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ネイティブ感覚を求めてE3へ

本宮和樹(仮名)、31歳。高校卒業後、技術者として工場勤務をしていたが22歳のときに現在の職場、電機メーカーに技術者としてではなく営業社員として転職。28歳のときに海外事業部へ異動したことをきっかけに、短期大学部 通信教育部 商経科へ通うことに。3つ年下の妻と二人暮らし。

自身がついてきた英語力足りないものへの気づき

グローバル化という言葉が使われ始めたのはいつ頃だろうか。考えてみれば、駅の看板や案内図に英語が併記され、街中に外国人が当たり前のようにいる風景なんて、子どもの頃は想像もしていなかった。
私の会社でも一部の会議では英語が公用語として使われるようになり、外国人のクライアントを前にプレゼンする機会も増えた。留学や海外旅行の経験はあったが、ビジネス英語となると話は違う。当初はかなり苦労したが、ここ数年で発音やイントネーション、語彙力のバランスが取れはじめ、ようやく板についてきた。

先ほど大きな商談を終えた私は、確かな手応えを感じていた。
今年の春に経営論を学ぶため、近畿大学通信教育部の短期大学部 商経科に入学した影響もあるかもしれない。商業・経済・経営という観点で、より論理的な話を展開できるようになったからだ。

そのことを同僚であり、同じく通信教育を利用しているブライアンに話した。私に英語を教えてくれたのは他ならぬ彼である。すると、彼曰く私の英語には「あるもの」が足りないという。
私は納得がいかず「詳しく教えてほしい」と聞くと、実地検証してみようということになり、夏季休暇を利用して二人で海外旅行に行くことになった。

旅行中、空港やホテル、飲食店でも私が主となり、英語でコミュニケーションを取る。ちょっとしたスラングもこの日のために勉強してきたのだ。おおむね滞りなく会話できていたように思う。一体何が足りないというのだろう。

答えはその日の夜に分かった。
ふらりと入ったバーで現地の若い外国人グループと隣り合い、一緒に飲むことになった。ひとたびブライアンが話しはじめると、場が和み雰囲気が一気に盛り上がる。私も負けじとトークを展開するが、世間話程度で会話が終わってしまう。伝わっている感触はあるのだが、なぜなのだろう。まさに惨敗だ。

どこか釈然としない思いを胸にホテルへ戻ると、ブライアンはにやりと笑って私に言った。
「君は日本語だと面白い男なのに、英語になるととたんに固くなるんだよ。君に足りないのは生きた英語力、ユーモアだ。それを得てこそ真のビジネスパーソンになれる」と。

大人は社交からグローバリゼーションの本質を知る

英語村E3[e-cube](イーキューブ)――。
それは近畿大学キャンパス内にあり、常駐する外国人スタッフとおしゃべりをする場、なのだという。一歩足を踏み入れれば、日本語は禁止。大学内にいながら、海外留学をした気分を味わえるというわけだ。
帰国後、ブライアンからその存在を教えてもらった私は、休暇を利用してさっそく足を運ぶことにした。彼は同行を申し出てくれたが、断った。そうするとまた彼を頼ってしまう。海外旅行の二の舞だ。

建物はずいぶんとモダンなデザインだ。美しいガラス貼りで、開放的な雰囲気もある。周囲では、さまざまな国籍、幅広い年齢の人々が思い思いに過ごしている。辺りを見渡していると、若い学生たちがカフェカウンターでリラックスした様子で談笑しているのが目に入った。もちろん、英語だ。ここではみんな、本当に英語だけで会話をしている。

空気感に圧倒されている自分に気づき「何を緊張しているんだ、私は」と、小さく呟く。ここに来た目的は、生きた英語を、ユーモアを体得するためではなかったのか。それにここは会社でもなければ、相手は取引先でもない。何を怯えることがあるのだろう。

そこでスイッチが切り替わった。手始めに近くにいたスタッフに英語で話しかけてみた。来訪(いや、来村というべきか)が初めてである旨に加え、ここに来た経緯についてジョークを交えて話してみると、リアクションは上々だ。一言二言雑談をした後、彼女は簡単に施設の紹介をしてくれた。

英語村では、スポーツや海外文化、音楽などさまざまなテーマで語り合うアクティビティが1日に3回開催される。中には英語が苦手な人もいるが、みな楽しみながら生の英語に触れ、積極的にコミュニケーションを取るそうだ。
私のようにある程度英語に慣れている者には、ディスカッションやディベート、プレゼンを中心としたグループスタディのプログラムがあるというので、さっそく参加させてもらった。

プログラム終了後、カフェコーナーに戻る。平然を装ってはいるが、内心では初めての経験に気持ちが大きく昂っていて、コーヒーブレイクをとって落ち着くことにした。またスタッフと少し会話をしたが、先ほどよりも自然に話せている気がする。

彼女曰く、ここに通う若い学生の発音は一見不自然で発展途上のように思えるが、話術や言葉選びにセンスがあるそうだ。たしかに、彼らは日本語で友人と話すときのように、ナチュラルでリラックスしている。「正しい英文法でなければ」という気負いがないのだと気付いた。

振り返ってみれば、プレゼンや会議などでは自身の一方的な会話が多く、双方向でのコミュニケーションが欠けていたように思う。ビジネスシーンに対応しようとした私の頭でっかちな学習法にも問題があったのかもしれない。しかし、ここには生きた英語があり、互いを理解しようとするコミュニケーションがある。ここに通いはじめてからは、商談を和やかな雰囲気で進められるようになった。担当者も、商談内容よりも私自身を気に入ってくれるようになったと思う。

これで真のビジネスパーソンといえるかはわからないが、ブライアンにリベンジできる日はそう遠くはなさそうだ

今回のハイクラススポット

March 2024
no.05

英語村E3[e-cube](イーキューブ)

日本の大学の英語教育に一石を投じる
まったく新しい英語学習スタイル

英語村E3
[e-cube](イーキューブ)

E3はEnglish・Enjoyment・Educationの頭文字で、「英語を楽しみながら学ぶ」という意味。施設内では日本語が禁止されており、外国人スタッフと英語でコミュニケーションを取る。初心者向けのアクティビティから中・上級者向けのプログラムもあり、長期休暇中以外は近畿大学の学生のみが利用可能です。プログラムは春、夏休み期間にオンラインでも開催されている。

※実際の施設運営とは異なる場合があります。現在の施設運営については以下「詳細はこちら」をご確認ください。

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