ユーグレナによるバイオジェット燃料生産
田茂井 政宏 教授(生物機能科学科)
7: エネルギーをみんなに そしてクリーンに
すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
  • 13: 気候変動に具体的な対策を
  • 15: 陸の豊かさも守ろう

 世界で利用しているエネルギーの90%が化石燃料。化石燃料は有限のエネルギーであるため、次世代のエネルギー源が模索されている。そこで近年着目されているのが、微細藻類からの次世代バイオ燃料生産である。一般的に、微細藻類は植物と比較して脂質を多く含有しており、その脂質はバイオディーゼルなどとして利用することが可能である。我々が研究材料として用いている真核藻類ユーグレナ(Euglena gracilis)は、好気条件下では光合成産物としてパラミロン(β-1,3-グルカン)を蓄積し、嫌気条件下(酸素欠乏状態)に移行するとパラミロンを分解しミリスチン酸(C14)とミリスチルアルコール(C14)からなるミリスチルミリステート(C28)を主成分とするワックスエステルを高生産する特徴を有する。C14の脂肪酸はジェット燃料(ケロシン)の成分に近いことから、大量生産による次世代バイオ燃料としての実用化が期待されている。

 我々は、ユーグレナのワックスエステルを高生産するために、遺伝子組換え技術により、光合成能およびワックスエステル発酵能を強化したユーグレナの作出に成功した。さらに、培養条件および薬剤処理により、細胞内に蓄積したパラミロンをワックスエステルに一括変換させる技術開発にも成功した。低価格バイオ燃料生産の実用化を目指し、関西のユーグレナ研究者らと共に近畿大学発ベンチャーとして株式会社MeDreamを設立。近い将来、ユーグレナジェット燃料で飛行機が飛ぶ日が来る。