気候変動により、近未来には世界各地で洪水と干ばつが頻発することが予見されています。異種作物の根系を密に絡み合わせた接触混植により、洪水環境では水田作物が畑作物に酸素を与え、干ばつ環境では畑作物が水田作物に水を与える。そういう、作物同士がお互いを助け合う仕組みを強化することにより、洪水と干ばつの両者が交互に発生するような環境でも一定の作物生産が得られるような農法を提案することを目指しています。南西アフリカの砂漠国ナミビアでは、乾燥にとても強いパ-ルミレットと湿害に適応したソルガムという、現地の主食であるイネ科穀物同士の接触混植を、農家のみなさんが徐々に広げつつあります。半乾燥地では、家族経営による小規模で、かつ零細な農家の人々が多数暮らしており、彼らが実現可能であり、かつ持続的に実施できる技術を開発することが貧困層の強靭化につながると言えるのです。また、こうした地域に広がる劣化した土地を回復させるための萌芽的な試みにより、新たな農地の開発に頼ることのない食料生産の安定化の道筋を考案することも目指しております。
接触混植による畑作物の洪水耐性の強化. 左 イネ単植、中央 パールミレット単植、右 イネ/パ-ルミレット混植. Awala et al. (2016) Eur J Agron 80: 105-112. (著者らのオープンアクセス論文、第1図より引用).
ナミビア国の農家が自主的に始めた接触混植. a パールミレット、b ソルガム. 農家曰く、"干ばつ年にはパールミレットがソルガムを助ける". Awala et al. (2016) Eur J Agron 80: 105-112. (著者らのオープンアクセス論文、第7図より引用).