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高級魚「クエ」と「タマカイ」の良さを併せ持つハイブリッド 「クエタマ」を直営店にて数量限定で初提供

2016.12.16

  • 研究所

近大産クエタマの薄造り

近畿大学(大阪府東大阪市)は、平成28年(2016年)12月20日(火)から2月上旬頃まで、大阪・梅田と東京・銀座に出店している養殖魚専門料理店「近畿大学水産研究所」にて、「クエ」と「タマカイ」の交雑魚「クエタマ」を使用した新メニュー3種を各店舗1日計15食限定で提供を開始します。

【本件のポイント】
●高級魚「クエ」の淡白で上品な味わいと、絶滅危惧種「タマカイ」の食感の良さを併せ持つ「クエタマ」を養殖。噛めば噛むほど旨味が溢れ出る新たな魚を初提供
●味だけでなく、「タマカイ」の成長の早さも併せ持ち、出荷サイズまでの養殖が容易
●付加価値の高い交雑魚の良さを一般の方に知ってもらう

【近畿大学水産研究所大阪店料理長 植田克己のコメント】
身はクエのような淡白で上品な味わいです。特に、刺身はコリコリとした歯ごたえが特徴で、噛めば噛むほど旨味が溢れ出してきます。クエと同様に、鍋料理・焼き・刺身等どんな料理にでも合う万能な魚です。店舗で試食を行った際には、クエよりも美味しいとの感想もありましたので、実際にお客様のお声をいただくことを楽しみにしております。

【本件の概要】
■提供開始:平成28年12月20日(火)[ディナー]17:00~23:00(L.O.22:00)
      ※ディナーのみでの提供
■場  所:養殖魚専門料理店「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」
      大阪店(大阪市北区 グランフロント大阪内)、銀座店(東京都中央区銀座)
■メニュー:(1)近大産クエタマの薄造り 800円(税抜)
      (2)近大産クエタマのガーリックオイル焼き 950円(税抜)
      (3)近大産クエタマのオイスターソース炒め 950円(税抜)
      ※各店舗3種合わせて1日計15食限定。在庫に限りがあるため、2月上旬頃までの提供。

【近畿大学水産研究所所長 升間主計のコメント】
クエは成長が遅く、養殖では商品サイズの2kgまで育てるのに4~6年、あるいはそれ以上の期間が必要です。このように長期間の養殖期間を必要とする魚種は養殖業として経営的に成立しないといわれています。
また、ハタ類は雌性先熟魚で、最初は雌として成熟し、成長や年齢が進むと雄に性転換して繁殖活動を行います。同じハタ類であるクエもタマカイも雌性先熟魚です。しかし、タマカイは、飼育下で精子を持つ成熟雄の養成の成功例は多いものの、雌については台湾の一部の養殖場を除いて、成熟した雌の養成に成功していません。クエとは異なり、成熟した雌の養成が困難な魚種で、マレーシアのような熱帯の生息場所でさえ、飼育しているタマカイは雌として成熟しません。しかし、精子を採取することは可能であるため、成長の遅いクエの卵に、成長の早いタマカイの精子を交配することで、クエの身質と、タマカイの成長を併せ持った新たな魚種の開発を行いました。
現在、国内でもタマカイの精子が利用できるように、今年8月から奄美実験場にて開始したタマカイの親魚の養成に取り組んでいます。

【クエタマの作出と養殖について】
養殖魚の生産効率を高めるためには、より良い養殖特性を持つ品種の作出が必要です。品種改良手段の一つとして、近畿大学では交雑による品種改良を古くから試みています。代表的なものとして、ハタ類であるヤイトハタを用いた「ヤイトハタ×クエ」、「ヤイトハタ×マハタ」という2つの交雑種の作出に成功しています。
今回、これら交雑種作出の一環として、高級魚「クエ」と、より早い成長が期待される「タマカイ」との交雑を試みました。平成25年(2013年)にマレーシアで養成されている「タマカイ」から精子を採集・凍結保存して持ち帰り、近畿大学水産研究所奄美実験場にて養成した「クエ」の卵を用いて、平成26年2014年)4月に交配させ、孵化後に飼育を開始しました。孵化後195日目に262尾(全長23.5cm、体重212.4g)を取り上げ、海上生簀において養殖試験に入りました。2年後の今年10月末時点では、クエが1.09kgであるのに対し、クエタマは4.15kgで3.8倍の成長となり、タマカイの持つ成長の早さを発揮しています。

【クエについて】
近畿大学は、昭和63年(1988年)に世界で初めてクエの人工孵化に成功し、その後、完全養殖にも成功しています。クエは西日本から東シナ海、南シナ海の沿岸域に分布し、外洋に面した水深20~200mまでの岩礁やサンゴ礁に生息します。専門の漁師でさえ月に何本も獲れないことから幻の魚とされ、その美しい白身が奏でる上品な味わいからフグよりも美味と称される魚です。淡白でありながらも脂の乗ったその味わいが、「クエを食ったら、他の魚は食えん」と言われるほどに珍重されています。稀に大型個体が漁獲され、新聞の地方版やスポーツ新聞の釣り面を賑わせることもあり、釣り人の憧れの的ともなっています。

【タマカイについて】
タマカイは、体長2m以上、体重は200kg以上にまで成長するハタ科に属する最大の魚です。インド洋からハワイ島までの太平洋のサンゴ礁や汽水域に生息しています。東アジアや東南アジアでは、高級魚として知られています。日本でも、沖縄において稀に水揚げされており、美味で貴重な魚として食べられています。
タマカイの幼魚は、黄色に不規則な黒色の横縞が特徴で、また成魚は緑灰色から緑褐色で、淡い斑点模様があります。鰭の端には黄色に多数の小さな黒い斑点があります。クエ同様に肉食性で甲殻類や魚類、時にはウミガメの子供や小さなサメ、エイなども餌としていると言われています。

【近畿大学における交雑魚研究】
交雑は、異なる魚種の特質を受け継ぐことを期待し、交配させることです。近畿大学では、昭和39年(1964年)に初めての交雑魚として、マダイ(雌)とクロダイ(雄)の交配に成功し、その後も数多くの組み合わせによる交雑種を作出しています。
なかでも、イシダイ雌とイシガキダイ雄の交雑魚である「キンダイ」は、近畿大学が昭和44年(1969年)に世界で初めて生産に成功し、昭和50年(1975年)に特許を取得。商標登録もしています。大学の略称を名前に持つこの魚は、近畿大学水産研究所白浜実験場のシンボルマークにもなっています。
そのほか、市場に流通した実績のある交雑魚は、近畿大学独自の魚種として、その養殖法に関する特許を取得しているものも多くあります。

関連URL:http://kindaifish.com/