農学部の取り組み・学びの特長

食糧・環境・生命・健康をキーワードに最先端の研究を展開する6学科

近畿大学農学部では、私たちの暮らしに欠かせない食糧・環境・生命・健康の分野を学問領域とする6つの学科を設置。社会のニーズに対応した専門的知識と技術を修得し、グローバルな視野を持って社会に貢献できる人材の育成をめざしています。

これまでも、これからも。
持続可能な世界をめざして、農学部は地球の未来を守ります

持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」とは

2015年9月、国連サミットにおいて、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標:SDGs)」という国際社会共通の目標が採択されました。2030年までの長期的な指針として、貧困や飢餓、環境保護などの問題から、経済成長、気候変動にいたるまで、持続可能な世界を実現するための17のゴール(目標)が設定されています。

sdgs

SDGsと近畿大学農学部はめざすゴールが同じ

近畿大学農学部は1958年の開設以来、クロマグロの完全養殖に代表されるように、持続可能な世界を実現するための研究に取り組んできました。現在、私たちの暮らしに欠かせない食料・環境・生命・健康・エネルギーの分野を学問領域とする6つの学科を設置。これらの学問領域は、世界の国々が抱えている諸問題、さらには私たちがこれからも地球で生命活動を営むにあたって直面する問題の解決をめざすSDGsの方向性と一致しています。2018年には学内にSDGsにこたえる専門の研究機関「アグリ技術革新研究所」を設立しました。近畿大学農学部はこれまでも、これからも、地球の未来を守るために歩み続けます。

研究1

  • SDGs1 貧困をなくそう
  • SDGs2 飢餓をゼロに
  • SDGs4 質の高い教育をみんなに

農業分野へのICTやIoT導入で
あらゆる食料問題の解決をめざす

農業分野へのICTやIoT導入であらゆる食料問題の解決をめざす

人口増加に伴って食料不足や食品ロスなどの食料問題が深刻化しています。近畿大学農学部は奈良県と連携して「農の入口」モデル事業を立ち上げ、ICT(情報通信技術)を活用した「なら近大農法」を展開しています。農作物、たとえばメロンの場合、栽培時に果実の肥大生長の途中段階で間引かれる摘果メロンができ、通常は廃棄されます。こういった食品ロスの問題を解決するため、ピクルスに加工するなどして新たな食材として有効活用。また農業分野にICTやIoT(モノのインターネット)を導入することで、農業従事者の増加、農作業の負担軽減、収穫量の増加と品質の安定化、そして食料問題の解決へとつながる取り組みを行なっています。

研究2

  • SDGs12 つくる責任 つかう責任
  • SDGs14 海の豊かさを守ろう
  • SDGs15 陸の豊かさも守ろう

同じ水槽でエネルギーと動植物を複合生産
理想のシステムで収益性確保をめざす

同じ水槽でエネルギーと動植物を複合生産理想のシステムで収益性確保をめざす

近年、魚介藻類の陸上養殖、野菜類の植物工場、燃料用微細藻類の培養など、さまざまな食料、エネルギーの生産法が開発されましたが、いずれも収益性が課題です。一方でどの分野も水を中心とする光、温度、酸素等の環境制御技術が必要で、類似した水槽を使います。このため、もし同じ水槽内で動植物を複合生産できれば、コストが大幅に削減できます。しかも、動植物は排泄物/栄養塩、O2/CO2等の生態的な需給関係があるため、複合生産では廃棄物が大幅に減って水が浄化されます。さらに、魚の糞尿で育った植物は有機栽培となり、安全でおいしい食料や再生エネルギーが無駄なく生産できます。この理想の食料・エネルギー生産システムのモデル開発に挑んでいます。

研究3

  • SDGs3 すべての人に健康と福祉を
  • SDGs9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • SDGs15 陸の豊かさも守ろう

