世羅町から五島列島へ600km超の大移動 学生による茅葺き古民家移築プロジェクト本格始動
2016.11.21
- 工
移築される古民家(世羅町)
【本件のポイント】
●消滅が懸念される茅葺き民家の保存再生・伝統継承のため、世羅から五島列島に移築
●学生たちが、職人の技術継承が危ぶまれる伝統工法を実地で学べる機会であり、住民や職人らとの連携を通して課題解決力やコミュニケーション力を高める
●学生は解体・移築工事の補助の他、移築元民家調査や移築先民家の設計も手がける
【本件の概要】
近畿大学工学部建築学科の環境設計研究室は、平成21年(2009年)から「古民家再生プロジェクト」として、地域に残る茅葺き民家の保存と再生に取り組んでいます。この度、当プロジェクトを知った長崎県五島市の市民から茅葺き民家を住まいとして利用したいとの要望があり、学生たちが主体となって、世羅町に残されている空き家の茅葺き古民家を、600km超離れた五島列島の福江島(ふくえじま)に移築する「五島列島かやぶき移築プロジェクト」をスタートさせました。
今回は解体作業として、古民家の屋根の古茅剥がしと運搬作業を実施します。当作業は、ワークショップとして、一般の方の参加も受け付けます。
■日 時:平成28年(2016年)12月3日(土)、4日(日)、10日(土)、11日(日)10:00~15:00
雨天の場合、中止。
■場 所:広島県世羅郡世羅町井折国久
■対 象:学生(参加費500円/日)、一般(参加費1,000円/日)、小学生以下無料
■申込方法:メールにて、住所、氏名、年齢、電話番号を明記し申込む
(学生リーダー 武中:kindaikayabuki2016@gmail.com)。
中学生以下は、保護者同伴。人数制限なし
■申込締切:平成28年(2016年)11月28日(月)23:59まで
■お問合せ:近畿大学工学部建築学科 准教授 市川尚紀 TEL(082)434-7000(代)
【本件の背景】
茅葺き屋根の民家は、古来より長い時間をかけて、先人によって培われてきた我が国独特の建築様式ですが、その防火性能の弱さや職人の減少、住民の価値観やライフスタイルの変化などにより、全国的に消滅し続けています。残されている民家も、その多くはトタンや瓦で覆われ、茅の表情を残している民家は希少です。こうした中、東広島市には茅が露出している民家がまだ多く現存しています。しかしながら、市民の茅葺き民家の価値に対する意識は決して高いとはいえず、他の地域と同様に減少の一途をたどっているのが現状です。そうした状況を受け、近畿大学工学部の環境設計研究室では、平成21年度(2009年度)から、地域貢献活動の一環として「古民家再生プロジェクト」を立ち上げました。
学生たちはこれまで、NPO法人西中国茅葺き民家保存研究会の協力の下、茅葺き職人の石井元春氏や沖元太一氏の指導を受け、茅の刈り取り、屋根の葺き替え作業、内装の改修やインテリアの制作を行ってきました。茅葺き職人と学生たちによる保存再生活動やその成果は、多くのメディアに取り上げられ、この活動に深い関心を持たれた長崎県五島市在住の方が、広島県世羅町に残されている空き家の茅葺き民家を譲り受け、本年1月に学生たちの協力の下、五島列島の一つ福江島へ移築する話が持ち込まれました。空き家になった茅葺き民家の寿命は非常に短いため、一刻の猶予もない状況下にあり、これまでの「古民家再生プロジェクト」のメンバーを中心に「五島列島かやぶき移築プロジェクト」を発足しました。
■民家概要
(1)移築元…所在:広島県世羅町 用途:住宅(空き家)
構造規模:茅葺き屋根、木造平屋、延べ床面積160m2
(2)移築先…所在:長崎県五島市 用途:住宅
(3)築年数…約150年
■学生作業内容
(1)移築元民家調査の実測図作成
(2)移築先民家の設計
(3)解体・移築工事(茅葺き作業)の補助
■体制
学生メンバー:近畿大学工学部建築学科学生有志
担当教員 :市川 尚紀(近畿大学工学部建築学科 准教授)
施工主体 :沖元 太一(広島茅葺屋根工事店 代表)
アドバイザー:上田 進(西中国茅葺き民家保存研究会 代表)
■スケジュール
平成28年(2016年) 9 月~11月 移築元民家の実測図面作成及び移築先民家の設計
平成28年(2016年)12月~ 4 月 民家解体・輸送・刻み※1・建て方※2
平成29年(2017年) 6 月 屋根茅葺き完了予定
平成29年(2017年) 6 月~11月 内外装工事期間
平成29年(2017年)12月 移築完了予定
※1「刻み」…設計図面を元に墨で印を付けた構造材などを手作業で加工する作業
※2「建て方」…現場で主要な構造材を組み立てる作業
【関連リンク】
工学部建築学科 准教授 市川 尚紀(イチカワ タカノリ)
http://www.kindai.ac.jp/meikan/1138-ichikawa-takanori.html