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農業生産科学科 小枝 壮太 准教授らがトウガラシが辛味成分(カプサイシノイド)を作れなくなる新たな仕組みを解明しました

2018.11.30

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 農業生産科学科 小枝 壮太 准教授による研究グループは、トウガラシ果実が辛味成分(カプサイシノイド)を蓄積しなくなる新たな仕組みを解明しました。この件に関する論文が、作物育種学分野で有名なドイツの科学誌「Theoretical and Applied Genetics」(Impact Factor:3.93)に受理され、オンライン版が10月1日付で掲載されました。

 トウガラシ属(Capsicum spp.)には果実に辛味成分(カプサイシノイド)を蓄積する香辛料用品種群と、蓄積しない野菜用品種群があり、いずれも世界的に広く利用されている重要な園芸作物です。トウガラシの果実は辛味を呈するものが一般的ですが、自然変異によりカプサイシノイド合成に必須の遺伝子が変異すると辛味を呈さなくなり、それらはピーマンやパプリカなどのように野菜として栽培・利用されています。
 このことから多くの研究が行われ、ピーマンやパプリカではacyltransferase(Pun1)が、タイ原産のCH-19甘や奈良在来のヒモトウガラシではputative aminotransferase(pAMT)の変異により辛味を呈さなくなることがわかっていました。しかし、その他の仕組みについては明らかではなく、新たな仕組みの解明につながるような手掛かりもありませんでした。
 小枝准教授らの研究では、トウガラシの非辛味品種No.3341を解析することで分岐鎖脂肪酸合成に関与すると考えられるputative ketoacyl-ACP reductase (CaKR1)の変異によりカプサイシノイドの合成ができなくなり、結果として野菜用品種が誕生したことを新たに明らかにしました。

 今回の研究成果は、トウガラシ類の品種改良への利用が期待されます。また、様々な非辛味品種を対象としてPun1pAMTおよびCaKR1に着目して、その辛くない原因を調査することで、原産地のどの地域でどの遺伝子の自然変異が選抜され、品種改良に利用されてきたのかを明らかにできることが期待され、ヒトと作物の長い歴史の1ページを明らかにできると考えられます。それについては近畿大学で現在も研究が進行中です。

 本件の論文につきましては以下のジャーナル(英語)のリンクよりご確認ください
「Mutation in the putative ketoacyl-ACP reductase CaKR1 induces loss of pungency in,Capsicum」 Theoretical and Applied Genetics : Online First (28 Sep 2018)