AI技術を活用し講義を支援 質問応答業務の大幅な削減の実現を確認
2019.04.17
- 大学
学生からの総質問と講義内容に関する質問への対応
その結果、24時間365日、受講生の質問に対応可能となることに加え、V-TAが受講生の疑問やニーズを効率的に収集するフィードバック機構としての役割を有することを確認しました。また、対話データの収集と整備、およびデータ収集作業の監督を、受講生、ティーチング・アシスタント※(以下 TA)、講師が協力して行うことで効率的にデータ収集を行う仕組みを実現しました。
これらの取り組みにより、V-TAは受講生の質問に対し57%正しい回答を行い、質問応答業務を半減することに成功しました。
※ティーチング・アシスタントとは、大学院学生が学部学生に対し、助言や演習等の教育補助業務を行わせ、大学教育の充実と大学院学生のトレーニングの機会提供を図るとともに、これに対する手当ての支給により、大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的とした制度。
【本件のポイント】
(1)V-TAは受講生からの授業に関する質問に対して、質問応答業務のコストを半減
(2)V-TAは、これまで得られなかった受講生の疑問やニーズを効率的に収集するフィードバック機構としての役割を有する
(3)V-TAにより、受講生、TA、担当講師がAI活用に主体的な関わりを持ち、実践的な学習を支援
【背景】
2017年9月から行われた近畿大学の後期授業「情報メディアプロジェクトII」において、JIECは講義資料の作成および講師派遣を行い、社会で活用されているAIを実践的に学習する取り組みを行ないました。実習では、受講生一人ひとりが疑問点をその場で解決することが重要である一方、同様の質問が同時に多く挙がる傾向があり、講師とTAが全員で対応してもその全てに即時に回答することが困難になることがしばしば見受けられました。この課題認識から、JIECと近畿大学は、2018年9月から2019年3月の同講義において、「manaBrain」を活用して講義内容に関する質問に答えられるV-TAを導入しました。
■導入時のニュースリリース
・JIEC :https://www.jiec.co.jp/news/2018/201806111000.html
・近畿大学:https://www.kindai.ac.jp/news-pr/news-release/2018/09/013863.html
【V-TA導入の目的】
V-TAを活用するに当たり、近畿大学では3つの目的を設定しました。
(1)講義時間だけでなく、24時間質問に応対しその場で疑問を解決できること
(2)教員は対応履歴や対応状況を確認することで、講義に反映することができること
(3)受講生、講師、TAが協力してV-TA運用を体験し、AIを活用したコミュニケーションのあり方について実践・学習できること
【V-TA導入の目的に対する成果】
前述のV-TA導入目的に対し、以下の成果を得ました。
(1)V-TAへの講義内容に関する質問(約800件)のうち約25%が講義時間外に行われており、24時間365日受講生の質問への対応を実現しました。
(2)V-TAでは講義運営に関する質問や無効な質問も含めて約1,600件の受講生からの質問をデータとして取得しました。これらはV-TA導入以前は得ることができなかったデータであり、V-TAが実習に対する受講生の疑問やニーズを効率的に収集するフィードバック機構としての役割を有することが明らかになりました。
(3)V-TAの運用においては、(i)受講生を利用したデータの収集、(ii)TAによる収集したデータの整備、(iii)担当講師によるデータ収集状況の監督という三つの役割に分け、それぞれを反復的に行うモデルを採用しました。この結果、それぞれがAI活用に主体的な関わりを持ち、効率的にデータ収集を行う仕組みを実現しました。
これらの目的に対する成果に加え、V-TAは受講生からの質問に対して約57%正しい回答を行い、質問応答業務のコストを半減することに成功しました。回答できなかった質問のデータについてもV-TAで収集・可視化されており、講師・TAによる対応で学生の疑問を解消するとともに、講義資料の改善やV-TAの追加学習などにも活用しています。
今回の検証を通じて、JIECは一般的な頻出質問(FAQ)の問い合わせ対応とは異なり、毎週新たな学習テーマに取り組む実習型の講義を対象とし、理解度に個人差がある学生からの様々なレベルの質問への回答が求められる難度の高い運用で約57%の正答率を達成したことに対して、近畿大学は質問応答の工数を半減し、従来可視化できていなかった受講生からの疑問やニーズを収集できたことに対して、それぞれ大きな成果を得られたと認識しています。
今回の成果は、2019年6月4日から6月7日に新潟県新潟市(朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター)で開催される「2019年度人工知能学会全国大会(第33回)」において発表予定です。
【今後の展開】
JIECと近畿大学は、より一層のV-TA活用に向けて今回明らかになった課題等を改善していきます。また、得られたフィードバックを今年度の講義に反映するなどAIを活用したコミュニケーションの実践・学習を強化します。
【株式会社JIECについて】
JIECは、1985年の創業以来、「プロフェッショナル・サービス」を社是に掲げ、企業情報システムの根幹を支える基盤技術を強みとして、金融・旅行・運輸・通信等の大規模なシステム開発に従事してきました。特にIBMの技術力を活かし、ビジネスのためのAIである「IBM Watson®」を活用したサービス開発に注力しています。2018年には、AI問い合わせ対応サービス「manaBrain」、AI自然文検索サービス「manaBrain Retriever™」の提供を開始し、AIによるお客様の課題解決を支援しています。今後もAIなどの最先端技術を活用したサービス開発に尽力していきます。
詳細ページ:https://www.jiec.co.jp/
JIECは、IBM社よりWith WatsonのPremiumレベルのメンバーとして認定されています。
With Watson Premiumレベルは、Watsonサービスを利用するアプリケーションを一定量提供し、AIによる変革とビジネス利益の創出を促進する組織に与えられるものです。
※manaBrainは、JIECの登録商標です。manaBrain Retrieverは、商標登録出願中です。
※IBM、IBM Watson、With Watsonは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corp.の商標または商標です。
【近畿大学について】
14学部48学科、全国に6つのキャンパスを有し、医学から芸術まであらゆる分野を網羅する日本有数の私立総合大学。一般入試の志願者数が6年連続日本一。
設 立:1925年
代 表:学長 細井美彦
所在地:大阪府東大阪市小若江3-4-1
URL :https://www.kindai.ac.jp/