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最先端研究

近畿大学理工学部のトップランナー いま注目の最先端研究

軽量化の切り札“CFRP”のポテンシャルアップを目指して
~金型と成形の複合化技術で、量産・再利用に挑む~
近畿大学理工学部 機械工学科 教授
西籔和明

地球環境にやさしい軽量化のために

地球環境保護の観点から、私たちはあらゆる社会活動においてCO2の排出量を減らす必要があります。なかでも航空機や自動車等の輸送機器の燃料消費量を減らすには、それらの重量自体を減らすことが効果的です。しかし、自動車の場合では衝突時の安全性や乗車時の快適性を高めるために、開発が進むほど搭載される機器が増え、逆に重量が増えていく傾向にあります。そのため、燃費向上の切り札として、輸送機器に用いられている構造材料を軽量化することが急務として求められています。その際、製造時のエネルギーの消費量を抑えるとともに、製造時に排出される不用材を有効に再利用し、使用後の廃棄物も再資源化しやすい “地球環境にやさしい材料および製造法”を選ぶ必要があります。これをできるだけコストを抑え、広く使って頂きやすいように工夫することが我々の使命です。

金属からCFRPへ、素材革命が起きる

熱可塑性CFRPの連続積層装置

輸送機器の軽量化の切り札として有望な材料の一つは、大阪生まれの炭素繊維です。炭素繊維は軽くて(比重が1.8で鉄7.8の1/4、アルミ2.7の2/3)、強く(引張強度を比重で割った比強度が鉄の約10倍、引張弾性率を比重で割った比弾性率が鉄の約7倍)、しかも錆びません。ただ炭素繊維だけで使用されることは少なく、炭素繊維と合成樹脂を“複合化”した強化プラスチック(CFRP)として、これまでゴルフシャフトやテニスラケット、釣り竿などのスポーツ・レジャー用品に多く用いられてきました。これが近年、大型旅客機の胴体や主翼に大量採用され、大幅な燃費向上と室内環境の改善、加えてメンテナンス性が改善されてきています。また、量産電気自動車のパッセンジャーセルと呼ばれる構造材にも採用されています。さらに、工作機械やロボットなどの各種産業機器への採用も増えてきています。まさに、鋼やアルミニウムなどの金属からCFRPへの素材革命がまさに起ころうとしているのです。

炭素繊維とCFRP成形品例

目指すはCFRPの地産・地消・地再

歯ブラシから人工衛星まで、何でもつくれる全国屈指の中小企業の集積地である東大阪市内の企業5社と、私たちはCFRPの量産・再利用のための『e-コンポジット研究会』を東大阪市役所経済部のご協力により立ち上げました。まだまだ高価なCFRPの材料をいかに有効に使うか?この研究会では産学連携で既存の金属プレス機を活用したCFRP製品の量産のための加熱装置やリサイクルのための技術開発を行いました。研究対象とした材料は熱可塑性樹脂を用いた高性能なCFRPです。従来の熱硬化性CFRPよりも生産性・耐衝撃性・再利用性に優れているため、近年非常に注目されています。また、この熱可塑性CFRPは金属材料の代表的な加工法である打ち抜きやプレス成形、プラスチック材料の加工法であるインサート射出成形や溶接など、量産性に富む多様な製造法が適用できるようになっています。

e-コンポジット「地産・地消・地再」

手づくり装置から事業化へ道を拓く

創製加工学研究室ではCFRPの量産・再利用の研究に着目し、それらの製造装置は限られた研究環境の中で独自に設計・製作し、これを企業に提供・事業化することで社会に貢献したいと思っています。これまで、小型サーボプレスを用いた熱可塑性CFRPのプレス打抜き加工時の負荷状態や損傷挙動を調査し、その低減化のための打抜き工具や金型を開発し、なんと家庭用の100Vで動く畳一畳程度のミニ製造装置を開発し、展示会に出展したことでテレビや新聞でも紹介頂きました。最先端の材料・製造技術をいかにわかりやすく一般の方々に知ってもらうか、そのことの大切さを知りました。
同時に、地域の共同研究先の企業では共同開発した熱可塑性CFRP専用の加熱・搬送装置を既設の金属プレス機に付属して受注製造の事業化に向かっています。また、金型製造企業においても、CFRPの金型製造の受注や相談も増え、またCFRPのプレス成形時の不用品および使用後の廃棄品を有効に利用するための装置の高度化へと開発が進められています。私たちはこれを『インダストリアルCFRP』と命名し、すでにその幕開けが始まっているのです。

熱可塑性CFRP専用のミニ製造装置

熱可塑性CFRP専用の加熱・搬送装置

CFRPをどう接合・成形するか?

