妊娠前男女の低栄養と出生した児の生活習慣病の発症~食品による予防効果~
竹森 久美子 准教授(食品栄養学科)
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
成人における生活習慣病は増加の一途をたどり,その対策は超高齢社会においては喫緊の課題です。いうまでもなく,生活習慣病は遺伝素因に環境因子が加わって発症しますが,その中でも胎児期の子宮内環境,新生児~乳児期の生活環境が成長後の健康を方向づけることが明らかにされています。胎児期栄養不良の指標である低体重(2,500 g未満)で出生した児は,胎生期の低栄養環境と生後の飽食による高栄養環境との釣り合いが取れず,成人後に生活習慣病発症するリスクが高くなると言われています。近年わが国では,痩せ女性の割合の増加が問題視されていますが,ヤセ願望を持つ文化が女性のみならず男性社会の中にも生じています。妊娠を望む若者達が、若い世代のうちから継続的栄養不足に陥る可能性は否定できない事態になりつつあります。そこで、私たちは将来子供を持つことを希望する世代に栄養素の重要性を認識する機会を持ってもらうため、その情報提供や指導を行うコメディカル(看護師、管理栄養士など)養成課程の学生さん達に対し、栄養素の重要性認識向上の教育や調査を行うほか、妊娠前からの低栄養動物モデルを作成し、低栄養による母体ストレスが配偶子形成や胎児発生に及ぼす影響、その両親から出生した児の生活習慣病リスクに対する食品成分による予防効果を検証しています。