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ニュースリリース

近畿大学医学部の研究チーム iPS細胞から効率的に間葉系幹細胞を 作成する方法を開発

2011年2月24日

 近畿大学医学部(大阪府大阪狭山市、学部長:塩崎均)の福田寛二教授(高度先端総合医療センター再生医療部)らの研究チームは、マウスおよびヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を免疫不全マウス※1に移植し、マウスの体内でテラトーマ(奇形種)※2として分化させた後に目的の細胞のみを取り出すことで、効率よく間葉系幹細胞※3を作る方法を開発し、特許出願を行いました。
 この方法で作られた間葉系幹細胞は、骨髄などに存在している間葉系幹細胞と同じ遺伝子を発現しており、脂肪、軟骨や骨にもなることができました。

 胚性幹細胞(ES細胞)、iPS細胞などの万能細胞は、人体の全ての細胞になることができることから、再生医療の材料として大きな注目を集めています。また、神経や心筋のように個人からの採取が困難な細胞を作れるため、患者に合わせた薬剤の開発(オーダーメード創薬)や新しい薬の選択方法としても期待されています。
 万能細胞から目的の細胞を作るには、従来、さまざまな化学物質を含む培養液の中で培養する方法が一般的でした。しかし、確実な方法が確立されているとはいえず、仮に誘導されても本来の細胞と比べて著しく機能が劣ることが多いため、再生医療の大きな障害となっていました。

 間葉系幹細胞は、骨や軟骨、筋肉になることができる細胞です。成人の体内にも存在し、癌(がん)化する危険性が低いことから、すでに骨・軟骨の欠損や歯周病に対する再生医療が開始されています。
 しかし、間葉系幹細胞には、(1) 増殖能力が低い (2) 採取には手術などの侵襲を伴う (3) 高齢者など一部の患者では充分な量を用意できない可能性があるといった問題があり、臨床応用を進める上での障害になっていました。
 その点、強い増殖能力を持ち、皮膚や血液からでも作製が可能なiPS細胞から間葉系幹細胞を作る方法は、すべての患者に対応可能であることもあり、期待が集まりました。しかし、iPS細胞から安定して間葉系幹細胞を分化誘導することができず、新たな課題解決が待たれていました。

 今回開発された技術では、特別な分化誘導因子を使う代わりに体内で分化させることで、本来の間葉系幹細胞に近い性質をもつ細胞を簡便に得られる可能性があります。
 また、テラトーマの中では細胞が組織様の構造を形成するため、間葉系幹細胞に限らず、従来の方法では作成が困難だった特殊な細胞も容易に獲得できる可能性があります。
 実際に福田教授らは、マウスのES細胞から膵(すい)臓の機能をもつ細胞をつくることにも成功しています。研究チームでは今後、安全性の確認や本来の細胞機能との比較などが課題となると考えています。

 今回の開発について、運動器再生医療の権威である名古屋大学大学院の石黒直樹教授(整形外科学)は「全く新しい発想に基づく組織幹細胞を得る方法で、革新的である。安全性の確認が必要となるが、iPS細胞の応用研究に大きな進歩をもたらす成果である」とのコメントを寄せています。

用語説明

※1: 免疫不全マウス
ヒトにおける重症複合型免疫不全症と同様の性質を示すマウス。免疫を司るT細胞とB細胞を持っていないため、他種の動物細胞に対して免疫拒絶反応を示さず、受容する性質をもつ。
※2: テラトーマ
主に万能細胞から作られる良性の腫瘍。これまでは万能細胞の能力を評価する方法として使われており、脂肪や軟骨などを組織の形で含むことが知られていた。
※3: 間葉系幹細胞
骨、軟骨、筋肉、脂肪の元になる細胞。近年では神経や肝臓細胞などへの分化も報告されており、再生医療の材料として重要視されている。

参考資料1

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参考資料2

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