LASCol線維の分子パッキングが弱いことにより生じる微小な構造変化が、コラーゲンの潜在的な性質を強めることを発見

2021.01.23

  • 遺伝子

近畿大学生物理工学部遺伝子工学科教授の森本康一らの研究グループは、I型コラーゲンの新しい不安定な線維構造を発見しました。この線維構造ではコラーゲン分子間のパッキングが緩く、熱安定性が低下することが示されました。また、播種した細胞がスフェロイドを形成することにも関係していることが示唆されました。
本研究成果は、令和2年(2020年)11月19日に、天然高分子の化学的および生物学的側面に関する研究を網羅する科学ジャーナル「International Journal of Biological Macromolecules」(Elsevier)にオンライン掲載されました。

Defective chicken skin collagen molecules, hydrolyzed by actinidain protease, assemble to form loosely packed fibrils that promote cell spheroid formation

■研究概要

コラーゲンは細胞接着性が強いため、これまでに培養皿に塗布されて広く使われてきました。
しかし、我々は細胞接着性が低下したコラーゲン(LASCol, Low Adhesive Scaffold Collagen)を開発することに成功し、LASCol線維で培養した細胞は3次元スフェロイドを効率よく形成し、成長因子などのmRNA発現量が変化することを示しました。また、LASColゲルをラットの変性椎間板組織に注入すると、組織修復を促進することを発見しました。
本論文では、これらの新しい性質が現れる分子メカニズムを明らかにすることを目的とし、LASCol線維の構造を解析しました。その結果、LASCol線維の分子パッキングが弱いことにより生じる微小な構造変化が、コラーゲンの潜在的な性質を強めることを見出しました。

■論文情報

雑誌名:"International Journal of Biological Macromolecules"(インパクトファクター:5.162/2020)
論文名:Defective chicken skin collagen molecules, hydrolyzed by actinidain protease, assemble to form loosely packed fibrils that promote cell spheroid formation(アクチニダイン・プロテアーゼにより加水分解したニワトリ真皮の不完全なコラーゲン分子は、会合して細胞のスフェロイド形成を促進する緩い線維を形作る)
著 者:Koichi Morimoto, Saori Kunii, Ben'ichiro Tonomura
DOI:https://doi.org/10.1016/j.ijbiomac.2020.11.061

■関連リンク

生物理工学部遺伝子工学科教授  森本 康一(もりもと こういち)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/339-morimoto-kouichi.html