キャリア

修了生のロールモデル

修了生(総合理工学研究科・エレクトロニクス系工学専攻・博士後期課程 2025年度修了)

Q.博士後期課程へ進学したきっかけをお聞かせください。

A.博士後期課程へ進学しようと考えたきっかけは、博士前期課程で行っていた研究が面白くさらに突き詰めたいと思ったことにあります。そのころは後期課程のときの核分裂研究とは異なって、動力学模型を用いた超重元素合成の理論計算を行っておりました。この研究でとくに面白いところは、原子核の融合がなぜそのように起こっているのかが視覚的に理解できることにあります。原子核の反応時間はおおよそ10-21秒と人間の時間感覚に比べて極めて短いため、その過程で何が起きているのかを理解するのは難しいです。その点、私が利用している動力学模型は核分裂や超重元素合成の反応過程を模擬しているため、どのようなメカニズムで反応が起きているのかを表すことができます。このような反応メカニズムをさらに理解したいという気持ちで、博士後期課程への進学を決めました。

Q.現在のお勤め先について、どのようなお仕事をされているか、お聞かせください。

A.現在の勤務先では原子核の計算アプリケーションの高速化や計算プラットフォームの作成といったことを行っております。このプラットフォームの作成というのは、軽い原子核から重い原子核まで統一的に計算できる仕組みを構築して、誰でも簡単に利用できるものを目指しております。統一的に計算するとありますが、原子核の大きさによって様々な理論模型が用いられておりまして、それぞれの専門家が独立して研究しているため、その理論に精通した人でないと扱えないという問題があります。これを解決するために、軽い核から重い核まで統一的に計算できる環境を整備することを主な仕事としています。また計算アプリケーションの高速化は、原子核の計算コードの最適化やGPUによる計算、高速に計算可能なアルゴリズムの導入といったことを行っています。例えば軽い核の計算では量子力学的に厳密に解くために大規模な行列計算が必要ですので、従来の行列計算ライブラリよりも高速なものを導入するといったことを行っています。

Q.博士後期課程で培った能力が、現在どのように活きているか、お聞かせください。

A.研究は問題を設定した後、目標を達成するためにはどうすればいいか道筋を立て、その手法がうまくいかないときは別の角度からアプローチするといった多角的な視点で物事を解決する能力が求められます。物事の考え方や挑戦の仕方は博士後期課程進学後、企業への就職をするとしても重要なことだと思います。現在は一人の研究者として研究活動を行っておりまして、博士後期課程で培われたこの能力がそのまま活きております。

Q.今後のご自身の目標や、博士後期課程への進学を検討している方へのメッセージがあればお聞かせください。

A.現在の職場では物理を研究するというよりはアプリケーションの高速化や最適化といった計算科学に寄ったことを行っております。将来は核分裂や超重元素合成といった重い核の専門家になるのと同時に原子核と計算科学の橋渡しとなるような人になれるようにと思っています。博士後期課程への進学の際、私は研究が面白くて続けたいという気持ちが第一にありました。海外発表や外部の研究者との密な議論、他の大学や研究所への長期滞在など、博士前期課程ではあまり出来なかったことを行ってきました。そういった深い研究体験を味合うことも博士過程への進学の醍醐味だと考えています。金銭的なことや将来の不安などあるかと思いますが、それでも進学することは大きな価値があると私は思います。今行っている研究が面白い、楽しいと思えるのであれば是非博士後期課程に進んでみるのも良い選択だと思います。

総合理工学研究科 エレクトロニクス系工学専攻 2026年3月修了