気側自由乱流下における風波の発達機構を発見

2020.05.28

  • 研究

兵庫県立大学大学院工学研究科の高垣直尚助教、熊丸博滋氏(兵庫県立大学名誉教授)および近畿大学理工学部機械工学科の鈴木直弥教授らの研究グループは、気候システムの変動・変化の最も基本的な要素の1つである大気・海洋間での乱流輸送(運動量・熱・物質)の正確なモデル化で重要となる風波の発達機構を知るために、本学の海洋シミュレーション装置である風波水槽を用いて異なる格子変動乱流場における風波の発達を比較し、気側自由乱流の速度変動強度によらず風波は平均風速のみにしたがって発達することを明らかにした。
本研究成果は、令和2年5月25日に学術雑誌Experiments if Fluidsに掲載されました。

概要
海洋分野では、海洋表層直上の境界層内の乱流は海面に発生し、それにより風波の発達を伴うため、このような乱流は風波の発達と関連していることは知られています。また、その外側の自由乱流は、山、西風、貿易風などによって引き起こされ、境界層の乱流とは無関係ですが、大きなエネルギーを含んでおり、自由乱流も風波の発達に影響を与える可能性があります。しかし風波の発達における気側自由乱流の影響はまだ明らかにされていませんでした。
そこで本研究では、近畿大学所有の海洋シミュレーション装置である風波乱流水槽に2種類の乱流生成格子を設置することで気側に強制的に異なる乱流場を生成し、気側自由乱流が風波の発達に与える影響を検討した結果、どの乱流場における風波も、純粋な風駆動の風波の特性と一致しており、風波の発達には気側自由乱流の影響はないことが示されました。

背景
近年、地球温暖化による海水面の上昇、砂漠化、異常気象などが深刻化しており、特に巨大化した台風・ハリケーンや爆弾低気圧などの異常気象による被害が急増しています。これらの被害の対策を講じるためには、地球温暖化による気候変動の予測を正確に行うことが重要であり、そのためには、気候システムの変動・変化の最も基本的な要素の1つである大気・海洋間での乱流輸送(運動量・熱・物質)を正確に評価することが重要です。 
一般的に大気・海洋間運動量・熱・物質フラックスは経験的な式で求められています。この式には係数が使用されていますが、便宜的に風速のみの関数で与えられているだけであり、表層の流れ、風波、砕波、気泡生成までの異なるスケールの様々な現象を含む海面境界過程の影響は全く考慮されていません。そのため、風速に対する抵抗係数の値は大きくばらつき、未だ確立されたモデルはありません。
外洋での観測においては、測定器設置場所の制限があることや時々刻々と風および波が変化する非定常で複雑な海表面においては個々の現象を抽出して流速、温度、濃度等の正確な計測が困難であることがあげられます。そこで低風速から高風速に至る広風速域における定常の風波乱流場で正確な乱流計測を可能にする海洋のシミュレーション装置である風波乱流水槽を用いて個々の現象を再現することで流速、温度、濃度等の正確な計測が行うことで、大気・海洋間乱流輸送の詳細なメカニズムを解明することは重要です。

掲載論文
雑誌名:"Experiments in Fluids"
論文名:「Effects of air-side freestream turbulence on the development of air-liquid surface waves」
著 者:高垣直尚(兵庫県立大学)、鈴木直弥(近畿大学)、高畑俊作(兵庫県立大学大学院工学研究科)、熊丸博滋(兵庫県立大学名誉教授)
掲載日:2020年5月25日
DOI:https://doi.org/10.1007/s00348-020-02977-9

研究助成
(1)研究費名:科学研究費補助金
研究種目:基盤研究(B) 
研究題目:風の海面摩擦係数における波浪・風速変動の影響
研究代表者:鈴木直弥(近畿大学)

(2)研究費名:科学研究費補助金
研究種目:基盤研究(C)
研究題目:高速気流により水面に生成される超高密度気泡層を通しての
運動量輸送機構の解明
研究代表者:高垣直尚(兵庫県立大学)

(3)研究費名:科学研究費補助金
研究種目:国際共同研究強化(B)
研究題目:強烈な台風下の海水面を通しての熱・運動量輸送機構の解明と
そのモデル化
研究代表者:高垣直尚(兵庫県立大学)

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