近大理工通信
令和7年度 近大理工通信(第5号)
令和7年10月8日発行
コラム
物理学を基礎から学べる「コア・テキスト 物理学 現象に潜む普遍性の理解へ (サイエンス社)」(理学科物理学コース・三角樹弘准教授著)が出版されました(ISBN:978-4-7819-1636-1)。
本書は理工系の学部学生を対象にした物理学の入門書であり、日常生活との関連を挙げながら現象の背後に存在する普遍性を理解できるように解説されています。多変数関数の微積分、ベクトル解析、線形代数など躓きやすい数学的道具立てについても詳しく説明されています。また、相対論や量子論も詳細に解説されており、大学1,2年生で学ぶべき物理学の内容を網羅した教科書となっています。
https://www.saiensu.co.jp/search/?isbn=978-4-7819-1636-1&y=2025
応用化学科に着任して
2025年4月に応用化学科に着任しました山本 旭(やまもと あきら)と申します。このたび、理工通信への寄稿のお話をいただいて、自身の研究について紹介をさせていただきます。専門は、触媒化学・分光学で、特に「太陽光」と「触媒」を利用して二酸化炭素やメタンなどの安定な小分子の変換に関する研究を行っています。
ご存知の通り、地球に降り注ぐ太陽光の総エネルギーは膨大であり、これをうまく使うことができれば、エネルギーに関する諸問題の解決が期待されます。しかしながら、エネルギー密度が低く実際の利用は容易とは言えません。現在、ソーラーパネルなどの太陽光利用技術が普及していますが、それでも人類の消費するエネルギー総量を考慮すると、多くの課題がある状況と言えます。このような背景のもと、私は「太陽光」と「触媒」を組み合わせた反応システムの可能性を追求し、エネルギー生産、省エネや環境浄化を可能とするシステムの構築を目的として研究を行っています。
光の利用方法としては、光照射によって電子を取り出す光触媒的な系と光による加熱作用を利用した系、およびそれらを組み合わせた3つの反応系を主な研究対象としています。無機材料合成や触媒リアクター開発、また現象解明のための分光分析を基盤技術として、これまでにない全く新しい触媒システムの開発を目指しています。
上記の目的達成のためには、私一人の技術だけでは実現は困難と思っています。これまでの研究でも様々な分野の専門家の方々とディスカッションや共同研究を実施していく中で、新しい反応系の構築のための糸口を得てきました。この点で、分野融合や異分野コミュニケーションは私の研究推進に必須であると感じています。理工学部や応用化学科の教員の皆様とも、もしよろしければ、ぜひともディスカッションや共同研究などをさせていただければありがたく存じます。
現在、配属された6名の卒研生と一緒に研究室の立ち上げをしながら、卒業研究を進めています。既によい研究成果(おそらく)を出してきている学生の方も複数おり、今後の研究を楽しみに思うと同時に、彼ら彼女らには研究の楽しさを感じ、研究関連活動を通して素晴らしい体験をしてもらえればと強く願っています。
最後になりましたが、講義や研究室の立ち上げ等々で、学科長の松尾先生や応用化学科の先生方、ならびに事務の方々に非常にお世話になっており、この場をお借りして御礼を申し上げます。早く新しい環境に慣れて、近畿大学や理工学部に貢献していければと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
(応用化学科 山本 旭)