11月25日(土)、台湾のフィールドオフィス・アーキテクツの黄聲遠(ホァン・シェン・ユェン)氏が近畿大学東大阪キャンパス39号館で特別講演を行いました。

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「Making Places」と題された講演では、豊かな地形と水系、田園と市街地が混在した独特の風景と、独立精神を持つ人々が暮らす宜蘭において、道路や公園、橋梁や河川といった土木的な領域にも触手を伸ばし、複数の建築物を結びながら、街全体に生命力に満ちた公共空間のネットワークを生み出し続けるフィールドオフィスの思想と実践について紹介されました。

黄聲遠氏の肉声(中国語)、通訳者(中原大学・黄俊銘教授)の日本語、スライドに添えられた和英の字幕(読み上げられることはない)、そして時折動き出すムービー(黄聲遠氏によるナレーションと周りの声と音)による多声的な音響体験が生み出されており、「どんなに小さな場所にでも、過去の歴史と未来の物語をつなぐ可能性が秘められている」、「現在の要求のみに答えるのでは不十分、より長い時間の中に自分たちを位置付けなければならない」といった印象的なメッセージ、さらには「フィールドオフィス」(街、自然、現場の中で考え、生み出すこと)が彼らの事務所の名前であることを超えて、人や自然、歴史や現在に介入する「建築家としての生き方、態度」であることなども語られました。

講演後には、堀口徹准教授がモデレーターとなり、質問カードを使って会場から収集された質問を使って対談が行われ、仕事の選択であることを超えて、「生き方の選択としての建築家」といういままさに私たちが考えるべき原点となるべき言葉も引き出せたのではないでしょうか。(来場者には堀口ゼミ3回生が事前の宜蘭訪問や作品集の読み込みを通してまとめた資料も配布されました。)

今回の黄聲遠氏の来日は、第4回吉阪隆正賞受賞を記念したもので(翌11月26日には東京で授賞式と記念講演会が行われました)、本講演会は、近畿大学建築学部とTOTOギャラリー・間の共催として開催されたものです。