熱可塑性CFRPは、熱硬化CFRPとは異なり接着接合には向きません。また、ボルトやリベットなどの機械的な締結は強度低下、重量増や腐食などの問題もあります。そこで、創製加工学研究室では炭素繊維に通電して熱可塑性CFRPを融着接合するという独自の電気式融着接合工法を開発し、特許を出願しました。この方法で融着接合した航空機グレードの高性能な熱可塑性CFRPの接合強度が、欧州のトップ級の性能を上回ることができました。現在はこの新規技術をより広く活用頂くために、CFRPパイプの電気式融着継手や熱可塑性CFRPシートの連続積層成形法など実用化研究につなげています。
また、最近では赤外線加熱や誘導加熱、レーザーによる加熱など多様なエネルギーを用いて熱可塑性CFRPの接合や積層成形を行う手法とその製造装置の開発を行っています。さらに、CFRPと金属など異なる材料との組み合わせ(マルチマテリアルデザイン)に対応した開発にも着手しています。
「実証しなければ絵に描いた餅」「やれること・やりたいことより、求められること・やらなければならないことをやるのが実学」をモットーに、ものづくりの好きな学生と果敢に挑戦しています。

熱可塑性CFRPハイブリッド射出成形の作業風景

最後に残るのは「金型」と「ひと」

学生金型グランプリ出場に向けた取組み

近畿大学では平成24〜26年度に文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「大阪東部地域連携における先進的な金型技術の高度化研究」(通称:近大発・金型プロジェクト)を地域の金型関連企業等と連携して行ってきました。本プロジェクトの成果の1つとして誕生した「近大ものづくり工房」で、金型の設計・製造および射出成形を行い、さらにデジタル画像計測ロボットによる金型と成形品の三次元形状測定など,CFRPの研究開発を行っています.また,平成26年から地域の金型職人の協力を得て学生金型グランプリに出場しています。地域の金型および製造業の方々と金型ものづくりに関する諸問題や最新技術等を語り合う場として、平成25年6月より金型サロン「型ろう会」を開催しています。最後に残るのは、暗黙知の「金型」と「ひと」との交流です。

デジタル画像計測ロボットによる三次元形状測定

メッセージ

創製加工学実験室での説明風景

CFRPの製造において先駆的な欧米で開発された完成度の高い、しかも高額な装置を用いれば、労せずに高い学術的な成果を得やすいことは自明です。しかし、これを国内の製造企業に技術移管することは容易ではありません。自らがCFRPの原材料の特性を知り、それを有効に用いるための製造法を考案し、それを実証する装置を自ら設計・製作する過程で、製造時に生じる問題が明らかとなります。そこで、それをいかに克服するかという課題が見つかり、日本人特有の器用さと知恵により生まれる高い製造技術が誕生するのです。

用語説明
CFRPとは
炭素繊維と樹脂との複合材料で、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics)という先端材料。CFRPは金属材料よりも軽くて強く、錆びないため、スポーツ用品から航空機や自動車などの輸送機器へとその利用が拡大している。
金型とは
金属やプラスチックなどの工業製品をプレス成形や射出成形などにより製造するために用いられる金属製の型のこと。型を用いた製造は低コスト量産性に優れ、ものづくりには欠かすことができない。金型の性能が製品の品質を左右する重要な匠の技が盛り込まれている。

機械工学科 教授
西籔和明

所属 学科 / 機械工学科専攻 / 東大阪モノづくり専攻
研究室 創製加工学研究室
略歴
1986年 近畿大学理工学部機械工学科 卒業
1988年 近畿大学大学院工学研究科 機械工学専攻 博士前期課程修了
1988年 大阪府立工業高等専門学校 機械工学科 助手・講師・准教授
1999年 大阪大学大学院 工学研究科 生産科学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)取得
1999年 ベルギー王国カトリックルーベン大学 金属・材料工学科 客員教授
2010年 近畿大学理工学部 准教授
2016年 近畿大学理工学部 教授(現職)
受賞
1998年 (社)日本機械学会 学生員増強功労者 受賞
2000年 (社)日本材料学会 複合材料(高分子)部門委員会 奨励賞 受賞
2000年 TEXComp-4 Young Researcher Awards 受賞
2005年 (社)日本機械学会 機械材料・材料加工部門 一般表彰(新技術開発部門) 受賞
2006年 (社)日本材料学会 関西支部長賞
2006年 (社)日本材料学会 技術賞
2008年 (社)粉体粉末冶金協会 技術進歩賞
2010年 (社)日本機械学会 機械材料・材料加工部門 一般表彰(新技術開発部門)受賞
最先端研究一覧

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