NEWS RELEASENEWSRELEASE

近畿大学×大阪ガスエンジニアリング株式会社 マレーシアで、パーム椰子原料「バイオコークス」の 生産導入試験を開始

2014.03.05

  • 理工
近畿大学(大阪府東大阪市)と大阪ガスエンジニアリング株式会社(以下OGE 本社:大阪市中央区)は、パーム椰子やし原料「バイオコークス(※1)」の海外における生産実証の導入試験を開始します。 なお、本件は独立行政法人科学技術振興機構(以下JST)の実施する「産学共同実用化開発事業(※2)」として採択されております。
この度の試験では、海外で廃棄されている未利用のパーム椰子由来のバイオマスを原料としてバイオコークスを製造します。従来の国内生産にくらべて原料の調達が容易で、原料価格も安いため、大幅な製造原価の削減が期待できます。海外での製造試験は、国内の事業者及び大学としては初の試みとなります。

近畿大学はこれまでの知見を生かし、短時間で効率よくバイオコークスを成形する条件の選定を行います。OGEはLNG(液化天然ガス)プラントや水素製造プラントなどの設計、建設を行う総合エンジニアリング事業に加えて、石炭コークスを使用したコークスベッド式汚泥溶融炉(※3)の建設・運転管理も行っており、今回の実証試験ではそこで蓄積したコークスに関する技術、ノウハウを生かし、バイオコークスの実用化に取り組みます。

今回の試験では、OGEは新たに開発されたバイオコークス連続製造装置のパイロットプラントをマレーシアの協力企業に設置し、サンプル製造試験(年間650トン程度)を約2年間行います。現地での導入試験が成功すれば、本格的実用化開発として、引き続き商用プラントを建設し、バイオコークスの量産化及び日本国内の溶解炉等への販売を目指します。

なお、本導入試験は、パームバイオマスの用途拡大、バイオマス燃料による環境改革を推進する事業として、マレーシア投資開発庁からも期待されています。
両者は今後も、バイオコークスを始めとした再生可能エネルギーの普及拡大に貢献していきます。


(※1)バイオコークス:近畿大学理工学部准教授の井田民男が開発。飲料工場から大量に排出・廃棄される「茶かす」をはじめ、ほぼ全ての光合成由来バイオマスから製造可能で、製鉄・造炉で燃料として使われる石炭コークスの代替となる、新しい固形燃料です。石炭コークスの課題である化石燃料依存(=天然資源枯渇)や輸入価格変動のリスクを解決する、まったく新しいエネルギーとして期待を集めています。

〈これまでの実績〉・2008 年4 から7 月、(株)豊田自動織機の東知多工場(愛知県)で、自動車エンジン部品を製造するキュポラ炉(※4)での実証試験を行い、バイオコークスが石炭コークスの11.4%を代替(製品製造工程への影響なし)することを確認。
・2010 年4 月、(株)ナニワ炉機研究所と共同で、24 時間で約1 トンの製造能力を持つ実用タイプのバイオコークス製造装置を開発。
・2011 年4 月、大阪府森林組合が世界初のバイオコークス商用製造プラントを大阪府高槻市に建設。間伐材などを燃料化して販売。現在も稼働中。
・2011 年9 月、近畿大学とJFE エンジニアリング(株)、(株)ナニワ炉機研究所、日本砿研(株)が共同実証試験。廃棄物高温ガス化直接溶融炉で石炭コークス56.5%代替に成功。
・北海道経済産業局の平成22 年度補正予算「地域イノベーション創出研究開発事業」の支援を受け、2012 年に連続でバイオコークス生成を可能にすることで生産能力を従来機の約4 倍に高めた新型連続製造機の 開発に成功。
・2012 年1 月、バイオコークスは平成23 年度新エネ大賞の資源エネルギー庁長官賞を受賞。
・2012 年12 月、近畿大学、(株)豊田自動織機、(株)ナニワ炉機研究所、大阪府森林組合が平成24 年度地球温暖化防止活動環境大臣賞を共同受賞。

(※2)社会に還元されないまま埋もれている日本の大学の基礎研究を企業化開発できるよう、大学等の研究の成果に基づき、企業等が行う開発リスクの伴う規模の大きい開発を支援し、実用化を後押しすることで民間の需要を喚起し、持続的成長につなげることを目指す事業です。

(※3)コークスベッド式汚泥溶融炉とは、下水汚泥や産業廃棄物等を炉下部のコークスベッド層で溶融してスラグ化する炉です。受け入れ対象廃棄物の 1形状、大きさ 2水分率 3発熱量の許容範囲が広く、多用な廃棄物に対応できるのが特長です。

(※4)キュポラ炉とは、石炭コークスの燃焼熱を利用して約1500℃の温度環境下で鉄を溶かし鋳物の溶湯(ようとう:溶解され液体状になった鉄)を得るためのシャフト型溶解炉です。特に、自動車部品や工作機械等の複雑な形状の製品(鋳物と称されてる)を製造する装置として使用されています。

関連URL:http://www.kindai.ac.jp/topics/2014/03/post-542.html