実学主義を貫き、
成果を社会に生かす
総合大学へ。
念願の近畿大学創設を果たした世耕弘一はその門出にあたり、これまでに出会った人々の姿を思い出していた。和歌山の海岸で漁の不振にあえぐ漁師の後ろ姿、ミカン畑で米を作るよう軍部に命令され途方に暮れる農民の表情。「決して、忘れてはいけない」と弘一は、戦後の国民を救える学問の追求こそ大学の使命だと考えたのである。
過去の苦い経験に学んだ弘一は実学主義を「独創的な研究とその成果を社会に生かす」ことに要約し、研究分野を確立させていく。和歌山の白浜町に水産養殖研究を目的にした水産研究所を設立しブリやマダイなどの養殖に取り組んだり、湯浅町の広大な荒地を造成して湯浅農場を開き、豊かに実る温州ミカンを収穫できるようにした。「恵まれた条件下の成功はあたりまえだ」と、あえて悪条件に身を置き、科学技術による改良を推進していったのである。
世界へ、未来へ。
万博で示す「実学」の進化。
昭和35年には日本の大学で初めて原子炉を設置し、翌年、民間として日本初の臨界に達したことでも世界的に評価された。こうした「実学」の精神は、令和7年(2025年)に開催される「大阪・関西万博」の舞台でも遺憾なく発揮される。 本学は「大阪ヘルスケアパビリオン」への出展や、サントリーグループのパビリオンで養殖魚を提供するレストランを展開するなど、学生と研究者が一体となって参画。「いのち輝く未来社会」の実現に向け、近畿大学が誇る研究力と学生の活力を世界へ向けて発信していく。
創立100周年、
医学部移転で
新たなステージへ。
「日本一の大学」と弘一が愛した近畿大学は、令和7年に創立100周年を迎えた。令和8年4月開設の看護学部を含む16学部50学科、12研究科1プログラム、2短期大学および18付置研究所、附属学校などを擁する西日本最大級の総合大学へと成長を遂げている。 この記念すべき年の11月には、医学部および近畿大学病院を大阪狭山キャンパスから堺市・泉ケ丘駅前へ移転し、新たに「おおさかメディカルキャンパス」を開設。AIなどの最新技術を活用した高度医療拠点として地域医療を支えるとともに、チーム医療を担う人材育成のさらなる強化を図っていく。
キャンパスに息づく改革の精神。
教育環境の整備も進み、平成29年4月には「アカデミックシアター」がオープンした。スマホで予約できる24時間利用可能な自習室や、マンガ2万6千冊を含む全7万冊以上の蔵書を誇る図書館を備え、文系・理系の垣根を越えて社会課題を解決に導く「実学教育」の発信拠点となっている。 さらに令和4年10月には、東大阪キャンパス西門前に近大発ベンチャー企業の創出拠点「KINCUBA Basecamp(キンキュバ ベースキャンプ)」を開設。24時間利用可能で法人登記もできるこの場所は、起業という同じ志を持つ仲間が集い、挑戦をカタチにするための熱源となっている。
「私の理想は、すべての人々が大学を卒業することです」。そう語った弘一の理想は、58万人を超える卒業生を輩出した現代において成就しつつある。近畿大学は、創立者の熱い想いを原点に、次の100年も社会を変革する「倒れざる挑戦者」を育成し続ける。