所長あいさつ

近畿大学民俗学研究所は、昭和62年(1987)に設立されました。作家であり、民俗学研究をおこなっていた谷川健一が、近畿大学に着任したのと同時に設立されたことになります。翌昭和63年(1988)には、野本寛一氏が民俗学研究所の助教授として着任されました。この二人を中心に、近畿大学民俗学研究所は、ほかではみられない独自の民俗学研究を実践する拠点となりました。

初代所長の谷川健一、2代目所長の野本寛一氏はともに退職後、国の文化功労者に選ばれています。その後、所長は大脇潔氏、胡桃沢勘司氏、網伸也氏が引き継ぎ、令和6年(2024)4月より藤井弘章が受け継いでいます。現在の所員は民俗学のみならず、考古学、人類学、日本中近世史、日本近現代史、地理学、ジェンダー論と多彩な研究者が集まっています。

当研究所では、さまざまな専門の所員および、協力者によってフィールドワークを実施してきました。その成果は、平成元年(1989)以来、毎年発行を続けている研究所紀要『民俗文化』に結実しています。『民俗文化』は当研究所の着実な歩みを体現しているといえます。

現時点での当研究所の特徴としては、以下の3点のような活動があります。

  1. 広義の民俗学研究の推進。多彩な所員から成り立っているため、多様なアプローチによる調査や議論を展開することができ、民俗学研究の可能性を広げることに貢献しています。
  2. 学部や学科と連動した活動。所員が所属する学部や学科の授業と連動することで、より発展的に具体的な研究を実施しています。たとえば、文芸学部の実習授業と連動して、学生の調査を補完する形で、さらに深化した調査活動を進めています。
  3. 地域密着型の活動。近畿地方を対象として、継続的に重点調査を実施しています。とくに近畿大学が立地する大阪府の河内地域では、自治体や博物館などと連携して活動を展開しています。また、和歌山県においても自治体・博物館および実習授業と連動して有機的な調査活動を進めています。

こうした活動のほか、最近では総合大学としての近畿大学の強みを活かし、理系学部との文理融合研究の拠点としての活動も模索しています。
このように、当研究所では民俗学研究を基盤としつつ、ローカル・グルーバル両方の視点で多角的に日本文化を捉え、近畿大学がかかげる実学教育に貢献し、地域貢献に寄与していくことを目指しています。

藤井 弘章(フジイ ヒロアキ)
所長