学生制作のシステムで、地元農作物の売り上げ増に貢献 JAとなりの農家で学生による実証実験開始
2018.11.12
- 工
制作したシステムの画面イメージ
【本件のポイント】
●学生らが地元農作物販売促進システムを制作し、JAとなりの農家で実証実験を開始
●地元農家の生産物の価値を高め地産地消を促進するシステムの開発で地域貢献
●学生らは実証実験を通じ、利用者の要望を実地でヒアリングしシステム向上に生かす
【本件の概要】
近畿大学工学部情報学科 講師 加島智子(教育情報システム研究室)とゼミ学生3人は、生産者と消費者を繋ぐ地元農作物販売促進システム「Vegescan（ベジスキャン）」を制作しました。
Vegescanにより、生産者は自宅から農作物の情報を手軽に店舗に発信することができ、消費者は、農作物に付いた専用バーコードを、店舗の専用タブレットにかざすだけで、農作物の情報や生産者の紹介、畑の様子などを写真付きで見ることができる他、その野菜を使ったおすすめレシピ、当該生産者から出荷された他の野菜の情報なども閲覧することができます。その他に、旬や検索数を元にその日のおすすめの野菜ランキングの表示、同じ農産物を作っている他の生産者の情報掲出により店舗全体の売上への貢献もめざします。
今回は、東広島市の5軒の農家の協力を得てシステムのデータベースを試作し、JA広島中央となりの農家 高屋店の店舗内に3台の専用タブレットを設置し実証実験をします。初日を含む一週間は、学生らが店舗でVegescanの利用をサポートします。また、実際に利用者の声を現地でヒアリングすることでシステムの向上に繋げます。
■日時：平成30年（2018年）11月19日（月）～12月19日（水）9：00～17：00
■場所：JA広島中央 となりの農家 高屋店（広島県東広島市高屋町杵原1264-1）
【本件の背景と今後の展望】
近畿大学工学部情報学科講師 加島智子(教育情報システム研究室)は、農家の後継者不足への対策として、熟練農家の経験と勘によるノウハウの蓄積・技術継承をめざすシステム開発や、生産者と消費者を結び、生産性やマーケティング力の向上をめざすシステム開発など、農業分野へのICT技術の導入に取り組んできました。
平成30年（2018年）より、新たに現4年生のゼミ学生3人が中心となり、地元農家の生産物の価値を高め、地産地消を促進することを目的に本システムの制作に着手しました。制作の過程では、WEB調査を使ってどのようなシステムであれば使い勝手が良いか、主婦層をターゲットにヒアリングを行い、料理レシピサイト「ボブとアンジー」協力の下、購入を検討している農作物を使ったレシピ検索ができる機能も加えました。
7月に東広島市内で開催した、生産者を対象とした説明会では、学生が生産者らに対し本システムの紹介することで今回の実証実験の協力者を募り、協力者決定後は、学生自らが生産者と打合せを重ねてデータベースの作成を行い、今回の実証実験に漕ぎ着けました。
このシステムにより、消費者にお気に入りの農家を見つけてもらい、農家のファンを作ることを目的の一つとしています。生産者にとっては大切に育てた生産物に付加価値をつけることができ、消費者は、安心・安全な農作物を選んで購入する機会を得られるため、結果として地産地消を促進する一助となることが見込まれます。
今回の実証実験で、このシステムの利用によって農作物に付加価値が付くことが証明できれば、今後はアプリ化することも検討しています。アプリを使って購入者が自宅でも店舗と同じ情報を閲覧することができ、お気に入りの農家の農産物が入荷されたことが分かれば、来店に繋がり、さらなる販売促進が期待できます。
【システムを制作した、情報学科4年 竹口真理亜さんのコメント】
システムを制作する上で苦労したのは、システムやデータベースを制作する作業そのものより、生産者の方へのヒアリングやコミュニケーションの取り方でした。生産者や購入者には高齢者が多いこともあり、タブレットの操作に苦手意識を持っている方が多く、7月に開催した生産者説明会では、情報システムや電子機器そのものに拒否感を持っている方もいらっしゃるということを実感しました。そこで、必要最小限の操作で済むように工夫するとともに、誤って不要なボタンを押さないように操作性への工夫が課題でした。半年以上かけてようやく形になったシステムなので、今回の実証実験では実際に利用者の声を聞けることを楽しみにしています。
【関連リンク】
工学部情報学科 講師 加島 智子（カシマ トモコ）
https://www.kindai.ac.jp/meikan/422-kashima-tomoko.html