【日本マイクロソフト株式会社】工学部情報学科 専門科目「組織活動と情報システム」第6回特別講演を開催

2022.01.26

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令和3年12月14日(火)、情報学科の必修講義「組織活動と情報システム」で第6回目の特別講演が開講されました。この講義では、毎回、情報システムに関わる様々な産業の最前線でご活躍中の方々を外部講師としてお招きし、最先端の情報技術や経営マネジメントに関する実践的な内容をご講演いただいています。

今回は、日本マイクロソフト株式会社 パブリックセクター事業本部 デジタル・ガバメント統括本部の久保田 朋秀様を講師としてお招きし、ご講演いただきました。なお、久保田様には、「プロジェクトマネジメント」でも授業をご担当いただいています。

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授業の前半では、マイクロソフトの企業理念に基づいた働き方や、Society5.0時代における日本政府が開示している成長戦略の内容を紹介し、情報系分野を学んでいる多くの学生は、「今後社会ではどのようなサービスやプラットフォーム、情報インフラが必要となっていくか?」という点において、「政府施策をしっかり注目しておくことが重要である」とお話がありました。

また、国のデジタル戦略においては、新しい働き方の定着によるリモートワークやデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めることで、大都市一極集中の是正や分散型居住を可能とする、地方創生の実現を期待できる点について解説がありました。その中で、現在のコロナ禍において、マイクロソフト社の調査結果によると、経営者の約66%が「従来型オフィスとテレワークのハイブリット型のオフィスを検討している」、従業員は約73%が「リモートを含む柔軟な働き方を希望している」ということが明らかになった一方で、約67%が「アフターコロナでは対人の働き方環境も望んでいる」という回答であったことから、「対面とテレワークを用いた柔軟な働き方」を望んでいる側面や、リモートワークが可能になった現在、約46%が「転居を検討している」データ結果を紹介し、「場所」を限定されることのない働き方や、大学の講義が、地方創生の推進に向けたポイントである、と解説されました。

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さらに米国企業では、UberやAmazonといったデジタル化を前面に展開した企業の登場により、既存のタクシー会社や書店等の企業が一気に脅威に晒されたという現実があり、過去にAppleの創業者スティーブ・ジョブズが「iTunes登場によりCD市場をなくす」という予見どおり、現在、本やCDなどの既存メディアの流通は、サブスクリプションモデルが社会の主流となっている実態に触れ、既存のビジネスモデルを変革させる、いわゆる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」についても解説いただきました。

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なお、デジタルトランスフォーメーション(DX)は、従来の作業をデジタル化する「Digitization」や、企業がデジタルビジネスに移行する「Digitalization」とよく間違えられるので、自動運転や無人店舗のビジネスモデルを例示し、それぞれの違いについてわかりやすく説明していただくとともに「すべての企業が、ソフトウェア会社になる必要がある」という、マイクロソフトCEOの言葉にもあるとおり、例えば銀行においても、QRコード決済の普及や店舗維持コスト、印紙税等で様々なメリットがあることからDXの波が押し寄せている事例について紹介していただきました。

前半戦のまとめとして、
・新しいITビジネスはルール整備とともに実現すること。それにはEBPMが必要であること。
・新しいITビジネスが急速に加速する環境であること
・政府方針は非常に重要であるので、各自HP等でしっかりと国家ビジョンを学ぶことで、自分の学びの分野や進路が明確になる機会として欲しい
との解説がありました。

後半戦では、「大都市の利便性と地域の豊かさを融合させた"デジタル田園都市国家構想"を支えるデジタル基盤整備」について、国が推進するリアルとオンラインの融合を目指す施策がなされており、行政組織もデジタル人材を活用するために、官民回転ドアの実現を進めていく検討がなされていることについて触れられました。

さらに、オンラインワークショップとして「セキュリティ(Security)」や「プライバシー(Privacy)」を日本語に翻訳し、「個人情報とプライバシーの違いを考察せよ」という内容で、受講者全員にチャット回答を求め、全員が様々な私見を回答しました。

デジタル社会の中で、クラウドコンピューティングの役割は今後ますます大きくなっており、その社会では「安心・安全・信頼」の3要素が重要であり、それには「情報セキュリティ」が鍵となること、また情報セキュリティは「機密性・安全性・可用性」の3要素で成り、私たちの身近でもSNSでの写真流失や悪ふざけ写真を投稿するなどして内定が取り消される等の事例が紹介され、決して他人事ではない現状について解説がありました。

また、クラウドサービスのセキュリティが重要な時代になってくる中で、インターネットの世界では、身分証明と当人証明をするために電子署名や電子証明書がその役割を果たしていることやID管理には「識別→認証→認可のプロセスと、それぞれの説明責任(ポリシー)」という4つのフェーズについて解説がありました。

クラウドバイデフォルト時代のセキュリティ環境については、攻撃があっても動じないIT環境の新しいカタチ(セキュリティポスチャー)が重要であり、「当たり前のことを、当たり前に、全員が実行する態勢」を「サイバーハイジーン」といい、脆弱性がない環境を作ることや脅威インテリジェンス等のインシデント対応の軽量化が求められていることについてご説明いただき、その上で、私たちが身近に利用しているクラウドサービスの安全性はどのように確認、証明されるのか?さらに世界にはどのくらい情報セキュリティの規格・認証が存在するのか?についてMicrosoft Azureが取得している認証例で解説していただきました。

最後のワークショップでは、「自分で利用しているクラウドサービスを3つ程度書き出し、その上で何を根拠に利用するクラウドサービスを選んでいるか?また、そのサービスが取得しているセキュリティ認証(根拠)を調査せよ」というテーマで課題が出され、受講生からは様々なクラウドサービスやセキュリティ認証について回答が挙げられました。

そして、ワークショップの解説では、2015年に日本初の日本提案のISO国際標準として「ISO/IEC 27017」に登場したことが説明され、クラウドサービスを使う際には、こういった国際規格を取得しているか?に注目するようアドバイスがあり、その後、マイクロソフトが紹介している「Future Vison」について、当時の動画で紹介された未来が5年後には実際に商品化されていること、イベントの実際の講演者がMetaverse(メタバース)の世界観で、ホログラム+AI翻訳でスピーチするイベントについて動画紹介がありました。

最後に「CPS:Cyber Physical System」という現実とITの融合により、実際の社会でもサイバー上においても同様で、世の中の役に立つモノ(システム)を作っていく人材になって欲しい、というメッセージで締めくくられました。

久保田様、ありがとうございました。