深海由来微生物 Bacillus licheniformis KDM612を用いた新規seriniquinone配糖体の作製
2024.05.23
- 研究報告
アグリ技術革新研究所所員の福田隆志教授と近畿大学農学研究科の岡村玲汰らは、深海由来微生物Bacillus licheniformis KDM612を用いて新規seriniquinone配糖体の作製に成功し ました。
Seriniquinoneは、2014年に希少海洋バクテリアSerinicoccus marinus CNJ927培養液中より発見された海洋天然物です。本化合物は、薬剤抵抗性が高いメラノーマ細胞に対し選択的かつ強力な抗がん活性を示します。またその作用メカニズムは、薬剤耐性を誘発する分子dermcidinに直接結合し、その働きを制御していることが明らかとなっています。そのためseriniquinoneは、がんの薬剤耐性を克服するような画期的な新薬につながると注目され、現在その薬剤開発が進められています。
研究グループは、2020年より駿河湾の水深250~300mから採取された深海生物の内部から約2000株の深海由来微生物の分離に成功しています。本研究ではこれら未利用微生物の酵素を利用しseriniquinoneの誘導体作製を行いました。スクリーニング(628株)の結果、B.licheniformisKDM612が目的の誘導体を作製することを見出しました。さらに、この誘導体を精製し、物理化学および各種NMRデータを詳細に解析することで、その構造を1位のハイドロキノンにb-グルコースが結合した新規seriniquinone配糖体と決定しました(図)。本配糖体は、seriniquinoneと比べほぼ同等の強力な抗メラノーマ活性(0.29μM)を示しつつ、DMSOへの溶解性が格段に向上(50倍)する結果となりました。本結果は、今後の新規抗がん剤開発の一助となることが期待されます。
研究概要

論文情報
特許情報
特願2024-049633「メラノーマ選択的抗がん活性を有する新規セリニキノン化合物及びその製造⽅法」