大学院生がネットワーク移行支援システムを開発 時間・コスト・人的ミスを削減するシステムで学会賞受賞
2017.03.14
- 大学院
今回開発したシステムの概要図
【本件のポイント】
●情報処理学会から学生奨励賞を受賞した大学院生による研究論文
●本システムの利用により、ネットワーク移行に係る時間やコスト、人的ミスの削減が可能
●従来型と同等のパケット制御※2 を行うOpenFlowネットワークを半自動的に構築できる
【本件の概要】
近年のクラウド環境やサーバ仮想化の普及に伴い、ネットワークの設定を柔軟に変更する仕組みが求められています。そこで、ソフトウェアによってネットワークを制御するSDN※3 が近年注目を集めており、SDNを実現する技術の1つにOpenFlowがあります。しかしながら、利便性の高いOpenFlowへの移行は、手動で設定する従来型のネットワークとは異なる技術が必要であることや、技術習得者であってもネットワークの構築や動作検証を行う環境を設けることに時間とコストを要し、人的ミスも起こり得ることから、本研究グループでは、半自動的に移行できる提案システムの開発を進めてきました。その結果、作業者の能力を問わず一定の時間内で人的ミスなく移行作業が完了できることに加え、最大10台のルータから構成される従来型のネットワークを、6分以内でOpenFlowネットワークに移行できるシステムを開発しました。
なお、この研究内容は優秀な論文として、一般社団法人情報処理学会より学生奨励賞を受賞しました。
※1 OpenFlow…ネットワーク機器の制御や管理を、ユーザーが作成するソフトウェアで自由に実施可能にする目的で開発された技術。SDNを実現するための技術の1つ
※2 パケット制御…パケットと呼ばれるデータを適切なネットワーク機器を経由して指定された宛先に届けること
※3 SDN…状況に合わせて変化させることが可能な、柔軟性を持ったネットワークをソフトウェアによって制御する概念や技術
【本件の詳細】
本システムは、ホップバイホップ方式※4 およびオーバーレイ方式※5 に対応しており、従来型ネットワークの機器が全てルータで構成される等、いくつかの条件が揃ったものとして設定しています。OpenFlowネットワークへの完全な移行、LANの接続形態は両ネットワーク同一で、ルータとOpenFlowスイッチが一対一で対応することを前提として、提案・設計・実装・評価を行っており、手動で行うデメリットを解消した研究結果を出すことに成功しました。これにより、従来型と同等のパケット制御を行うOpenFlowネットワークを半自動的に構築できます。
※4 ホップバイホップ方式…OpenFlow機器で全て構成された方式
※5 オーバーレイ方式…サーバ上に仮想OpenFlow機器が構成された方式
【論文掲載誌】
■雑誌名:『情報処理学会論文誌 Vol.58 No.3』 発行:一般社団法人情報処理学会
■論文名:OpenFlowネットワーク移行支援システム
■著 者:野村圭太、谷口義明、井口信和、渡辺健次
【今後の課題・展望】
今後は様々な使用場面を想定し、経路制御機能の移行機能やルータとL2スイッチ※6 が混在した従来型のネットワークからOpenFlowネットワークへの移行を支援する機能を付加する予定です。更には本システムを拡張することで、マルチエリアOSPF(Open Shortest Path First)※7 やIGRP(Interior Gateway Routing Protocol)※8 などを用いた大規模なネットワークの移行支援にも対応可能であることから、その実装を検討中です。
※6 L2スイッチ…OSI参照モデル(7つの階層(レイヤ=L)から成り立った通信に関する共通ルール)のL2(直接つながっている機器への信号の受け渡しに関するルールを定めた「データリンク層」)において信号の行先を振り分ける役目のもの
※7 OSPF…リンクステート型ルーティングプロトコル※9
※8 IGRP…ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコル
※9 プロトコル…通信ネットワークにおけるルール
【研究開発グループ】
近畿大学大学院博士前期課程
総合理工科学研究科 エレクトロニクス系工学専攻 2年 野村 圭太
研究テーマ:OpenFlowネットワークへの移行支援
理工学部 情報学科 講師 谷口 義明
専 門:情報ネットワーク、センサネットワーク
研究テーマ:センサネットワーク、無線ネットワーク
受 賞 歴:UBICOMM 2009 Best Paper Award(2009年)、
AICT 2011 Best Paper Award(2011年)、
CSS 2012 Best Paper Award(2012年)、
電子情報通信学会通信ソサイエティ活動功労賞(2012年)
理工学部 情報学科 教授 井口 信和
専 門:情報ネットワーク、教育システム、農業情報
研究テーマ:インターネット応用、学習支援システム、農業ICT
受 賞 歴:DICOMO 2008 優秀プレゼンテーション賞(2008年)、
第12回 NICOGRAPH 論文コンテスト奨励賞(1996年)
広島大学大学院 教育研究科 渡辺 健次
専 門:教育システム、情報ネットワーク
研究テーマ:学習支援システム、インターネット応用、分散システム運用技術
受 賞 歴:教育システム情報学会論文賞(1998年)、
情報処理学会第49回(平成6年度後期)全国大会奨励賞(1995年)、
九州総合通信局長表彰情報通信月間表彰(2008年)、
KES2008 Best Poster Award(2008年)
【関連リンク】
理工学部情報学科 講師 谷口 義明(タニグチ ヨシアキ)
http://www.kindai.ac.jp/meikan/1230-taniguchi-yoshiaki.html
理工学部情報学科 教授 井口 信和(イグチ ノブカズ)
http://www.kindai.ac.jp/meikan/238-iguchi-nobukazu.html