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天下りの受け入れは公共事業の受注を増やす 天下り受け入れ企業が有利になり、市場経済にも影響

2017.02.21

  • 経済

天下り前後の落札確率の増減

近畿大学経済学部(東大阪市)の准教授 中林純は、オーストラリア国立大学講師 淺井顕太郎およびカリフォルニア大学バークレー校助教授 川合慶と共同で、公務員が民間企業等に再就職する、いわゆる「天下り」と企業が公共事業を落札する確率の関連性を調査しました。その結果、天下りを受け入れた企業は、天下りを一人受け入れる毎に公共事業を落札する確率が平均で0.7ポイント(平均落札確率は10.8%)上昇することが判明しました。

【本件のポイント】
●公共事業を落札する確率は天下りを一人受け入れる毎に平均で0.7ポイント上昇
●落札確率は天下り受け入れ直後から上昇し、その後も継続
●退職公務員の知見ではなく、天下り受け入れそのものが落札確率の上昇に寄与している

【本件の概要】
経済学部准教授 中林純は、天下りの受け入れが企業にもたらす利益、特に公共工事の受注への影響について研究を行いました。分析に用いたデータは平成13年度(2001年度)から平成16年度(2004年度)まで、国土交通省が公表している建設工事入札データおよび人事院が公表している「営利企業への就職の承認に関する年次報告」です。
上述の期間中に天下りを受け入れた建設業者が参加した約3万件の公共事業の入札について、企業が天下りを受け入れる前後で、公共工事を落札する確率がどのように推移するかを統計分析しました。
その結果、天下りを受け入れた直後から落札確率が上がり、一人の天下りを受け入れる毎に落札確率が平均で0.7ポイント上昇することがわかりました。
また、退職公務員を事務系と技術系に分けて同様の分析をしたところ、両者の間で落札確率の上昇効果に差がないことがわかりました。このことから、退職公務員の技術的な知見が落札確率を上げているのではなく、天下り受け入れの見返りとして落札確率が上昇している可能性が示唆されます。
在職中の公務員の天下りあっせんが大きな問題となっている中、天下りが市場経済の健全性を脅かしている可能性が浮き彫りになりました。
なお、本件は今後、国内外の学術誌などに投稿する予定です。

【プロフィール】
経済学部准教授 中林 純(なかばやし じゅん)
学   位:Ph.D in Economics
専門分野 :産業組織論
研究テーマ:産業組織、オークション、入札の分析、
論   文:Jun Nakabayashi,"Small Business Set-asides in Procurement Auctions:
      An Empirical Analysis," Journal of Public Economics, 100 (2013) 28-44

オーストラリア国立大学講師 淺井 顕太郎(あさい けんたろう)
学   位:Ph.D in Economics
専門分野 :組織論
研究テーマ:産業組織、ファイナンス、政治経済、応用ミクロ、行動経済
著   書:"Global Financial Stability Report"
      "Risk Taking By Banks: The Role of Governance and Executive Pay"
      (with Erik Oppers, Luis Brandão Marques, Jonathan Beauchamp, and Pragyan Deb)
      Chapter 3, IMF Global Financial Stability Report, IMF, October 2014.
論   文:Kentaro Asai, Lester Tong, Karen J. Ye, John A. List, Howard C. Nusbaum,
      and Ali Hortaçsu "Experienced Traders Modulate Anterior Insula to
      Reduce the Endowment Effect" (with) Proceedings of the National Academy
      of Sciences 113 (33), 2016.

カリフォルニア大学バークレイ校経済学部助教授 川合 慶(かわい けい)
学   位:Ph.D in Economics
専門分野 :産業組織論
研究テーマ:産業組織、政治経済、
論   文:Kei Kawai and Yasutora Watanabe,"Inferring Strategic Voting,
      (with Yasutora Watanabe) American Economic Review, Vol. 103,
      No. 2, 2013, pp. 624-662

関連URL:http://www.kindai.ac.jp/keizai/

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