から惹かれた石灰石による産業景観「砿都」の研究

まず私が育った日立市の原風景があり、学生時代には川崎の京浜工業地帯への興味から産業景観の研究を始め、そして秩父へ。私はずっと産業景観、特に石灰石から生まれた「砿都」の研究を続けています。石灰石は日本が唯一自給できる地下資源であり、その採掘場は日本全国にあって、そこに工場群が生まれ企業城下町ができる。ではその街でどんな景観が展開し、地域住民とどう関わりどう共存して来たか。国家君が代に謳われていると考えられるほど日本人の心に通底する存在である石灰石。各産地を徹底的に歩いてまとめた結果を「日本の砿都」に著しています。

産業景観を見直すことで地域社会の新しい価値づけを

始まりは自分の知的好奇心に後押しされて研究を続けて来ましたが、例えば「文化的景観」という考え方が産業遺産や世界遺産として見直され、捉え直されて来たように、産業景観もそのまた新しいジャンルの一つとして、新たな価値づけの切り口としての大きな可能性を備えているのではないかと思っています。産業景観、すなわちテクノスケープが地域社会を活性化させる新たな見方、新たな活性化のツールとして貢献できるのではないかと信じて、私は研究を続けています。

研究対象は学生諸君に見つけられるのを待っている

これから研究者を目指す学生諸君には、まず自分が何が好きかを徹底的に問いかけて、一つでもこれというものを見つけて欲しいと思います。それが自身を発展させるエネルギーになると思うから。そして景観の研究をやりたいとなれば、フットワーク軽くどんどん現地に足を運んで自分の目で身体で感じてもらいたいです。もちろん机の上で勉強することも大事だけれど、現地を見て「これは何だろう？」というものを見つけることが非常に大きな入り口になると思うから。そんな研究対象は学生諸君に見つけられるのをきっと待っている、待ち構えていると思いますよ。

スポットライト -最先端研究一覧