このページの本文へ移動します。

KINDAI UNIVERSITY

  • 近畿大学ホーム
  • 学部・大学院一覧
  • トップページ
  • 研究
  • 水槽の長さよりも長い距離の風波の再現に成功~気候の予測の精度向上に期待~

研究

水槽の長さよりも長い距離の風波の再現に成功~気候の予測の精度向上に期待~

兵庫県立大学の高垣直尚助教、同志社大学高機能微粒子研究センターの小森悟氏(京大名誉教授)、名古屋大学の岩野助教、京都大学の黒瀬良一教授、近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)機械工学科の鈴木直弥准教授らの研究グループは、気候システムの変動・変化の最も基本的な要素の1つである大気・海洋間での乱流輸送(運動量・熱・物質)の詳細なメカニズムを解明するため、風波乱流水槽にて水槽の長さよりも長い距離の風波の再現に成功し、ループ法を提案しました。本件に関する論文が、平成29年(2017年)8月29日(火)に米国気象学会が発刊するJournal of Atmospheric and Oceanic Technologyに掲載されました。

【本件のポイント】
● 風波乱流水槽にて実海域の長い距離を発達してきた風波を再現に成功
● 定常的に大気・海洋間乱流輸送(運動量・熱・物質)の詳細なメカニズム解明が可能
● 波浪予報、気候の予測の精度向上などにより精度の高い災害対策が可能

【本件の概要】
時々刻々と流動場が変化する海洋での観測では、様々な現象が重なり合い海面状態が大変複雑なため、個々の現象を抽出して検証することが困難です。そこで定常的な流動状態が得られ風波乱流場を風波乱流水槽内に再現し、大気・海洋間乱流輸送の詳細なメカニズムを解明するための実験が行われてきました。しかし、実際の海洋のように広い海域で発達した風波、特に台風やハリケーン時などの強風域と数メートルの水槽での風波の相似性が常に問題となっていました。
本研究では、京都大学の大型の高速風波乱流水槽(水槽部:15m)に造波装置を設置し、水槽の終点での風波の波高・周波数スペクトルなどの情報を始点に設置した造波装置に入力することで終点の風波を始点から発生させさらに風波を発達させ、何回もループさせるループ型風波発達法を提案し、水槽の長さよりも長い46.5mの距離で発達した風波を生成することに成功しました。

【掲載論文】
■雑誌名:"Journal of Atmospheric and Oceanic Technology"
■発刊元:American Meteorological Society
■論文名:『Loop-type wave-generation method for generating wind waves under long-fetch
      conditions』
■著 者:高垣 直尚(兵庫県立大学)、小森悟(同志社大学高機能微粒子センター、海洋研究開発機構、
     京都大学名誉教授)、石田瑞紀(京都大学大学院工学研究科)、岩野耕治(名古屋大学)、
     黒瀬良一(京都大学)、鈴木直弥(近畿大学)

【研究の背景】
近年、地球温暖化による海水面の上昇、砂漠化、異常気象などが深刻化しており、特に巨大化した台風・ハリケーンや爆弾低気圧などの異常気象による被害が急増しています。これらの被害の対策を講じるためには、地球温暖化による気候変動の予測を正確に行うことが重要であり、そのためには、気候システムの変動・変化の最も基本的な要素の1つである大気・海洋間での乱流輸送(運動量・熱・物質)を正確に評価することが重要です。 
一般的に大気・海洋間運動量・熱・物質フラックスは経験的な式で求められています。この式には係数が使用されていますが、便宜的に風速のみの関数で与えられているだけであり、表層の流れ、風波、砕波、気泡生成までの異なるスケールの様々な現象を含む海面境界過程の影響は全く考慮されていません。そのため、風速に対する抵抗係数の値は大きくばらつき、未だ確立されたモデルはありません。
外洋での観測においては、測定器設置場所の制限があることや時々刻々と風および波が変化する非定常で複雑な海表面においては個々の現象を抽出して流速、温度、濃度等の正確な計測が困難であることがあげられます。そこで低風速から高風速に至る広風速域における定常の風波乱流場で正確な乱流計測を可能にする海洋のシミュレーション装置である風波乱流水槽を用いて個々の現象を再現することで流速、温度、濃度等の正確な計測が行うことで、大気・海洋間乱流輸送の詳細なメカニズムを解明することは重要です。

【今後の展望】
本研究で使用した大型の高速風波乱流水槽は、2015年に廃棄となってしまいましたが、近畿大学の風波乱流水槽に本研究で構築した造波装置を2017年に移植しました。今後は、ループ型風波発達法によって、さらに長距離を発達した風波を生成し、大気・海洋間乱流輸送機構の実験を行う予定です。大気・海洋間乱流輸送が解明されれば、台風やハリケーンの発達など気候の予測の精度向上、波浪予報の精度向上、人工衛星観測における海上風速観測の精度向上につながります。これにより、正確な情報を元に災害の対策を講じることができるようになると考えられます。


【研究者プロフィール】
兵庫県立大学大学院工学研究科機械工学専攻 助教 高垣直尚
専   門:流体工学、海洋物理学
研究テーマ:台風強度の高精度予測、大気-海洋間乱流熱・運動量・物質輸送に関する研究、噴霧ノズルに関する
      研究
受賞歴:日本機械学会奨励賞(2012)

同志社大学高機能微粒子研究センター 研究員(京都大学名誉教授)小森悟
専   門:環境流体工学
研究テーマ:大気-海洋間乱流熱・運動量・物質輸送に関する研究
受賞歴:色材協会論文賞(1991)、日本機械学会論文賞(1996、2006)、日本伝熱学会学術賞(2002)、
    日本流体力学会論文賞(2008)、流体科学研究賞(2012)

名古屋大学大学院 助教 岩野耕治
専   門:流体工学
研究テーマ:噴流の乱流構造、大気-海洋間乱流熱・運動量・物質輸送に関する研究、

京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻 教授 黒瀬良一
専   門:流体工学、燃焼工学
研究テーマ:乱流場におけるスカラ輸送・反応・燃焼機構の解明とモデリング、乱流場における粒子(液滴・気泡)
      の運動機構の解明とモデリング、大気-海洋間乱流熱・運動量・物質輸送に関する研究、ミクロスケ
      ールの熱流体現象の機構解明と応用、固体中のエネルギー輸送や界面熱抵抗の機構解明と応用、
      固体の熱ふく射特性の解明と熱エネルギー有効利用への応用
受賞歴:日本流体力学会論文賞(2008)、日本燃焼学会論文賞(2013、2015)

近畿大学理工学部機械工学科 准教授 鈴木直弥
専   門:環境流体工学、海洋物理学、環境リモートセンシング
研究テーマ:大気-海洋間乱流熱・運動量・物質輸送に関する研究、ブイおよび船舶における大気―海洋間乱流
      フラックス計測手法の構築、人工衛星を用いた海上風速計測の精度向上に関する研究
受賞歴:土木学会海岸工学論文集第57巻論文賞(2010)









このページの先頭へ

MENU閉じる
      訪問者別