理学科化学コース:有機電解合成の新しい電解セルを考案に成功

2025.02.19

  • 研究

近畿大学理学科化学コース 准教授 松本 浩一(近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻)、同専攻 博士前期課程修了 松本 一真さん、同専攻 博士前期課程2年 濱﨑 健吾さん、理学科化学コース卒業 山中 涼さんらの研究チームは、有機電解合成の分野で利用できる新しい電解セルを考案して、論文発表しました。

Journal: Electrochemistry誌 (IF = 2.7)
Title: Paired Electrochemical Synthesis between Cation Pooled Iminium Ion and in-situ Formed Allylsilanes Using Electrochemical Cell that Allows Solution Transfer
DOI: https://doi.org/10.5796/electrochemistry.25-00038

有機電解合成では、有機化合物に対して、陽極では電子が奪われ酸化されます。陰極では電子が与えられ還元されます。両方の電極を用いる「両極合成」は、エネルギー効率の良い合成手法として、有機電解合成、グリーンケミストリー、および、低環境負荷型合成として近年、世界的に注目を集めています。
両極合成では、陽極と陰極を遮る隔膜が存在すると、陽極と陰極由来の化学種が溶液内で出会うことができず、通常、両極合成では、隔膜の無いガラス器具が用いられてきました。
しかし、隔膜のある電解セル(分離型電解セル)の方が、合成的な範囲が広く魅力的な手法ですが、陽極と陰極が隔離されているので、それぞれの化学種が溶液内で出会うことができませんでした。
研究チームはこのような背景やジレンマを解消するために、電解時は隔膜のある分離型電解セルであるが、通電終了後に風船の圧力を利用して、片方の溶液を反対の極に隔膜(グラスフィルター)を通じて移動させる方法論を考案し、専用のガラス器具を開発して、反応開発に成功しました。新しい方法論を提供するものとして、重要な成果です。

溶液移動型電解セルの図 松本浩一.jpg

この成果は、Electrochemistry誌の早期公開版に掲載されました。