生物はなぜ旅をするのか?
渡邊 俊 講師(水産学科)
14: 海の豊かさを守ろう
海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
  • 6: 安全な水とトイレをみんなに
  • 15: 陸の豊かさも守ろう

 生物の旅には成長と繁殖が関連しています。その旅の基本は「成育場」と「繁殖場」の二つの異なる場所の往復運動です。水圏生物の旅(回遊)の中でも特徴的なものは、塩分の異なる海と川を行き来する「通し回遊」です。この回遊を行う代表種は、サケ、ウナギ、アユなど私達にとって馴染み深い魚でもあります。

 海と川では塩分が違うので、魚は海では常に脱水、川では水膨れの危険にさらされています。よって、これらを行き来するには、体の働きや機能を劇的に変える必要があります。このような労力や危険があっても、「魚はなぜ海と川を行き来するのか?」が私の研究テーマとなっています。

 河口や沿岸域は、陸と海の接点となっており、通し回遊魚にとっては、少なくとも生涯に二度は通過しなければならない重要な関所です。またこの場所は、人間活動の老廃物の全てが集約されます。よって、通し回遊魚は人間活動の総合的影響を敏感に受けていると考えられ、河川・汽水・沿岸・外洋と繋がる水圏生態系の生物と環境を保全する際、恰好の指標生物となります。

 通し回遊魚の生態研究の結果を資源の回復および保全だけに留めず、水圏さらには陸上の環境の保全や再生へ役立てたいと考えます。

魚はなぜ海と川を行き来するのか?