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~「フッ素+アパタイト+ナノ」で細菌や炎症に強い次世代の材料へ~
新素材!安心・安全なカテーテルを目指したハイドロキシアパタイトナノ粒子の開発
近畿大学生物理工学部教授・古薗 勉、准教授・東 慶直らの研究成果

2014.06.11

  • 生物理工
近畿大学生物理工学部医用工学科(和歌山県紀の川市)教授の古薗 勉(ふるぞの つとむ)と食品安全工学科准教授の東 慶直(あずま よしなお)の研究グループは、株式会社ソフセラ(東京都新宿区)と共同で、独自の技術でフッ化物イオンをハイドロキシアパタイト(※1)に導入し、ナノ粒子化することで、細菌や炎症に強い新素材を開発しました。この技術を応用することで、カテーテル(※2)などの医療機器や歯磨き粉など、様々な製品への応用が期待されます。
なお、本研究に関する研究成果は、平成26年(2014年)6月12日(木)~15日(日)に神戸国際会議場などにて開催される第59回日本透析医学会学術集会・総会にて報告を予定しています。古薗教授による発表は、14日(土)13:45~15:45(第19会場)に行われます。

(※1)ハイドロキシアパタイト:骨や歯の主成分であり、鉱石としても存在する塩基性リン酸カルシウム。体になじみやすく害が少ないため、バイオマテリアルをはじめとする様々な分野で活用されている。化学式はCa10(PO4)6(OH)2 。
(※2)カテーテル:体の外側と内側をつなぐ軟らかい管で、薬液や栄養物などを体に注入するときに用いられる医療機器。


【研究のポイント】

● 今回開発したフッ素含有ハイドロキシアパタイトのナノ粒子は、マイルドな抗菌性を持つため、人体に悪影響を与えることなく、長期間にわたって抗菌作用を発揮することが期待される
● 微粒子状で結晶が凝縮しにくく(分散性が高く)ナノの厚さで加工できるため、カテーテルなどにコーティングしてももとの軟らかさを損なうことがなく、応用の幅も広い
● 耐酸性を持つため人体に入れても炎症などに強く、歯磨き粉などにも応用が期待される


【研究の背景】

ハイドロキシアパタイトは人間の骨や歯の主成分であり、人体によくなじみ、無害である(生体親和性が高い)ことから、骨や歯の治療材など医療分野での応用が試みられてきました。過去には細菌による感染を防ぐ目的で、アパタイト製の端子を付けたカテーテルが販売されたこともありましたが、その硬さ・脆さにより医療市場から姿を消しています。
そこで古薗らは、アパタイトの持つ優れた生体親和性に注目し、アパタイトナノ粒子をカテーテルに強くコーティングする手法を開発し、製品化を進めてきました。こちらは軟らかく体になじみやすいため、市販のカテーテルに比べて細菌の侵入を防止できるという利点から注目されています。一方で、細菌が侵入した場合、アパタイト自身には抗菌性がないため、完全に感染を防止するには課題が残されていました。


【研究の概要】

今回、古薗らは独自の技術で、フッ化物イオンを導入したハイドロキシアパタイトのナノ粒子を開発しました。このナノ粒子には大腸菌を死滅させる性質があることを発見、抗菌性を有することがわかりました。一般に強い抗菌性を持つ銀イオンに比べ、フッ化物イオンの抗菌力は非常に微弱であることから、生体の健全な組織に対し、悪影響を与えることなく使用できることが期待されます。
また、このハイドロキシアパタイト粒子は小さな結晶の状態でバラバラになっているため、化学結合を用いることでカテーテルなど医療機器の表面にナノメートル(10億分の1メートル)の次元の厚さでコーティングすることができます。さらに、酸性の環境にも強いことも確認されたため、生体における炎症部分などでも安定しやすいことが分かりました。

【今後の展望について】

今回開発されたフッ素含有ハイドロキシアパタイトはマイルドな抗菌性を有し、またナノメートルの厚さで加工できるため、カテーテルの素材や骨充填材など、医療への幅広い応用が考えられます。また、酸性環境にも強いことが確認されたため、歯磨き粉など歯の保護材にも用いられることが期待されます。
これまでの古薗らのアパタイトナノ粒子製造の技術は(株)ソフセラに移管されておりますが、今後はソフセラにてフッ素含有アパタイトナノ粒子の製造を開始し、事業化を進めます。試薬および原材料として販売した後に、医療機器の充填剤やコーティング材へと用途を広げる予定です。
また、今回開発したフッ化物イオン導入アパタイトのマイルドな抗菌性と、同時に開発した銀イオン導入アパタイトナノ粒子の強い抗菌性を組み合わせることにより、症状や用途に合わせて抗菌力を調整した抗菌剤を提供することも期待されます。


【補足説明】 

●フッ素を含有する技術的な方法について
(1)ハイドロキシアパタイト構造中の水酸化物イオンの位置にフッ化物イオンを置換
(2)融着防止処理を施してから、高温で焼く
(3)水で洗浄することにより、分散性が高く結晶性も高いフッ素含有アパタイトナノ粒子が完成

●株式会社ソフセラについて
・本社 : 東京都新宿区新宿6-7-1-314 エルプリメント新宿3F
・設立日 : 平成19年(2007年)10月10日
・代表取締役社長 : 河邉カーロ和重
・資本金 : 375,942,000円
・事業内容 : 分散性・結晶性アパタイトナノ粒子(商品名:SHAp)の製造販売、SHAp複合化技術による医機器の開発と事業化

●今回の研究発表について
今回ニュースリリースした内容は、第59回日本透析医学会学術集会・総会の学会・委員会企画セッション『新技術で開拓する新しい血液浄化法』にて、将来、人工腎臓を体に装着する場合に応用可能な、細菌感染を防止する体に優しい抗菌材の利用法について発表します。

関連URL:http://www.kindai.ac.jp/topics/2014/06/post-593.html