iPS細胞を用いて新たな臓器移植を可能にする!
岡村 大治 講師(生物機能科学科)
3: すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
  • 9: 産業と技術革新の基盤をつくろう

 ヒトiPS細胞の登場により、再生医療のみならず創薬の分野でもかつてない進展が期待されている一方、iPS細胞を用いた移植を伴う細胞治療を行う際、いくつかの問題点が残されています。
 その一つが、残存する未分化細胞による「腫瘍形成」の問題です。細胞治療を実施する際、iPS細胞に対し目的の細胞への分化誘導が行われますが、一方で未分化なiPS細胞も少なからず残存します。そして未分化なiPS細胞はその増殖を停止せず、移植された先の生体内において腫瘍形成のリスク要因となります。
 近年我々はある低分子化合物がiPS細胞を含むヒト多能性幹細胞においてのみ特異的に細胞死を引き起こすことを明らかにしました。この技術を利用することで、未分化なiPS細胞のみに選択的に細胞死を誘導し、且つ目的の分化細胞には一切影響を与えない、より安全な移植技術の開発が可能になることが期待されます。
 また我々は家畜の中で患者由来iPS細胞を用いたヒト臓器を作製する技術の開発にも取り組んでいます。そのためには、家畜の中で様々な組織に分化することが可能なヒト多能性幹細胞の開発が必要とされています。これまでに我々は、マウス胚の中で神経・筋肉の前駆細胞などに分化するヒトiPS細胞の作製に成功しました(Okamura et al., 2015, Nature)。この研究成果は、「ヒトの臓器をブタなどの動物に作らせる」技術へと発展する可能性が考えられます。

新しく考案した条件で培養したヒトiPS細胞は、移植後、マウス胚内で増殖拡散し(白線)、その後様々な細胞へと分化した。 新しく考案した条件で培養したヒトiPS細胞は、移植後、マウス胚内で増殖拡散し(白線)、その後様々な細胞へと分化した。(Okamura et al., 2015, Nature