仔稚魚期のクロマグロにおける腸内細菌の群集構造の移り変わり
2022.10.26
- 研究報告
アグリ技術革新研究所所員の江口 充教授らの研究グループは、仔稚魚期のクロマグロ(Thunnus orientalis)の腸内細菌の群集構造の形成過程について明らかにしました。
種苗生産用の飼育水タンクから完全養殖クロマグロの卵、仔稚魚、飼育水、餌料を採取し、細菌群集構造の解析を行いました。その結果、稚魚(成魚と同じ形)の腸内細菌の群集構造に対し、仔魚(成魚とは異なる形)における腸内細菌の群集構造は、飼育水や餌の群集構造と比較的類似していました。さらに稚魚期後半になると前半に比べて腸内細菌の群集構造の多様性が乏しくなり、特定の細菌が優占していました。これは宿主であるクロマグロが成長し、宿主由来の消化酵素などが淘汰圧となって腸内細菌群に働いたことを示唆します。稚魚期後半の腸内環境でコアな細菌群集を構成していた特定の細菌は、ふ化後の卵の表面にも存在していました。卵の殻表面に付着する微生物を稚魚が啄むことで魚体内へ導入されたのかもしれません。
本研究により、仔稚魚期のクロマグロの腸内細菌群集の形成過程が明らかになりました。腸内細菌の群集構造は養殖魚の健康状態に影響する可能性が大きく、今後の研究の進展が期待されます。
研究概要

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