染料抽出後のコーヒー粕を培地基材にキノコ栽培
廃棄されるはずのものを最後まで使い切る

染料抽出後のコーヒー粕を培地基材にキノコ栽培廃棄されるはずのものを最後まで使い切る

私たちの生活に溶け込んでいる喫茶店やカフェでは、日々コーヒーのドリップ粕や賞味期限切れの豆が廃棄されています。こうした廃棄物を天然染料の材料として利用して繊維の染色を行っている企業があり、注目されています。私たちはこういった企業から染料抽出後のコーヒー粕を提供していただき、培地基材としてキノコを栽培する方法の開発をめざして研究を進めています。この技術が実現すれば、コーヒー豆から①コーヒー、②染料、③キノコが生産できます。最後に残ったキノコの廃菌床は家庭菜園の肥料などとして利用することができ、ゴミの排出量を減らすなどの効果も期待できます。

研究4

  • SDGs3 すべての人に健康と福祉を
  • SDGs12 つくる責任 つかう責任

自宅での食事時間を豊かにし
食環境整備と健康維持に貢献

自宅での食事時間を豊かにし食環境整備と健康維持に貢献

限りある資源を有効利用し、ポストコロナ時代の食生活の変容がもたらす健康障害のリスクを低減させるため、近畿大学農学部で生産された農林水産物(マダイ稚魚、近大みかんなど)のうち規格外の食材を積極的に取り入れ、栄養価を相乗させた「近大ふりかけ」を企画・開発しました。これは「“オール近大”コロナウイルス感染症対策支援プロジェクト」の一環として、コロナ禍に負けない身体づくりと食環境整備を目的に水産研究所と附属農場との連携により実現しました。ふりかけは誰もが手軽に摂取できるため、米の消費量の増加や、災害時などの緊急時の食事支援にも貢献できます。「近大ふりかけ」が、持続可能な次世代の食環境づくりの普及啓発の1つになることをめざしています。

研究5

  • SDGs13 気候変動に具体的な対策を
  • SDGs15 陸の豊かさも守ろう

新しい情報や知見をふまえ
森林の二酸化炭素吸収量を正確に測る

染料抽出後のコーヒー粕を培地基材にキノコ栽培廃棄されるはずのものを最後まで使い切る

森林は気候変動の原因である大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素として森林内に貯えます。気候変動対策には森林を適切に管理することが求められますが、対策を的確に進めるために、森林による吸収量を正確に測定する必要があります。現在利用されている日本の方法は、およそ15年前に京都議定書報告のために開発されたもので、行政の森林情報を基礎にしています。しかし、その後新たな観測データや科学的知見が蓄積され、日本の森林による吸収量はこれまで考えられていたよりも多いことや、人工林の吸収が高齢になっても継続することが分かってきました。これらの新しい情報や知見をふまえ、森林の吸収量をより正確に測る方法を開発しています。

研究6

  • SDGs2 飢餓をゼロに
  • SDGs3 すべての人に健康と福祉を
  • SDGs9 産業と技術革新の基盤をつくろう

ゲノムの仕組みを理解し
農業や医療へ応用の可能性を探る

自宅での食事時間を豊かにし食環境整備と健康維持に貢献

生物の設計図である、ゲノムの遺伝情報を守る仕組みと書き換える仕組みについての研究です。全ての生物は、長い時間をかけてゲノムの情報を少しずつ書き換えることで進化し続けますが、短時間で人工的に書き換えて品種改良に利用することもできます。また、ヒトのように異なる性を持つ生き物は、雌雄2個体の遺伝情報をシャッフルして伝えることで、子のゲノムの遺伝情報を多様にします。一方で、私たちの体を構成する数十兆の細胞の中では、遺伝情報が変化しないように守る仕組みがあり、壊れるとがん細胞へと変化することがわかっています。ゲノムの可塑性と堅牢性、これらの仕組みを理解し、農作物の改良や抗がん剤やがん予防など医療に役立つ技術の基盤作りをめざしています。

2008年度グローバルCOEプログラム採択

近畿大学水産研究所と農学研究科水産学専攻の合同プロジェクトチームである『クロマグロ等の養殖科学の国際教育研究拠点』は,2008年度文部科学省「グローバルCOEプログラム」に採択されました。
この『グローバルCOEプログラム』は,文部科学省が世界最高水準の実績を持つ教育・研究拠点を重点的に支援し,国際競争力のある大学づくりをバックアップすることを目的とした制度です。