生細胞で内在的に発現する細胞膜受容体の新規ラベル法を開発

2018.05.01

  • 研究

東北大学理学研究科・高岡洋輔講師、近畿大学理工学部生命科学科・早坂晴子准教授、京都大学工学研究科・浜地格教授らの共同研究グループは、シグナル伝達に重要な細胞膜受容体を、生細胞での分子機能を損なうことなくラベルする手法を開発しました。

【本件のポイント】
・新たに開発したリガンド指向性ケミカルラベル法により、生細胞に内在的に発現する成長因子・サイトカイン受容体を特異的にラベルすることができた
・本手法により、リガンド刺激後の成長因子・サイトカイン受容体の分子動態をモニタリングすることが可能になった

【研究の背景】
成長因子やサイトカイン受容体を介したシグナル伝達は、細胞の生存、接着、増殖、移動に重要です。リガンド刺激で誘導される細胞内シグナル伝達をより詳細に理解するために、内在的に発現する受容体の分子動態を生細胞でモニタリングする方法が求められていました。

【研究の概要】
本研究では、蛍光プローブが付加された反応性増殖因子・サイトカインを用いたリガンド指向性ケミカルラベル法により、細胞膜受容体を蛍光ラベルすることに成功しました。リガンド刺激後の経時的な局在解析、細胞遊走時の細胞内挙動追跡により、生細胞内における受容体分子動態が明らかになりました。

【今後の展望】
本手法は、細胞への遺伝子導入などの必要がなく、細胞に内在的に発現する受容体をターゲットとして特異的にラベルできる点で優れています。またラベル化受容体には再びリガンドが結合できるため、機能的な受容体分子の細胞内局在変化を解析できます。将来、さまざまな細胞膜受容体に本手法が適用され、これまで詳細が明らかになっていなかったリガンド依存的細胞内シグナル伝達の理解が進むことが期待されます。

【掲載誌】Chem
◆発刊元:Cell Press
◆論文名:Endogenous membrane receptors labeling by reactive cytokines/growth factors to chase their dynamics in live cells
◆著者:高岡洋輔(京都大学・東北大学)、内之宮祥平(京都大学・九州大学)、小林大地(近畿大学)、遠藤正隆 (近畿大学)、林隆宏(京都大学)、福山嘉晃(京都大学)、早坂晴子(近畿大学)、宮坂昌之(大阪大学)、上田卓見(東京大学)、嶋田一夫(東京大学)、浜地格(京都大学)