マイクロニードル技術を用いた全く新しい体内局所用の止血シートの開発に成功

2020.12.03

  • 医用

近畿大学生物理工学部の加藤暢宏教授らの研究グループは、和歌山県立医科大学の田中篤准教授らとともに、マイクロニードル技術を用いた体内局所用の止血シートの開発に成功しました。このマイクロニードルシートは、感染リスクがない生分解性ポリマーで構成され、止血に適したシートの柔軟性とニードルの剛性を有しており、感染リスクを回避し、止血時間を短縮することが可能です。従来の生体由来の血液製剤に替わる、新たな止血デバイスとして活用されることが期待されます。
本研究成果は、令和2年(2020年)11月2日に、国際的なオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

A biodegradable microneedle sheet for intracorporeal topical hemostasis - Scientific Reports

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2cm角のシートに、高さ0.3mm程度の針が約300本、1mm間隔で並んでいる
一緒に写っている注射針は23G(ゲージ)※外径:0.64±0.02mm

■研究概要

手術における出血の管理は、患者の転帰を改善するために重要です。医療の現場ではさまざまな止血用製品が使用されています。主に使用されているのは生体由来の血液製剤ですが、感染リスク回避の観点からこれに代わる止血製品が求められています。
我々はこの問題に対処するために、マイクロニードル技術を用いた止血シートを新たに開発しました。このシートのユニークな特徴は、止血時間の短縮、感染リスクを高めることなく体内で使用できる生分解性ポリマーを用いている点です。動物実験では止血が容易ではない拍動中のブタの左心室壁でもシートを創傷に固定することができました。
本研究で開発した止血用マイクロニードルシートは (1)感染リスクがない生分解性材料で構成され、(2)手術中の止血時間を短縮し、(3)サージカルテープに匹敵する柔軟性を持ち、(4)ヒトの大動脈組織およびブタの左心室壁表面を穿刺するのに十分な剛性のニードルを持った全く新しい止血デバイスです。

■論文情報

雑誌名:"Scientific Reports"(インパクトファクター:3.998/2019-2020)
論文名:A biodegradable microneedle sheet for intracorporeal topical hemostasis(体内局所止血用の生分解性マイクロニードルシート)
著 者:Mao Yokoyama, Namie Chihara, Atsushi Tanaka, Yosuke Katayama, Akira Taruya, Yuko Ishida, Mitsuru Yuzaki, Kentaro Honda, Yoshiharu Nishimura, Toshikazu Kondo, Takashi Akasaka & Nobuhiro Kato

■関連リンク

生物理工学部医用工学科教授 加藤 暢宏(かとう のぶひろ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/347-katou-nobuhiro.html