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LED可視光通信で世界最速:614Mbit/sを実現 近畿大学工学部・藤本教授、単独光源・市販部品で ―― 低コスト・高速通信システムを確立 ――

2012.10.16

近畿大学工学部(広島県東広島市高屋うめの辺、学部長:京極秀樹)電子情報工学科の藤本暢宏教授の研究グループは、白色LEDの光を使って高速の光通信を行う「可視光通信」で、単独のLED光源を用い、信号増幅のための特別な部品や装置をいっさい使わずに行う実験では世界最速となる614メガビット/秒(Mbit/s)のデータ通信速度を実現しました。藤本教授は2012年9月19日、光通信に関する世界最高峰の学会「ECOC 2012」(アムステルダム)にて、この成果を発表しました。

可視光通信は、白色LEDを高速で点灯・消灯させることでデジタル信号化した光を、端末などの受光部が感知することで、データの伝送を行います。目に見える光が届く範囲で通信を行うため、データ漏洩などのリスクが小さいとされ、照明機器を用いた家庭内の情報ネットワークや交通安全システムなどでの活用が期待されています。

今回の実験は、特別な部品や複数のLED光源を用いて信号を増幅することなしに、単独のLED光源を含む部品すべてに市販品を用いることで、LEDの単純な点滅によるデータ通信速度を試したものです。これは、LEDの単純点滅という本質的な機能と低コストな環境を前提とすることで、将来の実用化につながる研究成果を得ることが目的です。その結果、同じ条件で従来、最速であった125Mbit/sを大幅に上回る614Mbit/s(伝送距離40センチメートル)を記録しました。

高速化を実現できた要因には、(1) 隣り合う信号同士の干渉を許容する「デュオバイナリー伝送」技術を活用したこと (2) 送信部と受信部の双方に抵抗とコンデンサからなる簡素な回路を導入し、応答を速めたこと――が挙げられます。
従来の同様なシステムでは、光の三原色(赤・緑・青)を分離するため、高価な波長フィルタが必要でしたが、今回は赤だけを点滅させたため、これが不要になりました。また、部品すべてを市販品で賄ったことで、低コストかつ高速の可視光通信システムの構成に成功しました。

藤本教授のグループでは今後、天井の照明機器を用いる室内データ通信システムで最低限必要とされる伝送距離2メートルの実現と、さらなる高速化を目指します。今回、単独のLED光源の1色(赤)のみで614Mbit/sを実現した技術を用い、複数のLED光源や3色すべての活用などを行うことで、さらに高ビットレートでの通信を試みていく方針です。


関連URL:http://www.kindai.ac.jp/topics/2012/10/led614mbits.html