甲状腺の病気について

甲状腺は、のどぼとけの下方にあり、縦の長さが4cm程、幅が2~3cm、厚みが1cm程度の重さ20g以下の大きさです。
そこから、甲状腺ホルモンが分泌されて、新陳代謝に関係しており、脈拍や脂質代謝等に影響を与えます。

1.バセドウ病

甲状腺ホルモンが過剰に作られる甲状腺機能亢進症の中の代表的な病気です。20歳~30歳代の女性に多く見られ、人口1000人あたり0.2~3.2人と報告されており、男女比は1:3~5くらいと言われています。

原因

バセドウ病は自己免疫疾患のひとつです。甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)受容体に対する抗体が体内で作られてTSH受容体を刺激し続け、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されることで起こる病気です。

症状

  • 眼球突出
  • 甲状腺の腫れ
  • 脈が速くなる(頻脈)
  • 月経不順
  • 疲れやすい
  • 指先のふるえ
  • 体重減少
  • 暑がり、汗かき
  • 食欲亢進など

治療

①薬物療法
甲状腺ホルモンが作られるのを抑える薬を内服します。
②放射性ヨードによるアイソトープ治療
放射性ヨードが含有したカプセルを内服します。放射性ヨードは甲状腺に集まり過剰な働きをしている甲状腺の組織を小さくする方法です。この治療により発ガンなどの心配はありませんが、妊婦、妊娠する可能性がある女性、授乳中の女性は避けて下さい。
③手術
甲状腺が大きすぎたり、薬物治療に効果がなかった場合には、手術が選択されることがあります。手術では甲状腺の大部分を切除します。手術後は、甲状腺ホルモンが不足することがあり、その場合には、甲状腺ホルモンの補充を行います。

注意してもらいたいこと

ストレスによって悪化・再発することがあるので、なるべくストレスを避けて規則正しい生活を送りましょう。内服薬で治療をしている方は、主治医の注意をよく聞き、薬の飲み忘れに気をつけましょう。

2.橋本病(慢性甲状腺炎)

甲状腺ホルモンが少なくなる病気(甲状腺機能低下症)の代表的な疾患です。全員の甲状腺ホルモンが少なくなるわけではなく、橋本病のうち甲状腺機能低下症になるのは4~5人に1人未満です。大部分の人では甲状腺ホルモンは正常に保たれています。女性に多く、男女比は1:20~30くらいです。特に30~40代の女性に発症することが多く、幼児や学童はまれです。

原因

橋本病(慢性甲状腺炎)は自己免疫疾患の一つです。自己免疫疾患とは、細菌やウイルスなどから体を守るための免疫が、自分の臓器・細胞を標的にしてしまうことで起きる病気の総称です。橋本病では、免疫の異常によって甲状腺に慢性的に炎症が生じていることから、慢性甲状腺炎とも呼ばれてます。この慢性炎症によって甲状腺組織が少しずつ壊され、甲状腺ホルモンが作られにくくなると、甲状腺機能低下症が生じます。

症状

  • 頚部の圧迫感や違和感
  • 無気力
  • むくみ
  • 体重増加
  • 便秘
  • かすれ声
  • 食欲低下
  • 皮膚の乾燥
  • 月経過多
  • 血液検査で脂質異常症、肝機能障害

治療

甲状腺機能が正常な場合は治療は必要ありません。甲状腺機能が低下している場合、甲状腺ホルモンの補充(合成T4製剤)の内服を行います。ヨード過剰が疑われる場合、ヨード制限も行います。甲状腺機能低下が強い場合は昆布やひじきなどのヨウ素を大量に含む海藻類などを過剰に摂取することは控えましょう。

3.その他

バセドウ病、橋本病(慢性甲状腺炎)以外にも甲状腺機能異常をきたす疾患があります。甲状腺の腫瘍には、良性と悪性のものがあります。甲状腺の腫れ、違和感、声のかすれ、飲み込みにくさなどの症状が出てくることがありますので、気になる方は必ず医療機関を受診しましょう。

5月25日は世界甲状腺デーです!!
2023年5月28日(日)大阪で開催された講座です。分かりやすく解説しておりますので是非、ご視聴ください。

世界甲状腺デー市民健康講座