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ブロックチェーンを活用した事前決済サービス 昼食時の混雑緩和を目指した実証実験の結果報告

2020.01.10

  • 大学

昼食時に混雑するCNN Café

近畿大学(大阪府東大阪市)は、令和元年(2019年)11月18日(月)から22日(金)まで、「ブロックチェーン研究プロジェクト」の一環として、学生が開発した事前決済サービスを学内のカフェに試験導入しました。約30人のモニター学生がサービスを利用し、学生の利便性向上、昼休みの混雑緩和や、カフェスタッフの負担軽減について確認する実証実験を行いました。

【本件のポイント】
●ブロックチェーン技術を使った事前決済サービスを学生が開発
●ブロックチェーンを使用したサービスを提供する株式会社Opening Lineが学生の技術サポート
●文理融合のプロジェクトチームで活動することで、様々な学生が集い、共に学び成長する

【本件の内容】
近畿大学アカデミックシアターでは知のイノベーションを引き起こすことを目的として、建物内のACTルームにおいて様々なプロジェクトを展開しています。「ブロックチェーン研究プロジェクト」では、学生と企業が連携して、データの改ざんが不可能であるなどのブロックチェーンの特性を生かしたサービスの開発を目指しています。今回、プロジェクトに参画している学生らは「昼休み中にキャンパス内のカフェや食堂にて行列が発生する」という課題を解決するために、「MOAP(Moblie Order And Pay)」というWEBサービスを開発しました。本サービスは、飲食店において、事前注文と事前決済をすることができ、ユーザーはWEBページで注文と支払いを行い、商品の準備が完了すると店舗からスマートフォンに通知が届き、列に並ばずに商品の受け取りが可能です。令和元年(2019年)11月18日(月)~11月22日(金)約30人のモニター学生がサービスを利用し、学生の利便性向上、昼休みの混雑緩和や、カフェスタッフの負担軽減について確認する実証実験を行いました。

【実施概要】
実験前測定期間:令和元年(2019年)11月11日(月)~11月15日(金)12:00~13:00
実験期間   :令和元年(2019年)11月18日(月)~11月22日(金)12:00~13:00
※11月15日(金)と11月21日(木)は土曜授業の実施日であり、MOAP利用者が著しく少ないので除外して集計。
場     所:近畿大学東大阪キャンパス ACADEMIC THEATER(アカデミックシアター)
        (大阪府東大阪市小若江3-4-1、近鉄大阪線「長瀬駅」から徒歩約10分)
対     象:学生(各30人程度)

<測定方法>
プロジェクト学生が開発した測定専用アプリで、実験期間前と実験期間中の店舗購入者とMOAP利用者を対象に時間を計測。行列時間、注文時間、決済時間、商品受取時間という4つの行為にかかった時間をそれぞれ計測しました。
(※)MOAP利用者の場合、注文時間は商品をカートに入れ、決済画面へ移るまでの時間、決済時間は決済中画面が表示されてから決済が完了されるまでの時間を指します。

<結果報告>
(1)行列時間→1分55秒短縮
実験前、商品を購入するために顧客は1分55秒程度行列に並ぶ必要があったが、MOAP利用者は行列に並ばず、事前に注文を選ぶことができたので行列に並ぶ時間はまったくなかった。

(2)注文時間→1分30秒程度増加
MOAP利用者は店舗購入者よりも長い時間をかけて注文を選んでいることが分かったMOAP利用者は店舗まで足を運ばすWEB上の画面でメニューの端から端までを見ており、店舗側は、普段購入しないメニューも検討する機会を顧客に提供できたと考えられる。

(3)決済時間→2秒程度短縮
しかし、10秒以下で決済完了するキャッシュレス決済と比較すると、MOAPはブロックチェーンの承認の仕組みの制約を受けており時間がかかるため、決済処理の時間については改善の余地がある。

(4)受取待ち時間→1分30秒短縮
実験前、商品を購入するために顧客は1分30秒程度(84.3秒)行列に並ぶ必要があったが、MOAP利用者はシステムで指定された時間に店舗まで向かって商品を受け取っており、待ち時間は0秒だった。

<今後の課題>
(1)店舗購入者の待ち時間が約2倍に増加
(2)店舗購入者の受取待ち時間が1分程度増加

(1)、(2)の原因については、実験中は店舗購入者とMOAPの両方から注文が集まったため、合計の注文件数が増えており、店舗側の稼働が増加しているからだと考えられる。
このようなMOAP導入時に延びてしまう行列時間や受け取り時間に対処するため、MOAPで注文された商品の準備や受け渡しを別レーンで対応できる体制を整えるなど、店舗側の負担を少なくする工夫が必要。また、店舗購入者の行列時間は実験を開始して日数が経過するほど短くなっているので、MOAPの注文に対応するオペレーションに慣れていくことで店舗側の稼働についても改善が見込まれる。

<まとめ>
MOAPを利用しているユーザーは、店舗に行かずとも注文をゆっくりと考えることができ、事前に設定されていた時間に来店すればよいので、商品をスムーズに受け取っている印象があった。その一方で、合計の注文量が増えているため店舗稼働が増加し、店舗購入者の行列時間、受け取り時間が大幅に増えるという課題を発見することができた。

<MOAPに関する展望>
MOAPでは、商品の受け取り時間をすべてサービス側で自動的に指定していたため、今後は利用者が自由に受け取り時間を決定できれば、より実用的なサービスになると考える。また、MOAPのようなプレオーダーのサービスに、新商品の販促やクーポンの運用などを加えることで店舗と顧客の接点を増やすことができるのではないか。

【株式会社Opening Lineについて】
Opening Lineは、ブロックチェーン技術を利用したサービスやアプリの開発に特化したテックカンパニーです。金融業界にとどまらずさまざまな業界へ向け、ブロックチェーンの「改ざんできない」「誰でも検証できる」などの特性を活かしたサービスの提案や開発を展開しております。また、NEMおよびmijin技術の普及活動にも力をいれており、技術者向けのハンズオンセミナーや講演などの活動も積極的に行っております。

社   名:株式会社Opening Line
本店所在地:東京都中央区日本橋3丁目2番14号 新槇町ビル別館第1
代表取締役:佐々木 亮一
設   立:平成29年(2017年)4月12日
資本金  :500万円(平成30年(2018年)6月末現在)
事業内容 :ソフトウェアの企画・開発・販売

関連URL:https://www.kindai.ac.jp/

学生が開発したMOAPの画面

行列時間、注文時間、決済時間、商品受取時間を計測したグラフ