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環境管理学専攻 博士後期課程2年 葛西 弘くん他が、口永良部島と宮古島で新種のトビムシを発見し、国際誌に論文が掲載されました。

2022.09.07

近畿大学農学部(奈良県奈良市)環境管理学科 大学院生 葛西 弘、准教授 澤畠拓夫、准教授 早坂大亮らの研究グループは、鹿児島県口永良部島から日本初記録のイボトビムシ科Paralobella属(新称和名:ヨコゲイボトビムシ属)の1新種を発見し、さらに沖縄県宮古島からも日本初記録のイボトビムシ科Blasconura属(新称和名:ニセアミメイボトビムシ属)の2新種を発見しました。そしてこれらの種をそれぞれParalobella kuchierabu(和名:クチエラブヨコゲイボトビムシ)、Blasconura triangulum(和名:サンカクニセアミメイボトビムシ)、Blasconura cordis(和名:イノメニセアミメイボトビムシ)と命名し、動物分類学の国際誌Zootaxaに公表しました。

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【本件のポイント】
  • 口永良部島および宮古島で本学の大学院生(葛西弘)が新種のトビムシを発見、しかもこれらは日本初記録の属であることが判明した。
  • 今回発見した3種はいずれも新種であり、口永良部島で見出された種は採集地に因んでクチエラブヨコゲイボトビムシ、残りの2種は形態的特徴からサンカクニセアミメイボトビムシ、イノメニセアミメイボトビムシとそれぞれ命名した。
  • 以上の研究結果は、2022年7月22日に動物分類学の国際誌Zootaxa(https://mapress.com/zt/article/view/zootaxa.5168.3.5)に公表された。
  • 口永良部島での調査は科学研究費の助成研究である(19H03003)。
【本件の内容】

トビムシは内顎綱に属し、体は1cmに満たない小さな動物群です。現在までに世界から約9000種が知られており、陸域の幅広い生息環境に適応しています。有機物の分解者、胞子や花粉の散布者、また他生物の餌として森林をはじめとする陸域生態系において重要な役割を持っています。今回口永良部島と宮古島に生息するトビムシを調査したところ、見た事のない種類が採取され、検鏡したところ未記載種(新種)しかもこれまで日本で報告のない属の種であることが判明しました。
今回発見したトビムシはイボトビムシ科のヨコゲイボトビムシ属とニセアミメイボトビムシ属の種で、これらは東南アジアから東アジアにかけて分布し、今回日本で初めて見つかりました。ニセアミメイボトビムシ属の新種が見つかったのは世界でも22年ぶりであり、国内のイボトビムシ亜科で新しい属が発見されたのは20年ぶりとなります。
クチエラブヨコゲイボトビムシは体が黄色で、体背部のイボが全体的に低く、細長い体型なのが特徴です。発見した口永良部島に因んで命名しました。サンカクニセアミメイボトビムシとイノメニセアミメイボトビムシは体が鮮やかな赤色で、イボがはっきりとしており、背剛毛の先端がギザギザしているのが特徴です。両種は一見似ていますが、頭の真ん中にあるイボの形状から簡単に区別できます。そしてそのイボの形状が「三角形」に見えることからサンカクニセアミメイボトビムシと命名し、もう一種は「ハート形」に見えることから、日本古来から伝わるハート形文様「猪目」に因んでイノメニセアミメイボトビムシと命名しました。


【今後の展開】

イボトビムシ科をはじめとした多くのトビムシは移動能力が低く、地理的種分化が起きやすいグループと考えられています。しかしながら、分布が局所的かつ生息密度が低い上に、研究者人口も少ないため、生態および分類学的研究が進んでおらず、未解明な部分が多く残されています。本発見が契機となって、今後さらに多くの種が発見され、未だ謎の多いトビムシの多様性や生態の理解が進むことが望まれます。