研究科長挨拶
実学と挑戦―新しい知を育み、社会へつなぐ
農学研究科は、農業生産科学、水産学、応用生命化学、環境管理学、バイオサイエンスの5つの専攻で構成され、各専攻において独創的な基礎研究から社会実装を見据えた応用研究まで、多様な研究・教育が展開されています。
本研究科には、長い歴史の中で培われてきた二つの大きな特徴があります。
一つは、「近大ブランド」に象徴される、研究成果を社会へとつなげていく研究・教育文化です。これは、本学が掲げる「実学教育」の具現化でもあります。自らの専門分野を深く探究すると同時に、そこから生まれた知や技術が社会とどのようにつながり、どのような新しい価値を生み出すことができるのかを考える。このような姿勢を持つ人材を育成してきたことは、本研究科の大きな強みです。これまで培われてきたこの文化を継承し、さらに発展させていくことが重要です。
もう一つは、専門分野の枠を越えた交流を活かした学際的な研究・教育です。研究科内では、専攻を越えた交流を促す「知恵の輪」の取り組みが行われています。さらに、近大院生サミットを通じた全学的な交流や、近畿大学アグリ技術革新研究所、水産研究所、地域創生農業研究所をはじめとする関連研究拠点との連携など、総合大学としての多様性を活かして、人や知がつながる機会が広がっています。こうした交流は、異なる専門性や発想が出会い、新たな“化学反応”を生み出す土壌となっています。
食料、生物資源、環境など、農学が向き合う課題はますます複雑になっており、一つの専門分野だけでは解決することが難しくなっています。所属や専門分野の枠を越えて人や知が交わり、それらを結びつけながら新しい知や技術を生み出す力は、これからの農学を担う人材にとってますます重要になるでしょう。
大学院には、新しい知を生み出すとともに、その知を育み、社会へとつなげていく「インキュベーションの場」としての役割もあります。
研究において、新しい発見や技術は、必ずしも最初から予想した通りの結果から生まれるものではありません。むしろ、予想外の結果や試行錯誤の中から、新しい発想の芽が生まれることも少なくありません。若い研究者が失敗を恐れず、自らの発想を試し、議論を重ねながらその可能性を追究できることは、大学院という場の大きな価値です。
研究の中から生まれた新しい発想や小さな芽を、学生と教員、さらには異なる専門分野や産業界との交流を通じて育て、新しい研究や技術、そして社会に新たな価値をもたらす成果へと発展させていく。そのような挑戦を支え、新しい可能性を育てることも、大学院の重要な役割です。
本研究科では、博士課程で研究に取り組む学生も増えつつあり、若い研究者が互いに刺激を受けながら成長できる環境づくりは、これまで以上に重要になっています。大学院生が研究に意欲を持って取り組み、それぞれの可能性を十分に伸ばすとともに、新たな発想や挑戦が生まれる教育・研究環境をさらに充実させていきます。
これまで本研究科が培ってきた実学の精神と研究・教育の文化を大切にしながら、新しい分野や価値観を積極的に取り入れ、若い研究者が自由な発想で挑戦できる研究科であり続けることを目指します。そして、そこで生まれた新しい知の芽を育み、社会へとつなげることで、農学の新たな可能性を拓いていく。農学研究科は、そのような研究・教育の場として、これからも歩みを進めてまいります。
- 白坂 憲章
- NORIFUMI SHIRASAKA
- 農学研究科長
- 応用生命化学科教授
- 博士(農学)