キャリア(修了生のロールモデル)

修了生(農学研究科農学研究科・水産学専攻 2024年度修了)

博士後期課程へ進学したきっかけをお聞かせください。

私は学部3年生から所属していた研究室と沖縄美ら海水族館が共同で行っていたジンベエザメの研究に参加し、フィールドワークやデータ解析に面白さを感じていました。また、同水族館とのジンベエザメの研究は先輩方が代々取り組んできたものでしたが、その成果を十分に論文という形にできておらず、研究の機会を与えていただいた水族館に成果として還元したいという思いも強くありました。そうした中、修士課程に在籍していた当時、新型コロナウイルス感染症の影響で、就職を希望していた沖縄美ら海水族館の新卒採用がありませんでした。これをきっかけに今後の進路を改めて考え、これまで蓄積されてきたデータをさらに深く解析し、研究成果として形にしたいと考え、博士後期課程への進学を決めました。

現在のお勤め先について、どのようなお仕事をされているか、お聞かせください。

現在は、沖縄美ら海水族館の黒潮展示係で飼育員として勤務しています。黒潮展示係は、主に「黒潮の海」大水槽と「サメ博士の部屋」の水槽を担当しており、私はジンベエザメやナンヨウマンタをはじめとした魚類の飼育管理に関わる調餌・給餌、水槽管理、健康状態や行動の観察・記録などを行っています。また、展示生物の採集、繁殖に向けた取り組みも行っています。さらに、生物の行動や生理に関する調査・研究、依頼を受けた学校への講義といった教育普及活動など、業務内容は多岐にわたります。学生時代から研究対象としていたジンベエザメを、現在は飼育員として日々間近で観察する立場となり、飼育の中で得られる気づきや疑問を研究につなげ、得られた知見を飼育へ還元することも意識して仕事に取り組んでいます。

博士後期課程で培った能力が、現在どのように活きているか、お聞かせください。

博士後期課程で培った能力や経験は、現在の仕事のさまざまな場面で活きていると感じています。特に、物事をよく観察し、多角的に考える力や、粘り強く取り組む力、相手に合わせて分かりやすく伝える力、人と協働する力は、現在の仕事にも大きく活かされています。
例えば、研究を通して、目の前で起きていることをよく観察し、一つの見方だけで判断せず、さまざまな可能性を考える習慣が身につきました。飼育現場でも、生物の行動や飼育環境の変化について、その背景や原因を考える際にこの経験が活きています。また、研究が思うように進まない時期や論文作成を経験したことで、粘り強く取り組む力も身につきました。現在の仕事でも、思い通りにいかない場面で簡単に諦めず、できることを考えながら取り組み続けることにつながっています。
そして学会発表やシンポジウムを通して培った、相手に合わせて分かりやすく伝える力も活かされています。学校での講義や職場内での研究成果の共有、来館者への説明など、相手の知識や専門性に応じて、伝える内容や表現を工夫する場面は多くあります。
さらに、研究活動を通じてさまざまな研究者と交流した経験は、人と協働する力にもつながっています。現在の飼育業務でも、職員同士で情報を共有し、連携しながら進めることが重要です。また、研究活動を通じて築いた研究者とのつながりも、現在の仕事を進めるうえで大きな財産になっています。

今後のご自身の目標や、博士後期課程への進学を検討している方へのメッセージがあればお聞かせください。

現在、飼育員としてはまだ2年目ですが、今後はさらに飼育経験を積みながら研究も継続していきたいと考えています。大きな目標の一つは、世界初となる飼育下でのジンベエザメの繁殖を実現することです。また、これまで長期飼育や展示が難しかった生物の飼育技術を確立したり、世界でまだ例のない繁殖に挑戦したりすることで、水族館だからこそ得られる知見を蓄積し、生物の理解やより良い飼育につなげていきたいと考えています。
そして私自身、博士後期課程への進学を決めた当時は、博士号は自分より優秀な人が、並々ならぬ努力を重ねてようやく取得できるものだと思っており、正直、自分が修了するのは厳しいと思っていました。実際、諦めそうになった時期もありましたが、家族や指導教員、研究室の仲間、水族館の方々をはじめ、本当に多くの方に支えていただきながら研究を続けることができました。だからこそ進学を考えている方には、現時点で確かな自信がなくても、「もっと知りたい」「挑戦してみたい」という思いがあるのならば、周囲の力も借りながら進んでみてほしいです。一方で、無理をして一つの道に固執する必要はなく、時には立ち止まったり、別の道を選んでも良いと思います。最後に、進学を考えている皆さんに、私が選択に迷ったときにいつも思い出す言葉をお伝えします。「後悔しない選択をすることは難しくても、選んだ道を後悔しないものにしていくことはできる」。選択した時点で正解かどうかは分からなくても、その後の歩みの中で、自分が納得できる道にしていく努力が大切なのだと思います。

提供:国営沖縄記念公園(海洋博公園)沖縄美ら海水族館

修了生(農学研究科農学研究科・バイオサイエンス専攻 2022年度修了)

博士後期課程へ進学したきっかけをお聞かせください。

もともと昔から研究者になりたかったので、どこの大学に所属していようが博士後期課程への進学は当然のことと思っていました。企業の研究職という手もありますが、アカデミア(大学や公的研究機関)の世界の方が、自分の興味のあることを研究できる機会・自由度が高いと思っています(アカデミアで研究しようとすると博士号はほぼ必須です)。また、ここ数年で博士課程の学生への金銭援助はずいぶん増えたように思いますが、私が学生の時はそのような援助制度(例:SPRING)が始まったばかりで、恩恵を受けられる大学も限られていました。そのため進学時にはお金の心配が常に頭の片隅にありました。安い学費や支援制度が充実している大学院がうらやましく、そのような大学院が全く頭をよぎらなかったわけではありませんが、結局金銭面の不安よりも当時とりくんでいた研究への好奇心が勝ち、そのまま近畿大学の博士後期課程へ進学しました。

現在のお勤め先について、どのようなお仕事をされているか、お聞かせください。

現在は、静岡県三島市にある国立遺伝学研究所で特任研究員をしています。所属研究室ではクロマチン以外にも細胞生物学全般にわたり研究が展開されています。学生時代はクロマチンをエピジェネティクスの視点から研究していましたが、学位取得後は、自分の知識や技術の幅を広げたいと思い、これまでとは少し分野の異なる研究室に飛び込みました。学生時代はマウスと哺乳類培養細胞を扱っていましたが、現在は線虫を使ってライブイメージングを行い、数値計算やモデリングからクロマチンの研究に取り組んでいます。
現在のポジションは、博士号取得から助教になるまでの間に多くの人が経験するポジションです。任期の都合や昇進によって3~5年でラボを移る人が多い印象です。一般的には早くキャリアアップを目指した方がいいのかもしれませんが、教育義務もなく「自分の研究だけ」に集中できる今のポジションも(任期の不安定さを除けば)楽しんでいます。

博士後期課程で培った能力が、現在どのように活きているか、お聞かせください。

在学中に論理的思考力や問題設定、解決能力はある程度鍛えられたと思います。それらは学部や修士でもトレーニングをすることは可能ですが、それらの能力の伸び方は単調ではなく、ゆっくりある程度蓄積されたあと、急激に伸びる人が多いような気がします。仮説検証のための実験計画を練り、その計画や実験結果について、一人で熟考したり、人とディスカッションしたりする際にはこれらの能力があるとその場をすごく楽しめると思います。

今後のご自身の目標や、博士後期課程への進学を検討している方へのメッセージがあればお聞かせください。

はじめから正解の選択肢がわかるはずもなく、自分が選んだ道を正解にすべく、日々愚直に努力を重ねていくのみです。もし自由に研究に没頭できる環境に憧れがあるのなら、博士後期課程への進学を前向きに考えてはどうでしょうか。